老後資金についての不安は漠然として見えにくいものです。当然考えなくてはいけないと思いつつも、避けていませんか? 老後破産、長生きリスクなど、人生が長くなったがゆえの危機が社会問題化しています。楽しく安心なセカンドライフを過ごすためには、実情を迅速に認識して行動するしかありません。誰にでも確実に老後はやってきます。そこで、ここでは現代の老後問題やさまざまな老後資金の考え方について紹介します。
目次
長生きリスク、老後破産が問題化
老後には月27万円、定年時に貯金は2,000万円欲しい
・家計調査にみる現実は?
長生きリスク、老後破産が問題化
人生100年時代がやってきました。定年の年齢では、まだまだ体力も気力も充実している方は多いです。それまでの生き方と違ったセカンドライフを過ごすことも可能です。
厚生労働省の2020年簡易生命表によると日本人の平均寿命は男性が81.64年、女性が87.74年となっています。ともに過去最高を更新しました。
厚生労働省が5年ごとに作成する、平均してあと何年生きられるかという期待値等を、死亡率や平均余命などの指標によって表した生命表の確定版である「完全生命表」のデータを見てみましょう。
「0歳の平均余命(つまり平均寿命)」を過去から現在まで遡ってみると、戦前では男女ともに50年を下回り、1960年(第11回)では男性が65.32年、女性が70.19年、2015年の第22回生命表では男性が80.75年、女性が 86.99年でした。戦後の高度成長期から55年で15年以上も平均寿命が延びました。
平均寿命が延びるということは、定年後のセカンドライフの期間も長くなるということです。そしてセカンドライフを楽しく過ごすためには、肉体的、精神的な健康はもちろん、生きていくための生活費がなくては、精神的・肉体的な安定もままなりません。
平均的な定年を60歳とするならば、2015年のセカンドライフは男性なら20.75年、女性なら26.99年です。
「人生100年時代」といわれる今、60~100歳まで生きるならば第二の人生期間は40年もあります。そういったことを踏まえたうえで、リタイア後に必要な平均的な生活費と年金支給額を見ておきましょう。
老後には月27万円、定年時に貯金は2,000万円欲しい
金融に関する広報活動を行う金融広報中央委員会が「家計の金融行動に関する世論調査」を毎年実施しています。全国8,000世帯を無作為で抽出し、家計の金融行動に関するアンケートを実施します。
2020年は、2人以上世帯における金融資産の中央値は650万円でした。コロナの影響で調査方法が郵送のみに変わり、それまでの調査結果と単純比較はできませんが、2011年以降のデータでは最高額となっています。
「資産を増やしたい」という方が増えているといえるかもしれません。
金融資産を保有している人の保有額の主な内訳は、預貯金が47.2%、株や債券や投信などの有価証券は20.0%、生命保険は19.5%となっています。
同調査では、老後に関する質問もしています。
「老後のひと月当たり最低生活費・年金支給時に最低準備しておく金融資産残高 <問25>」の問いに対しては、「老後のひと月当たり最低予想生活費」が27万円、「年金支給時に最低準備しておく金融資産残高」は2,160万円という回答でした。
これがリタイア時に必要な平均的な生活費のイメージでしょう。
家計調査にみる現実は?
総務省の家計調査では、2020年の消費支出の金額は、総世帯で2年ぶりに大きく減少しました。
新型コロナウイルスによって生活が大きく制限されるなどの影響が考えられるため、前年2019年のデータを見てみます。
2019年の、世帯主が夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯(高齢無職世帯のうち高齢夫婦無職世帯)について見ると、消費支出は239,947円、実収入は237,659円、可処分所得は206,678円となり、支出が上回り、毎月33,269円不足する結果となっています。
またこの支出金額は、先のアンケート結果の27万円にも届かない水準ということがわかります。