3月22日、38機の衛星を搭載したソユーズロケットが、カザフスタン・バイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。搭載されていた衛星には、日本発の宇宙ベンチャーのものも含まれています。

宇宙ゴミ除去のアストロスケールが衛星を打ち上げ。「本番さながら」の実証実施へ【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/3/22/〜3/28】
(画像=打ち上げの様子
Credit : GK Launch Service、『宙畑』より引用)

宇宙ごみ除去サービスのアストロスケールが実証機を打ち上げ

アストロスケールの実証衛星「ELSA-d」は、今回打ち上げられた衛星の一つです。

同社は2013年に創業したスタートアップ企業。2017年11月にソユーズロケットで、デブリ観測衛星「IDEA OSG1」を打ち上げましたが、ロケット側の問題により、軌道投入に失敗していました。

今回打ち上げられたELSA-dは、捕獲機と模擬デブリで構成されています。実証実験では、捕獲機と模擬デブリの距離を徐々に離しながら回収し、最終的には大気圏に再突入します

2月に実施された会見で、ゼネラルマネージャーの伊藤氏は「実証実験で本番さながらのデブリ除去を行います」と説明しました。

ただ一方で、米宇宙軍のDavid Thompson(デービッド・トンプソン)氏は、ナショナル・セキュリティアナリストによるインタビューの際に「デブリ除去できるなら金額を支払う」と積極的な姿勢を示しながらも、アストロスケールについては「知らない。調べてみます」とコメントしていました。

(Spacenewsの記事より抜粋:U.S. Space Force would support commercial services to remove orbital debris)

国際的なルール作りやビジネスモデルの確立に邁進してきたアストロスケールですが、さらなる技術の実証と顧客の獲得を重視するフェーズに移行していくのではないかと考えられます。

アクセルスペースが衛星4機を同時に打ち上げ

ソユーズロケットには、地球観測ベンチャー・アクセルスペースのGRUS衛星4機も搭載されていました。

宇宙ゴミ除去のアストロスケールが衛星を打ち上げ。「本番さながら」の実証実施へ【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/3/22/〜3/28】
(画像=GRUS衛星 Credit : アクセルスペース、『宙畑』より引用)

4機を同時に打ち上げるのは、日本のベンチャー企業としては初めてのこと。1機の運用とはどのような違いがあるか担当者に聞きました。

「同時に複数機が打ち上げられ、運用を実施するのは初めてのことで、入念に準備を進めてきました。初期運用はチェックするべきことも多く、人手に頼るとミスも増えるので、可能な限りの運用の自動化・自律化を推進したことが今回の大きなポイントになります。これまでの5機の運用経験を生かし、最速の定常運用移行を目指します。」(アクセルスペース)

また、打ち上げから10日でファーストライトを公開する企業が多いなか、GRUS1号機のファーストライト(初画像)が撮影されたのは、打ち上げの65日後でした。ファーストライトの撮影、つまりサービスインが遅れると衛星の製造および打ち上げ費用と収益の費用対効果低下につながります。

今回打ち上げた4機について、アクセルスペースはどのような目標が立てられているのか聞いたところ、

「前回よりは前倒ししたい(1ヶ月半以内程度を目標)と考えています。ただし、我々のプライオリティは最速でサービスインすることであり、それを前提として初期運用計画を立案しています。」(アクセルスペース)

と、サービスインを最優先にしたい考えが窺えました。

5機体制になることで、地球観測サービス「AxelGlobe(アクセルグローブ)」の画像撮影頻度は2週間に1回から、2日に1回に向上します。

地球観測市場をリードしているPlanet Labsの観測頻度は1日1回以上で、農業やエネルギー・インフラ、ファイナンス・保険、海事など、様々な業界向けに特定の場所の撮影やアーカイブ画像の販売サービスなどを提供しています。

アクセルスペースにおいても、アプローチできる顧客層が大きく広がるのではないかと期待されます。