コンピュータや電子機器はますます小型化しており、それに伴って、バッテリーの小型化も求められています。

その需要に応えるため、ドイツ・ケムニッツ工科大学(Chemnitz University of Technology)に所属する物理学者オリバー・シュミット氏ら研究チームは、塩粒サイズのマイクロバッテリーを開発しました。

薄い固体電池を丸めることで、サイズ縮小と効率アップの両立を可能にしたのです。

現在、この「塩粒バッテリー」は、チームが所持する最小のコンピュータに10時間電力を供給できるとのこと。

研究の詳細は、2022年2月9日付の科学誌『Advanced Energy Materials』に掲載されました。

目次

全固体電池の課題点
素材を丸めて作った「塩粒サイズのマイクロバッテリー」

全固体電池の課題点

「塩粒サイズ」なのに「10時間給電可能」な「マイクロバッテリー」を開発
(画像=従来の電池は、2つの電極と液体電解質で作用する / Credit:Depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

従来の電池(バッテリー)は、2種類の電極(金属)と液体電解質(電解液)で成り立っています。

この液体電解質によってイオンが電極間をスムーズに移動し、電流を生み出せるのです。

ところが液体電解質にはデメリットがあります。

液体ゆえ「液漏れ」が生じやすく、これを防ぐためには頑丈な容器が必要なのです。

そのため電池を薄くしたり変形させたりすることは難しく、小型化には向いていませんでした。

そこで注目されているのが、固体の電解質を使った「全固体電池」です。

素材全てが固体なので液漏れの心配がありません。

また形状を自由に変えられるので、小型化にも向いています。

ところがやはり、全固体電池にもデメリットがあります。

固体電解質は液体電解質よりもイオンが移動しづらく、電池としての出力が小さいのです。

では、小型化と性能アップの両立は可能なのでしょうか?

シュミット氏ら研究チームは、全固体電池を薄くして丸めることで、この課題をクリアしました。