脱炭素モラトリアムのリスク
以上は脱炭素モラトリアムの便益であったが、ではその環境リスクはどの程度か。
日本の2020年のCO2排出量は11.5億トンだった(環境省)。
図のように、これを直線的に2050年までに0にする場合には、累積のCO2排出量はAの面積となる。これに対して、今後10年脱炭素モラトリアムをしてから10年遅れで0にする場合には、累積のCO2排出量にはBの面積が加わる。

(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)
この追加分のBによる気温上昇を計算しよう。
まずCO2排出量は、
10年間 × 11.5億トンCO2/年 = 115億トンCO2 = 0.0115兆トンCO2
累積排出量と気温上昇は下記のTCRE係数を用いて計算する。
(注:この計算方法はIPCCのモデルの結果を用いている。詳しくは拙著「地球温暖化のファクトフルネス」を参照)
TCRE:1.6℃/兆トンC = 0.44℃/兆トンCO2
そうすると両者の掛け算で、
Bによる気温上昇は、 0.44℃ × 0.0115 = 0.0051℃
となる。
いま戦時に於いて、「エネルギーの安定・安価な供給および世界平和への寄与」という便益と、気温上昇0.0051℃というリスクを比較衡量するならば、どちらが大であろうか。答えは自明であろう。
文・杉山 大志/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?