欧米エネルギー政策の大転換
ウクライナでの戦争は、自国の化石燃料産業を潰してきた先進国が招いたものだ。ロシアのガスへのEUの依存度があまりにも高くなったため、プーチンは「EUは本気で経済制裁は出来ない」と読んで戦端を開いた。
米国バイデン政権も国内の化石燃料産業を冷遇してきた。結果、国際的な石油・ガス価格は高騰した。これは石油・ガスの輸出を経済・財政の最大の柱とするロシアに力を与えることになった。
いま欧州各国はロシアのガス依存を減らし、石炭、LNG、原子力を増やそうと躍起になっている。米国も野党共和党が石油・ガスの環境規制緩和と増産を猛然と訴えている。何れも、これまでの脱炭素一本やりの政策からは根本的な変化である。
この変化の必要性は切迫している。だがこれまでの脱炭素政策を自己否定することになるので、政権交代をしない限り、路線変更の歩みは遅いかもしれない。
脱炭素モラトリアムの便益
さてプーチンと欧米の対立が長引くとなると、日本も他人事ではない。ロシアが世界市場から締め出されることで、石油・ガスは品薄になり、価格が高騰する。
いまや日本のエネルギー政策の国際的な地合いも完全に変わった。
日本も、安価で安定なエネルギーを活用することで、内外のエネルギー価格の高騰を防ぎ、物価のインフレを抑制するのみならず、ロシアの最大の収入源を絶たねばならない。
これにはまず原子力発電の速やかな再稼働が第一である。
次いで、石炭火力発電所を可能な限り稼働させるべきだ。これによって不要になったLNGは欧州などに転売すればよい。
工場や家庭では石油・ガスを使っているため、価格高騰に直面している。せめて電気だけでも低廉にすべきだ。このため、再生可能エネルギーの導入などのコスト増になる政策は停止すべきだ。
以上のような政策は、2030年にCO2をほぼ半減する(46%削減)という現行の政府目標と整合しない。
したがって、脱炭素についてはモラトリアム(一時停止)が必要だ。それによって、石炭の最大限の利用と再エネ導入の停止をすることが出来る。