北朝鮮は今年に入り、計8回、弾道ミサイルを発射するなど、核・ミサイル開発に没頭中だ。北の最大の敵国は米国だ。その点、ロシアと似ている。アフリカ北東部のエリトリアは隣国エチオピアの内戦に関与し、2021年11月、バイデン米政権は同国に制裁を科している、といったそれぞれの事情がある。
ちなみに、ロシア非難決議案で反対した4カ国はいずれも米国から制裁を受けている。ロシアとベラルーシは今回のウクライナ侵攻で最大級の制裁を受けている。北朝鮮は過去、核実験、ミサイル発射で何度も制裁を受けてきた。米朝の交渉では北の非核化と米国の対北制裁の解除が焦点となってきたことは周知のことだ。シリアに対しては、米国は2020年6月、シリア紛争の政治的解決を妨害した人物、アサド体制の軍事行動・航空産業・石油ガス産業を支える財・サービス・技術の獲得を促進した人物、シリア復興事業に関与することでシリア紛争から利益を得た人物に対し、新たに制裁を科した。
外交は国益を守ることが目標だ。世界がロシアの戦争犯罪的行為を批判している時に、そのロシアを擁護することはその国にとってもマイナスだ。実際、中国やインドは棄権に回っている。
にもかかわらず、ロシアに対し忠義を見せる国はロシアから様々な支援を受けてきた国ともいえる。北朝鮮の場合、ウラジオストック経由で軍事支援を含めさまざまな物資の支援を受けてきている。
40年ぶりに開催された緊急特別総会で国連は一応面目を保った感はあるが、米欧らは安全保障理事会で先月25日、同じロシア非難決議案を提出したが、ロシアが拒否権を行使して否決されたばかりだ。安全保障理事会(15カ国で構成)で米英仏ロ中の常任理事国5カ国が保有する拒否権が国連の活動のブレーキとなっていることは周知の事実だ。換言すれば、ウクライナ危機では国連は何も効果的な決定を下すことができないというわけだ。
世界第2次大戦終了直後に創設された国連は現在の世界情勢を反映していない。特に、安保理常任理事国5カ国体制は機能していない。国連の無能化の主因だ。常任理事国の拒否権を廃止しない限り、国連は紛争解決能力を持つことができない。もう少し厳密にいえば、強権大国ロシアと中国共産党が入った安全保障理事会は機能しないのだ。
国連改革で過去、さまざまなアイデアが出た。ユニークな案としては「国連2院制」だ。上院は世界の宗教指導たちが結集して世界の平和実現のために話し合う。下院はこれまでと同じように各国の政治指導者が参加する。そして上下両院で世界の諸問題を話し合うというわけだ。
国連改革が出来ないのならば、共通の価値観を有する国が集まって新しい国際機関を創設することも検討していいのではないか。ウクライナ危機は国連改革の必要性と共に、機能する新たな国連の創設を求めている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年3月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
文・長谷川 良/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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