ニーズの答えるため、あらゆるデータを先進的に取得するウェザーニューズ社の原点

ところで、ウェザーニューズ社の事業区分の話が出た時に、「BtoB」の事業の方が売上が大きいこと、気になりませんでしたか?

実は、ウェザーニューズ社の創業のきっかけとなったのは、天気予報ではなく、企業向けの気象情報提供なのです。

「天気予報をより身近なものへと変革させてきたウェザーニューズ。創業のきっかけとなったのは、1970年に福島県いわき市・小名浜港で起きた貨物船沈没事故です。」(安井さん)

後にウェザーニューズの創業者となる石橋博良(いしばし ひろよし)さんは、当時木材を扱う商社マンでした。木材の運搬船が着船する予定だった大阪湾が混雑のため莫大なチャーター料がかかってしまうことがわかり、石橋さんは寄港する港を福島県の小名浜港に変更。すると、小名浜港は当時の技術では予測が難しかった爆弾低気圧に襲われ、船が沈没してしまったのです。乗組員のうち15名が亡くなる大規模な事故となりました。

「洗濯物が乾く時間が10分単位でわかる」50年以上気象データを用いて顧客ニーズに応え続けるウェザーニューズの今
(画像= 画像はイメージです 、『宙畑』より引用)

「本当に役立つ気象情報があれば、この事故は防げたかもしれない」
「船乗りの命を救いたい」

こう思った石橋さんは、海運向けの気象サービスを展開するアメリカのオーシャンルーツでの勤務を経て、ウェザーニューズを創業。安全で経済的な航路を提案する「ウェザールーティングサービス」の提供を開始しました。

続けて、1977年に仕出し弁当屋からの問合せがきっかけで陸地向けのサービスが始まりました。

仕出し弁当屋は、運動会などの行事で需要が集中するときはパート従業員のシフトを管理するのに、深夜1時までに天気予報を確認する必要があるのですが、当時は、気象庁の天気予報電話サービスを利用しても前日の情報しか得られません。

つまり、陸地でもピンポイントな天気予報のニーズがあることがわかったのです。ピンポイント天気予報の本格的な提供に向けて、まず目をつけたのは、気象衛星の活用でした。

「1977年に打ち上げられた静止気象衛星「ひまわり」のデータを受信しようと、翌年にパラボラアンテナを設置。「ひまわり」シリーズの衛星画像を受信した初の民間事業者となりました。」(安井さん)

受信した情報は後々テレビ局などに初めて放送していくなど、当時は日本初、世界初といった試みが絶え間なかったようです。

そして、ウェザーニューズ社の企業ニーズにこたえるためのデータ取得への積極的な姿勢は現在でも衰えることはありません。

「海氷の融解が進んでいることを受け、北極海航路を使えないかという船会社からの相談があり、よりタイムリーに情報が収集できる自社衛星の運用に乗り出します。超小型衛星を活用した宇宙ビジネスを展開するアクセルスペースと共同で衛星開発をスタートさせ、2013年に「WNISAT-1」、2017年に「WNISAT-1R」を打ち上げました。」(安井さん)

衛星を受信するだけではなく、自社衛星を開発するに至ったウェザーニューズ社。ニーズを捉え、それを実現するデータを取得するために最先端技術に挑戦を続けてきた姿勢を続けた結果、BtoB事業は44市場に展開し、世界最大級の気象情報会社へと成長しました。

「洗濯物が乾く時間が10分単位でわかる」50年以上気象データを用いて顧客ニーズに応え続けるウェザーニューズの今
(画像=『宙畑』より引用)

精度が上がり、より身近でピンポイントな情報となりつつある天気予報。前編本記事では、ウェザーニューズの成り立ちや暮らしに活かせられているケースを中心にうかがいました。

後編では、サポーターとウェザーニューズが持つ独自のデータを最大限活用し、44もの市場にサービスを提供するウェザーニューズ社のBtoB事業をさらに深ぼります。

取材を進める中で見えてきたのは、今この瞬間はまさに、様々な市場で気象データを用いたビジネス変革の過渡期であり、これからさらに気象データを用いて「●%効率アップ!」「売上●%アップ!」といった話題が増える可能性で溢れているということでした。

提供元・宙畑

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