2021年度の固定資産税、すでに支払いを済ませたという方も、納付金額は確認されましたか? 税額を見て「あれ?去年と同じだった」と気づかれた方もいるのではないでしょうか。実は2021年は、「固定資産税額が上がる」と予測されていた年でした。なぜ上がるといわれていたか、そしてなぜ上がらなかったのかについて説明します。
目次
固定資産税がアップする背景
・3年に1度の評価額見直し「評価替え」
2021年は評価額が上がっても据え置きに
・2021年の公示価格
東京都の住宅地
固定資産税がアップする背景
3年に1度の評価額見直し「評価替え」
固定資産とは、宅地や田んぼなどの土地と、住宅や店舗・工場などの建物(家屋)、そして土地・家屋以外の機械や器具などの事業用資産(償却資産)のことをいい、毎年1月1日時点でこれらの固定資産を所有している人が1年分の税金として「固定資産税」を納める決まりになっています。
土地と家屋の税額(課税標準額)は、購入価格がそのまま課税標準額になるのではなく、「適正な時価」であることと定められています。日本の国土は広大で、評価対象となる土地の数は「約1億8,000万筆」あり、また建物の数も「約6,000万棟」と多く膨大です。
そのため、毎年時価を評価するのは実務上不可能かつコストもかかるため、土地と家屋については原則として3年ごとに評価額が変わるルールになっています。適正な時価の見直しをすることを「評価替え」といいます。
土地の評価替えは、地価公示価格・不動産鑑定士の鑑定評価などに基づいて評価額が決まります。建物の評価替えは、評価の時点で新築するとしたときの建築費(再建築価格)に、経年によって発生する損耗状況の減点補正等をして決まります。
2021年(令和3年)度は、3年に1度の評価替えの年でした。
2021年は評価額が上がっても据え置きに
土地の評価替えの基準のもとになる公示価格は、2020年1月1日時点の地価公示に基づいて課税されることになっています。そのため本来であれば全国的に上昇する傾向のはずでしたが、新型コロナウイルスの流行によって変わりました。
新型コロナウイルスによって日本企業の経営環境や家計の所得環境が悪化するなかでの固定資産税アップは、「コロナ収束後の回復の支障となる」という懸念が出てきました。そこで、2021年の評価替えによって課税額が上昇するすべての土地について、「2020年(令和2年)度の税額に据え置きされる」という、課税標準額の据え置き措置が取られることが税制改正大綱で決まりました(土地に係る固定資産税の負担調整措置等の延長と経済状況に応じた措置)。
2021年の公示価格
「2021年(令和3年)度の評価替え」に向けた作業は、2020年1月1日から進められました。2020年の1月1日時点では、どの用途の土地も全国的に上昇が続いていて、首都圏の1都3県を中心とする東京圏では、住宅地・商業地・工業地いずれも7年連続でプラスでした。この動向は、2020年も継続するはずでした。それが新型コロナウイルスの影響によって大きく変わりました。
本来であれば2020年1月1日時点の地価公示をもとに固定資産評価額が決まるので、税額は増加するはずでしたが、2020年の評価替え作業が始まったあと、新型コロナウイルスの流行に伴って地価が下落している地点があることもわかってきました。そこで2020年7月1日までの間に地価が下落していることがわかった場合には、地価下落を評価額に反映させる措置が取られることになりました。
そして2,353人の鑑定評価員(不動産鑑定士)によって全国26,000地点が選定・確認され、分科会等で議論され決まった評価価格が2021年3月に発表された公示価格です。
結果は、全国平均で見たとき全用途の平均が6年ぶりに下落しました。住宅地は、東京圏が8年ぶり、大阪圏(大阪府・兵庫県・京都府・奈良県)が7年ぶり、名古屋圏(愛知県・三重県)が9年ぶりに下落しました。商業地は、三大都市圏すべてで8年ぶりに下落に転じる事態となりました。
東京都の住宅地
2021年公示価格の全体的な傾向では下落が特徴でしたが、すべての土地で下がったかというとそうではなく、上昇した土地もあります。東京23区の住宅地では、港区と目黒区が上昇しました(対前年平均変動率0.3%)。
最も高い価格の住宅地は、東京都港区赤坂(1-14-11)の4,840,000円/m2で、前年の地価公示価格より2.5%上昇しています。