韓国の現代自動車(Hyundai Motor Company)の日本法人「ヒョンデ・モーター・ジャパン」は2022年2月8日、日本市場へ再参入すると発表した。ただし、日本に導入するのはBEVの「IONIQ 5(アイオニック 5」、FCEV(燃料電池車)の「NEXO(ネッソ)」の2車種に限定されている。
現代自動車「ヒョンデ」の現実
販売方法は、自社WEBサイトでのオンライン販売で、5月からオーダーの受付開始し、7月からデリバリーを開始するとしている。つまり自社の販売網は展開せず、オンライン販売のみと限定的だ。
リアルな体験拠点としてヒョンデ カスタマーエクスペリエンスセンターを2022年夏に横浜市に開業し、同時に試乗も可能なポップアップスペース「ヒョンデハウス原宿」を東京都渋谷区に開設(2022年2月19日〜5月28日)。その他に他社と協業で、カーシェアやサブスクリプション(月定額払い)サービスも検討している。
現代自動車は、日本には2001年〜2009年の間、参入しコンパクトカー、セダンなどをラインアップしていたが、2009年12月に乗用車部門は撤退、バス部門のみの営業となっていた。今回は2度目の挑戦となり、販売車種はBEV、FCVに絞っている。
なお2001年に日本に参入した時の現代自動車の名称は「ヒュンダイ」としていたが、今回からより現地の発音に近く、グローバル統一のブランド名「ヒョンデ」としている。
現代自動車は、現在では年間160万台の生産能力を持ち、193カ国で販売しているグローバル自動車メーカーだ。現代自動車にはアメリカ、カナダ、インド、チェコ、ロシア、中国、トルコに製造工場を展開し、研究開発センターは、韓国(3ヵ所)、ドイツ、日本、インドにある。さらに、カリフォルニアにはデザインセンターを所有している。
2021年のグローバル販売台数は666万台で、ホンダを上回る規模を持ち、世界第5位、アジアの自動車メーカーとしてはトヨタに次ぐポジションを得ている。
ブランドは、ヒョンデ、起亜(Kia)、ジェネシス(上級ブランド)、BEVのサブブランド「Ioniq(アイオニック)」を展開している。
現在自動車は、2006年にドイツ リュッセルスハイム市にあるデザインセンターの責任者として元BMWのトーマス・ビュルクルを起用し、流動的で、ダイナミックなデザインを採用。さらに元アウディの傑出したデザイナー、ペーター・シュライバーが起亜のデザイン責任者となり、その後は現代自動車グループの最高デザイン責任者・兼副社長に就任(2021年12月退任)洗練されたデザインや商品力は世界でも高い評価を受けている。
IONIQ 5
C/DセグメントのIONIQ 5は、電気自動車に特化したサブブランド「IONIQ」として販売される最初のクルマであり、ヒョンデ電気グローバルモジュラープラットフォーム (E-GMP) で開発され、2021年2月にワールドプレミアが行なわれている。
デザインは、2019年のフランクフルト モーターショーで発表された「ヒュンダイ45 EVコンセプト」をベースにしており、初代ヒュンダイ・ポニーをオマージュしながら、先進的な「パラメトリックピクセル」デザインを採用し、スマートなエクステリアとなっている。
IONIQ 5はクロスオーバーSUVで、ボディサイズは全長4635mm、全幅1890mm、全高1645mm、ホイールベース3000mmで限りなくDセグメントに近く、BEVであることを最大限に活用するために超ロングホイールベース、フルフラットのフロアが特長だ。そのため、キャビンが広いことはもちろん、140mm後方にスライドできるフロント センターコンソールを備えている。
ラゲッジ容量は527L/1600L。また、IONIQ 5は後輪(RR)駆動とAWDをラインアップしており、後輪駆動の場合のフロント トランク容量は57L(AWDは24L)を設けている。
インスツルメントパネルにはメーターパネル用とインフォテイメント用の12.3インチの横長のディスプレイをレイアウト。内装材の多くには、ペットボトルなどのリサイクル素材を使用しているのが特長。ルーフは1枚の大きなガラスパネルで構成されている。インテリアのデザインは、ラウンジのような快適さを追求し、シンプルでクリアだ。
E-GMPプラットフォームに、搭載バッテリーは2タイプが設定され、容量はエントリーモデルが58kWh、上級グレードは72.6kWhで、58kWhモデルでの航続距離は498km、後輪駆動の72.6kWhモデルは618km、AWDの72.6kWhモデルは577km(いずれもWLTCモード)と、BEVとして十分な航続距離を持っている。
モーター出力は、エントリーグレードが170ps/350Nm、上級グレードは217ps/350Nm、AWDは前後モーター合計で305ps/605Nmという高出力・大トルクを実現。
サスペンションはフロントがストラット、リヤがマルチリンク式。タイヤは19インチ、AWDのみは20インチサイズを採用している。なお装着タイヤは、ミシュランのBEV専用に開発されたパイロットスポーツEVだ。
充電は100V、200V普通充電(最大6kW/30A)と,CHAdeMO規格の急速充電に対応。IONIQ 5はグローバルカーであり、急速充電に関してはヨーロッパの800Vシステムにも対応しており、350kWの高出力充電器では10分間で100km、30分間で350km以上の走行距離分を充電できる性能を持っている。
またIONIQ 5は、内蔵のV2L(Vehicle to Load)機能を標準装備し、外部に最大1.6kWの電気を供給できる。
先進安全装備は、現在の最新モデルにふさわしい運転支援システム「スマートセンス」を搭載し、ナビ連動ACC、オートパーキングなども装備されている。なお、ナビゲーションはスマートフォンの機能をセンターディスプレイに表示する方式を採用。
IONIQ 5は、日産アリア、トヨタ bZ4X、スバル ソルテラなどとの直接的な競合モデルとなるが、バッテリー容量や機能、性能面では勝るとも劣らない存在で、価格的にもアドバンテージを持つBEVということができる。