世界のロケット打上げ射場
では上述した3つの条件「①東及び南北いずれかにひらけている」「②低緯度地域」「③他産業と干渉しない」を念頭に置きながら、各国の主な打上げ場を見ていきましょう。
日本
あらためて日本の解説です。日本列島はアジア大陸の東に位置し海に囲まれています。漁業との兼ね合いもありますが、地理的に東と南に大きく開けた海を持っており、打上げに有利な場所と言えます。比較的低緯度な鹿児島県の種子島や内之浦にJAXAの打上げ射場はあります。民間では北海道大樹町や、上述の本州最南端和歌山県串本町などがあります。
アメリカ
アメリカは打上げる方向によって射場を使い分けています。東向きの場合、アポロやスペースシャトルなども打上げたフロリダのケネディ宇宙センターを利用し、南向きに打上げる場合はバンデンバーグ空軍基地の射場を用います。それぞれ東に開けた場所と南に開けた場所とで特徴がはっきりしているのが地図からも読み取れます。打上げたい目的とその方向にそれぞれ特化した打上げ射場を用意しているパターンになります。
ヨーロッパ
国境線が複雑でかつ東側に大きな海を持たないヨーロッパは、かつてアフリカや南米、オーストラリアなど他の地域に射場を作る場合が多くありました。
現在は主にESAとして共同で打上げを実施しており、打上げは南米ギアナのフランス領内にあるギアナ宇宙センターで行っています。東と北に開け緯度5°という低緯度に位置しているギアナ宇宙センターは非常に打上げに優れた立地にあり、大型の打上げ射場としては最も有利な場所にあると言われています。 陸上ではこの上無しの立地ですね!
ロシア
ロシアの射場は世界初の人工衛星「スプートニク」も打上げたバイコヌール宇宙基地です。打上げに適した海岸線を持たないロシアでは、広大な土地を利用して内陸部から打上げています。ソ連時代に建設されたバイコヌール基地は、現在カザフスタンから借受ける形になっており、近年ではロシア国内に新設したボストチヌイ宇宙基地に拠点を移す計画が進められています。
イスラエル
最後は数少ない西向き打上げを行っているイスラエルです。東側には中東各国もあるため、唯一開けている西の地中海側に向けて打上げています。地球の自転を利用することができないため、ロケットとしてはかなり不利な打上げを強いられていることになります。
以上、世界の主な打上げ射場になります。射場の地理的条件はロケットの打上げ能力にも大きく影響するため、射場に適した領土を持っているかは宇宙開発における大きな要因の1つになっているとも言えます。その点日本は比較的恵まれた環境にあると言えますね!
盛り上がる小型ロケット市場と射場
大樹町、串本を例に挙げましたが、すでに海外では以下のような小型ロケットを打ち上げられる射場があります。
RocketLab(ニュージーランド)
小型衛星で商用打ち上げの実績もあるRocket Labの射場はニュージーランドのマヒア半島にあるOnenui Station射場であり、南と東に開けた打上げのしやすい立地になります。南緯約40°付近(北緯で見ると秋田ぐらい)と比較的高緯度に位置しますが、これは小型ロケットが輸送する小型衛星は地球観測用など、南北に打上げる場合が(一般的な大型ロケットと比較して)多いという、小型ロケット射場ならではの事情を考慮した結果なのかもしれません。
Astra(アラスカ)
2020年頃から急激に知名度を上げてきたAstra社の射場はアメリカアラスカ州コディアックになります。北緯約60°という高緯度に位置しており、また東にはカナダやアメリカがあることから、南向きの打上を主に行っていくと考えられます。
スコットランド
Orbex社等が打上げ射場として計画しているのがイギリス スコットランドのサザーランド宇宙港になります。ここはイギリスが自国内に打上げ射場を建設するべく計画が進められており、年間12回の打上げが承認されています。また、ここでは海外のロケット企業が打上げを実施できるような仕組みを整えようとしており、国際的な射場シェアリングの舞台になるかもしれません。