将来展望
本記事では、人工衛星と宇宙機の軌道に関して「目的地としての軌道」と「移動ルートとしての軌道」の2種類の観点から説明してきました。また、本記事では触れませんでしたが、近年問題視されている宇宙デブリに関して、他の衛星に衝突しないか評価したり、何年後に大気圏に突入するかを評価するためにも、軌道解析(主に軌道伝播が用いられます)が欠かせません。本記事は軌道に関する入門の話でしたが、ミッションにとって有利な軌道・効率的な遷移軌道を計算するには、より高度な知識が必要となります。
例えば、JAXAが2020年代に打上げを目指している深宇宙探査技術実証機DESTINY+では、はやぶさやはやぶさ2で開発されたイオンエンジンによるスパイラル軌道制御、ひてんやのぞみで用いられた月マルチスイングバイ技術が併用されることで、小型ロケットでも深宇宙探査ができる世界を切り拓こうとしています。
地上で旅行をする場合、近年、カーナビやGoogleマップが普及したため、綿密な計画を立てずとも旅行ができるようになりました。しかし、宇宙の旅は、現状、軌道の専門家に頼らないと目的地や移動ルートを決められない状態です。今後、アルテミス計画や月軌道ゲートウェイを通じた宇宙利用・宇宙ビジネスが拡大していく中で、軌道に関するニーズはますます拡大していくと考えています。本記事をきっかけに多くの読者に軌道について興味を持っていただければ幸いです。

提供元・宙畑
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