多くの人は、「リンゴが赤く見えるのは、リンゴが赤色の光を反射するから」だと知っています。

では、周囲の景色をまるごと反射する「鏡」は、何色だと言えるでしょうか?

なんとなく銀色のイメージをもっている人は多いかもしれませんが、実は銀色でもありません。

ここでは光の性質や科学者たちの見解にもとづいて、鏡の色について解説します。

目次
鏡は白色なのか?
光をすべて反射する鏡が白くない理由

鏡は白色なのか?

実は緑色!? 合わせ鏡から見えてくる「鏡」の持つ真の色とは
(画像=可視光のうち反射されたものを「物体の色」として認識している / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

鏡の色を知るために、まずは色と光の関係について考えましょう。

自然光には、もともとすべての色(波長)が含まれています。

そして私たちは、「物体が吸収せずに反射する波長の光」を「物体の色」として認識しています。

例えば、植物は緑の波長を反射するので緑色に、バナナは黄の波長を反射するので黄色に見えるのです。

さらに言うと、ノートやコピー用紙は全ての波長を反射するので白色に見え、墨汁はすべての光を吸収するので黒色に見えます。

さて、これら光と色の関係を知ると、鏡の色について少し理解が深まります。

鏡は視線と対角にある景色をそのまま映し出します。これは鏡が、「光を全反射」している証拠です。

実は緑色!? 合わせ鏡から見えてくる「鏡」の持つ真の色とは
(画像=どちらも光を全反射するが、見え方は大きく異なる / Credit:(左)Depositphotos, (右)Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

では、鏡の色は何色ですか?

考え方によっては、光を全反射するので「白色」だと言えるかもしれません。

事実、ある科学者たちは鏡を白色だと言います。

しかし、鏡とコピー用紙の前に立って比べてみてください。

鏡が「自分の姿を映す」のに対し、コピー用紙は自分の顔を映さず、ただただ「白いだけ」です。

では、お互いに光を全反射するのに、見え方に大きな違いがあるのはなぜでしょうか?

光をすべて反射する鏡が白くない理由

鏡とコピー用紙の見え方が大きく異なるのは、反射の種類が異なるからです。

実は緑色!? 合わせ鏡から見えてくる「鏡」の持つ真の色とは
(画像=鏡面反射のイメージ / Credit:Arvelius(Wikipedia)_鏡面反射、『ナゾロジー』より引用)

鏡は「鏡面反射(または正反射)」であり、反射の法則にしたがって、一方に光が進んでいきます。

光が混ざり合うことがないため、入射した映像(光)は崩れることなく自分の目に届きます。

また「入射角=反射角」なので、鏡を見る角度によって見える映像が異なるでしょう。

実は緑色!? 合わせ鏡から見えてくる「鏡」の持つ真の色とは
(画像=乱反射(拡散反射)のイメージ / Credit:GianniG46(Wikipedia)_拡散反射、『ナゾロジー』より引用)

対してコピー用紙は、「乱反射(または拡散反射)」です。

これは入射した光が一定の方向だけでなく、あらゆる方向に反射する現象です。

この場合、入射した映像(光)がそのまま目に届くことはありません。

すべての波長が混ざって目に届くため、私たちには白色と認識されるのです。

また「さまざまな方向に拡散する」ということは、「どの角度から見ても同じように白く見える」ということです。

実は緑色!? 合わせ鏡から見えてくる「鏡」の持つ真の色とは
(画像=鏡は「無色」と言えるかも / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

こうなると、考え方によってはそもそも反射の性質が異なるので、鏡は「白色ではない」ということになります。

とはいえ「全反射」という性質を考えると、他の色にも当てはまりません。

そうなると、「無色」と呼ぶのが妥当なのでしょうか?

しかし現在のところ、入射光を100%反射する物体は確認されていません。

現実世界の鏡は素材自体が不完全なので、完全な全反射ではなく、それは白色でも無色でもないのです。

では、現実世界の鏡は何色とするのが妥当なのでしょうか?