新時代の生活スタイルとして定着?
もう少し詳しく見ていきましょう。国際的なサーキュラーエコノミー推進団体、エレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーには次の三つの原則があると主張しています。
(1)廃棄や汚染を取り除くこと
(2)製品と原材料を高い価値を保ったまま循環させつづけること
(3)自然を再生すること
「廃棄」はリニア経済の負の側面であり、「汚染」もまたかつての公害問題から現在のプラスチック問題まで脈々と続いてきた歴史があります。リニア経済からの脱却は必然といえるでしょう。
原材料と製品を経済システムの中でできるだけ循環させることで、廃棄や汚染の最小化につなげます。すると、製品の価値は、破棄されず使用される期間が長くなればなるほど増大し、これによって、原材料自体の価値も最大限に引き出されることになります。この良好な循環を維持することが、サーキュラーエコノミーの原則となっており、製品の設計(デザイン)は、この循環の維持に大きく関係します。
コンビニなどで大量に排出される賞味期限切れ食材が話題になりましたが、そうした資源も、家畜のエサとする、バイオガスの生成を行う、堆肥として安全に自然に返すといった利用が考えられます。いわゆるカスケード利用と呼ばれるもので、廃棄物を別の用途に使い、さらにその後も別の用途に活かすといった資源の有効利用を設計段階から考える必要があるのです。
最後の三つ目、「自然を再生すること」は少々難問です。コンビニの賞味期限切れの弁当を堆肥に戻す例はわかりやすい話ですが、資源とは生物由来のものだけではありません。例えば、鉄やアルミニウム、プラスチックなど枯渇が想定される資源もあります。
エレン・マッカーサー財団では、「生物資源のサイクル」と「技術資源のサイクル」の二つに循環のかたちを分けて議論しています。前者はコンビニ弁当、後者は鉄やアルミとお考えください。同財団は、技術資源に関して長期的な循環はなかなか得にくいと考えています。
例えば製品が長持ちすれば、新しい製品が売れにくくなるからです。そこで製品をユーザーが「所有」するのではなく、必要なときに必要な分だけ「利用」するというビジネスモデルを想定しています。メーカーが製品の所有権を有し、それを長い期間多くに人々に利用してもらうという考え方です。
一見、唐突に感じられますが、すでに車や住まい、家具や衣服などのシェアリングサービスは普通に行われています。「サブスクリプション」もすでに耳慣れた言葉です。不用品の売り買いを行うフリマも盛んですし、こうした新しい経済活動が注目されているのも、必然と思えます。
サーキュラーエコノミーは、従来の経済システムの限界と新時代への指針を示しています。そして、その実現は、私たち一人ひとりの生活スタイルにも関係しています。2020年代の生き方の指針として注目していく必要がありそうです。
文・陣内一徳/提供元・BCN+R
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