医師や船員の海外派遣も外貨の獲得源

産業を発展させなかったキューバでは血液以外に外貨の主要獲得源となっているのが医療団の海外への派遣と船員である。派遣対象になっている医師と看護師はおよそ3万5000人、船員は7000人いるとされている。

医療団の派遣はこれまで世界60ヶ国余りに実施されている。ところが、問題は彼らが貰う報酬は派遣された国が支払う報酬の25%から30%で、残りはキューバ政府の懐に収まっている。例えば、2018年だとほぼ85億ドルがキューバ政府の歳入になっているという。派遣された国からキューバ政府に報酬の全額が支払われ、そこから25%から30%が医師の口座に入金されることになっている。この報酬に不満で派遣された現地に留まったり亡命したりする医師もいる。一旦それを行うと8年間帰国できないことになっている。現時点だとおそよ1万人の医師が帰国できない状態にあるそうだ。 (2020年9月23日付「ABC」から引用)。

船員の場合も同様である。MSCクルーザーに乗船した船員の基本給は408ドル。ところが、実際に船員に支給され給与は81.6ドルだという。だからチップを稼ぐしかないのである。乗船した時にパスポートを預けることが義務付けられている。それでも労働条件などに我慢できなくなり亡命する船員もいるという。(1月26日付「ABC」から引用)。

マイアミからキューバまで直線距離にして350キロしか離れていない。キューバ革命が起きていなければキューバは物質的に豊かな米国民の観光地として発展していたであろう。現在のように食料や衣料品などを始めすべての物が不足している状態には陥っていないはずだ。

文・白石 和幸

文・白石 和幸/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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