まず原発を再稼動せよ
LNGへの依存度を下げるために考えられる対策は次の3つである。
- 原発の再稼動を進める
- 石炭火力をできる限り延命する
- エネルギー基本計画を修正する
現在もっとも安価な非化石エネルギーは原発の再稼動である。特に5年前に原子力規制委員会が設置変更許可を出した後も地元の反対で止まったままの柏崎刈羽6・7号機を早急に再稼動すべきだ。
また原発を運転開始から40年で廃炉にする「40年ルール」を改正し、長期的には既存サイトの中で新たな原子炉を建設するリプレースを進めるべきだ。統合費用を含めて計算すると、軽水炉は再エネよりはるかに安い。同時にSMR(小型モジュール炉)やHTTR(高温ガス炉)など次世代の技術開発を進める必要がある。
石炭火力をゼロにするというCOP26の目標は、日本の高効率の石炭火力には当てはまらない。むしろ途上国の非効率な石炭火力を日本のIGCC(石炭ガス化複合発電)などに代替することで、CO2排出量は大幅に減らせる。
脱炭素化よりエネルギー安全保障が優先だ
そして実現不可能な「2030年CO2排出46%削減」という目標を取り下げ、現実的な数値に修正する必要がある。ドイツの方針転換は、2015年のパリ協定以来つづいてきた非科学的な脱炭素化運動の転機となろう。
最優先すべき目的は、安価なエネルギーの安定供給によって生活や産業を守るエネルギー安全保障である。これが欠けると文字通り国民の安全が脅かされることは、今回のウクライナ戦争で、ドイツも思い知ったことだろう。
100年後の地球の平均気温が1℃上がるか2℃上がるかという問題は、このような生命・財産の安全にかかわる問題とは緊急性も重要性も比較にならない。この戦争がエネルギー問題の優先順位を考え直すきっかけになれば、不幸中の幸いだろう。
文・池田 信夫/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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