「全国一般風ノ向キハ定マリナシ。天気ハ変ワリ易シ。但シ雨天勝チ
(宙畑意訳:全国的に、風向きは不安定。変わりやすいお天気です。ただし、雨が降ることが多いでしょう)」

これは、1884年6月1日に日本で初めて発表された天気予報です。全国的に風向きが変わりやすく、雨が降る地域もあることを示しています。おおざっぱな内容であるうえに、この天気予報は東京都内の交番に掲示されるだけ。生活に役立てられる人はわずかだったのではないかと考えられます。

それから130年以上が経った今、天気予報の精度は格段に上がり、私たちの生活になくてはならない存在になりました。ビジネスの場での活用も期待されています。天気予報サービスの現在地を大手気象情報会社ウェザーニューズの広報の中村好江さんと安井百合愛さんにうかがいました。

1日18万通! サポーターから寄せられる各地の空模様が精度向上を後押し

ウェザーニューズの天気予報が当たる確率は業界最高精度の90%。広報を担当する中村さんは、携帯電話やスマートフォンで手軽に写真を撮って共有できるようになったことがブレイクスルーだったと説明します。

「レーダーが雨雲を捉えていても、実際に雨が降っているのかどうかはわかりません。逆にレーダーに写らない雨雲が雨を降らすこともあります。気象観測機が発達し、細かい情報が得られるようになってきていますが、現地の天候はその場にいる方が一番よく知っています。そこで、カメラ付きの携帯電話が普及してからは、空を写真で撮って送ってもらい、気象情報と組み合わせることで予報の精度を向上させています」(中村さん)

ウェザーニューズは自分がいる場所の天候を共有するユーザーのことをサポーターと呼び、1日の天気報告の数はなんと18万通にもなるそう。全国各地から、実際の空模様の情報を収集する仕組みが出来上がっているのです。

天気痛予報にお洗濯情報。サポーターのニーズを続々とサービス化

中村さんは、直近の数年で天気予報の見方が変わってきていると話します。

「今までは、テレビで天気予報を見て『明日は何を着よう』『傘を持って行こう』と決める方が多かったのではないかと思います。ところが今は、いつでもどこでもスマートフォンで天気予報を見られるようになっています。その結果、『ランチに傘はいるのか』『今から洗濯物を干してもよいのか』など、より細かく、1時間程度の生活行動に関する天気を知りたいというニーズが増えています」(中村さん)

実際に、ウェザーニューズ社が提供するスマートフォンアプリ『ウェザーニュース』で最も見られるのは、27時間後まで雨雲の動きが見られる雨雲レーダーなのだとか。さらに、ウェザーニューズ社は雨雲予測を独自に行っているため、250mメッシュという細かい解像度で10分間隔に雨雲の動きをくっきり滑らかに確認できるそうです。

「洗濯物が乾く時間が10分単位でわかる」50年以上気象データを用いて顧客ニーズに応え続けるウェザーニューズの今
(画像=『宙畑』より引用)

また、宙畑編集部が取材中に最も驚いたのは、2021年2月にリリースされた、洗濯物の取り込み時間がわかる『お洗濯情報』です。

「洗濯物が乾く時間が10分単位でわかる」50年以上気象データを用いて顧客ニーズに応え続けるウェザーニューズの今
(画像=『宙畑』より引用)

企画から実証、開発、リリースまでに1年以上の月日をかけたというこの機能。

「急な雨の予報はもちろん、洗濯物の干し始めの時間を設定すると、気温や湿度に応じた取り込み時間が10分単位でわかるサービスで、Tシャツやジーンズ、バスタオルといった洗濯物の種類ごとの必要時間を確認できます。また、サポーターにアンケートをとったところ、『お洗濯情報』は、夜干し派の方も多くいらっしゃることがわかったので、夜干し用のアイコンを追加しました。」(中村さん)

この機能を知っているのと知らないのとでは、1日の家事の効率がガラッと変わるのではないでしょうか。

他にも、同アプリには、天気によって起こる頭痛や腰痛、関節痛が出やすいタイミングを予測する新機能『天気痛予報』で、薬を飲むスケジュールを調整したり、『熱中症情報』では、1時間ごとに熱中症のリスクを地域ごとに教えてくれたりと、1日の体調管理の強い味方として役立ちます。

「洗濯物が乾く時間が10分単位でわかる」50年以上気象データを用いて顧客ニーズに応え続けるウェザーニューズの今
(画像=『宙畑』より引用)

「『天気痛予報』は、サポーター向けのアンケートで集めた天気痛の具合と気象情報を照らし合わせて分析し、予測のロジックを開発しました。」(中村さん)

どんどんアプリが高機能になっていく背景には、AIや機械学習の技術が発展したことにより、気象情報と何か別のデータを組み合わせて分析するのが容易にできるようになったことがひとつ。

もうひとつが、各機能の説明の際に必ずでてくるように、サポーターの協力があります。中村さんご自身もサポーターのことを「一緒にコンテンツを作っていく1番重要なパートナー」であると語ります。

実際に、ウェザーニューズ社の最新の有価証券報告書を見ても、サポーターと一緒に歩む企業であるということが明らかです。

「洗濯物が乾く時間が10分単位でわかる」50年以上気象データを用いて顧客ニーズに応え続けるウェザーニューズの今
(画像=『宙畑』より引用)

ウェザーニューズの有価証券報告書の事業別売上高を見ると、事業区分は「BtoB」と「BtoS」の2つに分かれています。

「BtoB」は「ウェザーニューズ社が企業たのために提供している事業」ですが、「B to S」という聞き慣れない言葉は何なのでしょうか。そうです、この「S」が表しているのは、サポーターです。全国の天候の様子を届けてくれるサポーターのニーズをしっかりと把握し、サービスの開発やアップデートを行なっているわけです。単に顧客のためとは言わず、サポーターのためと明確にしていることにウェザーニューズ社の強い意志を感じます。