(3)一次産業xテクノロジー事例

本章では「人の作業を最小限に抑える」「生産効率を上げる」という点で期待されている一次産業xテクノロジーの事例をご紹介します。

位置情報や地球全体の情報を広域に取得できる衛星データが鍵となっているテクノロジーもあるので、「これは宇宙使ってるのかな?」と探してみてください。

農機・建機・船の自動運転

人が介在しないという点で最も知名度が高いテクノロジーは位置情報を利用した自動運転車でしょう。

日本でも準天頂衛星「みちびき」の誤差数センチの精度の位置情報を利用した農機がテスト運用されており、その利便性から一般化への期待が高まっています。上の動画は2018年12月販売開始が発表されたクボタの自動運転アシスト機能付「アグリロボコンバイン」です。

また、自動運転については林業・漁業でも期待の声が多く、先日林業の自動運転車についてはスウェーデンの企業が2020年の実用化を目指していると発表がありました。

今後の動向にもさらに期待が高まるテクノロジーです。

生育状況の監視・給餌の自動化

また、一次産業において人手がかかるのは種植え、収穫などの作業だけではありません。

農作物の生育状況、養殖であれば魚が育つまでの生育を促すための手入れにも、人が生産の場を訪れて生育状況を見る、餌や肥料を与えるなど手がかかるものです。

そこで、衛星やドローン、またいけすの中からリモートで生育状況を監視するサービスが続々と生まれています。

たとえば、青天の霹靂という青森のお米の生育に衛星データが活用されており、衛星データを使って稲の生育状況を管理し、担い手不足、高齢化の進行により一人当たりの管理面積が増える中で、どの田んぼから稲を刈り取ればよいかの優先順位をつける。また、肥料をどれくらい与えればよいかを衛星データから判断するなど、効率化が進み、お米の品質向上にもつながっている事例があります。

詳しくは「『青天の霹靂』に聞く!衛星データを用いた広大な稲作地帯の収穫時期予測」をご覧ください。

日本の一次産業はホントに厳しいの? 高齢化先進国としての未来とテクノロジーの進歩
(画像=『宙畑』より引用)

また、漁業の分野では養殖業において魚の監視から給餌の自動化の取り組みがすでに始まっています。

2018年6月21日に9.2億円の資金調達を発表した日本のベンチャー「umitron」では衛星データから海面温度やプランクトン分布を、いけす内に設置したカメラで魚の状態をモニタリングし、餌やりタイミングの最適化を行っています。

生育監視の自動化ができることで、これまでは生産者が何度も生産の場に訪れていた時間がなくなり、餌やりや肥料のタイミングが最適化されることで、生産者の労働時間短縮につながっています。

漁場の発見による漁獲量向上と燃費削減

日本の一次産業はホントに厳しいの? 高齢化先進国としての未来とテクノロジーの進歩
(画像=Credit : JAFIC、『宙畑』より引用)

次に紹介するのは沖合漁業の事例です。

衛星から取得できる気象データや海水温データと地上のデータを掛け合わせることで、獲りたい魚の居場所に目星をつけることができます。漁師はそのデータを見ながら、船を走らせればよいのです。

これにより漁獲量の向上と燃費の削減、海に出る時間の短縮が可能となります。実際にサービスで得られた効果がまとめられた調査報告もありました。たとえば燃費削減は平均13%の効果があったようです。

農業や林業においても土壌や気候のデータを掛け合わせることで「特定の作物や樹木についてよく育つだろう場所を見つける」ということが可能になるかもしれません。

(4)高齢化先進国「Japan」にチャンスを見出す

以上、3つの一次産業xテクノロジーの事例を紹介しました。一次産業の可能性について少しでもわくわくしていただけたでしょうか。

人の作業が最小限に抑えられ、生産効率が上がるということはつまり、同じ稼ぎを得るための労力が「楽になる」ということ。

そこで、次に見ていただきたいのは以下のグラフ。

日本の一次産業はホントに厳しいの? 高齢化先進国としての未来とテクノロジーの進歩
(画像= 内閣府 高齢社会白書提供データ(※5)より宙畑が作成
Credit : sorabatake、『宙畑』より引用)

これは世界の高齢化率の推移を表したものです。グラフをご覧いただくとわかる通り、日本は高齢化にまっしぐらな国として度々話題に上がりますが、実は、高齢化は世界的な傾向。

「日本が先に高齢化を迎えているだけ」という考え方もできるかも……?

つまり、日本が高齢化先進国として真っ先に高齢化を明るく乗り越えた国となる可能性を秘めているのです。

楽観的過ぎるかもしれませんが日本において一次産業xテクノロジーが進めば「楽に稼げる日本の一次産業」が実現できるのではないでしょうか。

高齢化による衰えもカバーしながら、新しく副業でも始めてみようかなという人や他国や他業種からの参入が増え、これからの日本の一次産業が盛り上がるかもしれません。

日本はこれから少子高齢化がさらに加速し、どんどん苦しくなるといった閉塞感があります。しかし、立ち向かうべき問題はテクノロジーで解決できます。そして、今回ご紹介した事例のように衛星データもきっと寄与できると宙畑では考えています。

筆者が65歳となったときに、楽しく生きていられるよう、これからも努力することを胸に誓って、最後に、ビルゲイツの名言をご紹介します。

「人はいつも今後2年の変化を過大評価し、今後10年の変化を過小評価してしまう。無為に過ごしてはいけないんだ。(We always overestimate the change that will occur in the next two years and underestimate the change that will occur in the next ten. Don’t let yourself be lulled into inaction.)」

提供元・宙畑

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