2.中野区の税収の見込みについて
(1)特別区税
表1・2は中野区が作成した資料(令和4年度予算特別委員会要求資料の総務分科会088、041)である。
ここで令和2年度予算編成時はコロナにおける財政への影響がない時期の財政計画であると捉えられる。


上記の令和2年度と令和4年度予算編成時における財政フレームおよび決算額を活用し、特別区税の推移を図4に示す。
黒いラインは決算・R3補正予算の実績値である。
青のラインは令和2年度、コロナの影響がない中で予算編成されたときの特別区税である。
オレンジのラインは来年度令和4年度予算編成での想定である。
まず実績値をみると令和元年度と比較して、令和2・3年度は予測していたよりも7億円、5億円程度の税収が増えた。
これは令和2年度予算編成時よりも高い数値で、コロナにより経済的に厳しい世帯が共働きになり、非課税者が納税義務者になり、税収が増えたとのことである。
しかし令和4年度の特別区税の予算においては、国の財政出動も減る中で、納税平均額が下がり、約342億円と大幅に下がるとみており、令和元年度のコロナの影響がないときよりも下回ることを想定しているようである。
この傾向は図3の地方の普通会計の推移と同様である。

(2)特別区交付金
表1・2と平成20年度からの決算値から特別区交付金(財産費除く)の推移を図5に示す。
特別区交付金は都が賦課徴収する市町村税のうち、固定資産税、市町村民税法人分、特別土地保有税、法人事業税交付対象額(令和2年度から)、固定資産税減収補填特別交付金(令和3年度から)を特別区23区の財政状況を勘案し、割り振られる歳入である。
固定資産税は地価の向上により常に右肩上がり、市町村民税法人分が大きな割合を占め、市町村民税法人分は社会情勢の影響を大きく受ける。
財産費は都市計画交付金に係る地方債収入相当額であり、道路改良工事費(態容補正)に合わせて、区の実額による算定から財調単価を用いた算定がなさる。
つまり一般財源と考えづらいひも付き予算の特別区交付金である。
黒のラインの実績値をみていくと、社会情勢の影響を受けるため、平成21年はリーマンショック、平成23年は東日本大震災の影響を受けた。
平成29年度の減について、都の報告書をみると「平成29年度は、海外経済が回復する下で、輸出や生産の持直しが続くとともに、雇用・所得環境の改善が続いたことで、景気は緩やかな回復基調が続き、名目経済成長率は、2.0%増となった。このような経済情勢の下で、法人二税は金融・証券業を中心に企業収益が低迷したこと等により、28年度決算額に対し2.2%の減となったものの、雇用環境の改善等により、都税総額では0.7%の増となった。」とのことである
私のような経済の素人には理解できない状況です。
様々な変動要因を有すため、緊張感をもった見込みをすべきなのが特別区交付金である。
次に青のラインは令和2年度編成時の特別区交付金の見込みである。
右肩下がりになっている理由は令和元年度の法人住民税の一部国税化に関する制度改正が区財政に厳しいものになると想定したとのことである。
当時として安全は考え方だったと考える。
次にオレンジの線は令和4年度編成、今回の予算編成の財政フレームおける特別区交付金の見込みで、令和4年度は373億円としている。
この金額は東京都との協議の上で決まったものであり、この数字を下回ることはまずないと想定されている。
そして令和5年以降は図3の税収の変化率を乗じたもので、中野区は地方の普通会計と同じ形になると試算することとしている。
令和5年度の特別区交付金は令和4年度の373億円に対前年伸率100.3%(100%+0.3%)をかけて出てきた374億3000万円となる。
令和6年度以降も前年の財産費を除く交付金に対前年伸び率をかけて算出されている。
つまり令和4年度の373億円という数字がわかれば、今後10年間の数字がすべて試算される。
しかし、ここで気になるのはこの算定をする上での前提条件である。
コロナ前の比較的安定しているときの経済であればいいが、誰もが予測しなかった一時的な税収の増加、国の補助金によるドーピング的な財政の中で使用すべき手法ではないと考える。
図3の地方の普通会計の税収では、令和2・3年度で急増し、令和4年度で急落し、ベースラインに戻るが、中野区の特別区交付金においては急落を踏まえた傾向が想定されていない。
特別区交付金がベースラインに戻らない理由としては、東京都の1兆円の財政調整基金(貯金)を活用した感染拡大予防協力金などの手厚い制度があったのが主要因と推測する。
それらの制度の効力が薄まる令和5年度の予算においては再びベースラインに戻るくらいの想定が先行き不透明な歳入に対して、安全な見立てだと考える。
中野区は過去に令和2年度予算編成時には青のラインとして、危機感をもった財政運営とし、令和4年度予算編成時にはオレンジのラインの楽観視した設定とした。
オレンジと青のラインの差は令和4年度で42億円、5年後の令和9年度には70億円となる。
2年間でこれだけ見かけ上、財政的に余裕が生まれると思えば、財政規律は緩み、タガが外れた放漫経営となり、歳出が膨らんだのがこの2年間だが、そのあたりは後述させていただく。
そのため現実的な特別区交付金の金額を自民党で試算した。
それが緑のラインだが、これは令和5年度にコロナによる財政への影響がなくなったとしたとき、コロナが拡大する前のベースライン、令和2年度歳入規模に戻ると仮定する。
そして令和6年以降は中野区の算定方法と同じで図3の変化率を乗じる。
平成20年度のリーマンショック前から平均的なラインがあれば、そのラインの延長線上に緑のラインが存在し、ある程度の妥当性がある。
オレンジのラインは景気が良い時の最高値を取り続けているラインと見える。

令和5年度以降において、オレンジと緑のラインの差、つまり交付金の見込み差を算出したのが図6である。
単純な試算ではあるが、最低でも毎年30億円程度足りなく想定を持つべきである。

以上、財政フレームの歳入の部分について、まとめる。
特別区税において、先行きが不透明である経済状況を勘案して、緊張感を持った来年度以降の算定をしているが、特別区交付金においては令和5年度以降、毎年30億円程度の過大であると認識すべきだと考える。
(後編へ続く)
文・加藤 拓磨/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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