その他の打上げ方式

上述の通りロケットの射場は地理的条件に大きく作用されます。そこでより柔軟な打上げができるようにと様々な打上げ方式が考えられていますので、一部紹介したいと思います。

①洋上発射
②空中発射

①洋上発射

洋上発射とは、文字通り海の上から打上げようという考え方で、石油採掘プラットフォームなどを改造した固定式と、移動式があります。固定式ではイタリア初の人工衛星「サンマルコ1号」を打上げた、ケニア沖のルイージブログリオ宇宙センター(サンマルコプラットフォーム)などがあります(図8)。

射場の条件と合わせて学ぶ、続々と増える世界のロケット射場まとめ
(画像= 図8:固定式洋上打上げ場 サンマルコプラットフォーム
Credit : NASA、『宙畑』より引用)

移動式は領土に左右されず、広大な海を利用した自由度の高い打上げが可能であり、現ロシアS7グループ傘下のSea Launch社などが行っています。図9の打上げ台は、洋上プラントのようにも見えますが、れっきとした船であり移動することができます。

射場の条件と合わせて学ぶ、続々と増える世界のロケット射場まとめ
(画像= 図9:SeaLounchの打上げプラットフォーム「Odyssey」
Credit : S7 Space、『宙畑』より引用)

日本国内にも千葉県沖で打上げ試験を実施したASTROCEAN(アストロオーシャン)社があります。アストロオーシャンは内閣府主催の宇宙ビジネスアイディアコンテスト「S-booster 2018」の最優秀賞を受賞しており、2019年には超小型ロケットの打上げ試験に成功するなど注目が集まっています(図10)。

射場の条件と合わせて学ぶ、続々と増える世界のロケット射場まとめ
(画像= 図10:ASTROCEANの超小型ロケット打上げ試験の様子
Credit : Astrocean press release より、『宙畑』より引用)

②空中発射

空中発射も文字通り空中からの発射ですが、主に大型気球からの発射と飛行機からの発射の2種類があります。近年打上げに成功しニュースになったのが飛行機からの発射方式であるイギリス Virgin Orbit の LauncherOne になります(図11)。飛行機を用いることで領土に左右されず自由度高く打上げられるほか、飛行機自体の速度を“初速”として利用できるなどのメリットがあります。

射場の条件と合わせて学ぶ、続々と増える世界のロケット射場まとめ
(画像= 図11:Virgin Orbitの空中発射用飛行機「Cosmic girl」と搭載ロケット「LauncherOne」
Credit : Virgin Orbit、『宙畑』より引用)

また大分県の大分空港がこの Virgin Orbit と LauncherOne の宇宙港(離着陸港)の1つに選定されており、大分県が新たなロケットの発射地になる日が来るかもしれません。

これからのロケット打上げ射場

このようにロケット本体ではなく射場にも、様々な制約とそれに対する工夫と挑戦が隠されていました。今後、人工衛星や小型ロケットの需要拡大に合わせ、打上げ射場も様々な工夫を凝らし、活躍の場を広げていくことになるでしょう。

ビジネス的な側面で言えば射場を観光資源として観光地化することや、射場のシェアリング事業なども考えられています。また現在 SpaceX 社が開発を行っているStarshipとSuper Heavyは火星ミッションのほか、地上間の弾道飛行も計画されており、飛行機の代わりとしてロケットを使う可能性も現実になりつつあります。そうなった時、地理的に打上げに有利な日本は、世界各地と宇宙を結ぶ一大ターミナル国家になる日が来るかもしれません。

提供元・宙畑

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