素材を丸めて作った「塩粒サイズのマイクロバッテリー」

「塩粒サイズ」なのに「10時間給電可能」な「マイクロバッテリー」を開発
(画像=素材を重ねて丸めることで効率を上げる / Credit:Oliver G. Schmidt(Chemnitz University of Technology)et al., Advanced Energy Materials(2022)、『ナゾロジー』より引用)

研究チームは、電極(正極、負極)の薄膜と固体電解質の薄膜を重ね、ロールケーキのように丸めようとしました。

こうすることで、作用する表面積を大きくしたまま体積をコンパクトに収められるのです。

つまり極薄の素材を重ねて丸めることが、小型化と性能アップを両立する秘訣だったのです。

しかしここで、ある問題が発生します。

1mm3以下の薄くて脆い素材を破損させずに「丸める」ことは、非常に難しかったのです。

塩粒サイズの折り紙をピンセットで作ることを考えると、その難易度の高さを理解できますね。

「塩粒サイズ」なのに「10時間給電可能」な「マイクロバッテリー」を開発
(画像=「張力を解放して丸める」方法を採用 / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

そこでチームは、ロールスクリーン(ロールカーテン)の巻取りに似た技術を採用しました。

ロールスクリーンは、スクリーン下部を下に引っ張ることで張力を解放し、円柱状に自動で巻かれる設計になっています。

超薄型の電池素材にも「張力を解放する」方法を使うことで、自動できれいに丸めることに成功したのです。

「塩粒サイズ」なのに「10時間給電可能」な「マイクロバッテリー」を開発
(画像=開発されたマイクロバッテリー。比較として塩粒が置かれている / Credit:Oliver G. Schmidt(Chemnitz University of Technology)et al., Advanced Energy Materials(2022)、『ナゾロジー』より引用)

さて、この方法によって開発されたマイクロバッテリーは塩粒サイズであり、僅か0.04mm2の面積に収まりました。

しかも同様のサイズのバッテリーと比較すると、8倍の容量があります。

研究チームは、「塩粒バッテリー」について次のように述べています。

「このバッテリーは充電可能なだけでなく、私たちが所持している最小のコンピュータに約10時間も電力を供給できます」

実用化するなら、多くの電子機器がさらに軽量・小型化することでしょう。

今後チームは、マイクロバッテリーのさらなる最適化を目指して、研究を続ける予定です。

参考文献:
World’s Smallest Battery Can Power Computers with the Size of a Grain of Dust

Scientists Unveil Extremely Small Battery For The Smallest Computers in The World

元論文:
On-Chip Batteries for Dust-Sized Computers

提供元・ナゾロジー

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