目次
・地球に唯一帰還するアポロ計画の「司令船」と帰還方法
・米シカゴでアポロ8号の司令船発見!

・地球に唯一帰還するアポロ計画の「司令船」と帰還方法

アポロ計画の宇宙船(月着陸船、司令船、機械船)のなかで、月から地球に帰還したのは毎回「司令船」だけでした。司令船はどのように地球へと帰るのでしょうか。宇宙船が月面から地球に帰還する際、2人の宇宙飛行士が乗る月着陸船の上段が、月の周回軌道で1人の宇宙飛行士が待機する司令機械船とドッキングします。そして、大気圏突入直前に司令船から機械船が切り離され、司令船だけになった状態で大気圏に再突入し、地球へ帰還することができます。

月から地球へ帰還する方法とは?幻のアポロ司令船を追う
(画像=ドッキングした宇宙船の様子
Credit : NASA、『宙畑』より引用)

一方、月着陸船の上段は、月面上での衝撃波測定実験のためわざと月面に落とされたり、アポロ10号では太陽軌道に放棄されたり、アポロ13号では大気圏突入時に燃え尽きたりと、さまざまな運命を辿っています。月への行き方と帰還方法の概略図は、NASAのジェット推進研究所(JPL)で働く小野雅裕さんの連載記事で紹介されている絵がとても分かりやすいので参考にしてくださいね(図を見る!)。

月から地球へ帰還する方法とは?幻のアポロ司令船を追う
(画像=『宙畑』より引用)
月から地球へ帰還する方法とは?幻のアポロ司令船を追う
(画像=アポロ17号司令船メインパラシュート(宇宙博2014)
Credit : sorabatake、『宙畑』より引用)

司令船の大気圏再突入時の速度は時速4万キロにも達します!最終的に時速約30キロメートルまで減速するため、地球から高度約8キロメートル(時速約500キロメートル)でパラシュート格納部の蓋を開けるために直径約2メートルのドラッグシュートが開傘し、その次に減速のため直径約5メートルのドラッグシュートが2つ開傘し、最後に高度約3キロメートル(時速約260-280キロメートル)で3つのメインパラシュート(直径約25メートル)が開傘。最後に司令船は海に着水し、回収されます。なんと、アポロ15号ではメインパラシュートの1つが開傘しないトラブルも発生しました!

月から地球へ帰還する方法とは?幻のアポロ司令船を追う
(画像=パラシュート開傘の順番
Credit : NASA、『宙畑』より引用)

大気圏突入時、司令船を高温のプラズマ(固体・液体・気体に続く物質の第4状態)が包み込み、地上局間との電波を遮り、地上との通信が断絶する「ブラックアウト」と呼ばれる状態が約3分間発生します。司令船が無事に着陸し再びコンタクトがとれたとき、ミッションコントロールの管制官はなんと安堵したことでしょう!

司令船が地球へ帰還したのはアポロ7号から17号の計11回でした。アポロ1号からアポロ17号まで使われた本物の司令船が展示されている場所は、アメリカのスミソニアン航空宇宙博物館の公式ホームページに掲載されています(参照)。そのうち、4箇所はGoogle ストリートビューで遠隔からでも司令船を見学することができます。4箇所のGoogle ストリートビューをまとめたツアーをGoogle ツアービルダーで製作したので、ぜひご参加ください!(司令船展示会場のGoogle ストリートビューツアーに参加・動作エラーが出る場合は上記の動画で参加!)遠隔から博物館や科学館を見学することは、ひと昔前は考えられなかったことですね。アメリカ以外には、イギリスの首都ロンドンにアポロ10号の司令船があります。

・米シカゴでアポロ8号の司令船発見!

米イリノイ州の都市シカゴは、別名「風の街(Windy City)」というあだ名があります。風を象徴するのは「人工的な風洞」と呼ばれるジョン・ハンコック・センター超高層ビルのビル風です。街中には、風でスカートをなびかせているマリリン・モンロー像もあります。シカゴは航空産業のボーイング本社があることでも有名です。

月から地球へ帰還する方法とは?幻のアポロ司令船を追う
(画像=巨大なマリリン・モンロー像(シカゴ設置は2012年まで)
Credit : sorabatake、『宙畑』より引用)

シカゴ科学産業博物館(Museum of Science + Industry)で発見したのが、日の出ならぬ「地球の出」を撮影したアポロ8号の司令船です。

月から地球へ帰還する方法とは?幻のアポロ司令船を追う
(画像=アポロ8号の司令船(シカゴ科学産業博物館)
Credit : sorabatake、『宙畑』より引用)

アポロ8号の司令船パイロットとして活躍したのが、ジェームズ・ラベル宇宙飛行士です。彼はその他にも、ジェミニ計画、アポロ11号のニール・アームストロング船長のバックアップ搭乗員、アポロ13号の司令官として活躍しました。1973年にNASAを引退したとき、715時間5分の宇宙飛行時間を記録した宇宙飛行士です。

月から地球へ帰還する方法とは?幻のアポロ司令船を追う
(画像=ジェームズ・ラベル宇宙飛行士
Credit : Texas A&M University、『宙畑』より引用)

そんな偉業を成し遂げたジェームズ・ラベル宇宙飛行士ですが、目標に近づくまでは紆余曲折の道を歩んでいます。学生の頃、彼は「僕はロケットのエンジニアになりたいです」とアメリカロケット協会に手紙を宛てましたが、その返事は「マサチューセッツ工科大学またはカリフォルニア工科大学に入学しなさい」という素っ気ないものでした。12歳のときに父親を亡くし、彼には払える学費がありませんでした。その後、メリーランド州アナポリスの海軍兵学校に入隊願書を提出しますが、そこでも入隊を拒否されてしまいます。それでも諦めず、ウィスコンシン大学で予備役将校訓練課程を2年間経た後、再度願書を提出し、ようやく入隊が認められた経緯があります。学生時代は液体ロケットについて論文を執筆しています。

月から地球へ帰還する方法とは?幻のアポロ司令船を追う
(画像=アドラー天文博物館
Credit : Adler Planetarium、『宙畑』より引用)

最後まで諦めなかったジェームズ・ラベル宇宙飛行士。1930年、篤志家マックス・アドラー氏により全米で初めて建設されたプラネタリウム、アドラー天文学博物館に飾られている言葉をご紹介します。

“If you want to be successful as an astronaut or as anything else, you have to keep trying. There will be disappointments in your life. You’ll get so far and then there will be a setback. And if you let the setback overcome your drive, your willpower, then you’re in trouble.” Jim Lovell

「宇宙飛行士でも、何を目指すとしても、その分野で成功するためには挑戦し続けなければいけない。人生で落胆することは必ずある。ここまで努力してきて、ここまでようやく辿り着いたと思った瞬間、新しい障がいが目の前に立ちはだかる。だが本当に君がトラブルに巻き込まれるのは、逆境や壁に君の意欲や意志を屈服させてしまったときだ。」ジェームズ・ラベル宇宙飛行士