黒坂岳央(くろさか たけを)です。
SNSなどで「即レスは正義だ」という趣旨の投稿をよく見る。確かにビジネスコミュニケーションを取る上では、極端に反応が遅い人よりは遥かにいいのは間違いない。相手からの返答があまりに遅いことで「こちらのメッセージが不達なのでは?」「相手はお断りをするつもりで、今その理由を考えているのでは?」と不安になってしまう人もいるはずだ。

しかし、レスが早ければ良い局面もあれば、そうでない場合もある。重要なのは場面ごとにそれを切り分けることだろう。個人的な考えを論考したい。
即レスが活きる局面
即レスが活きる局面はいくつかある。
まずはクレーム対応である。筆者は過去にコールセンター勤務でほぼ毎日クレーム対応をしていたのでよく理解できるのだが、クレーム対応は初速はとにかく早い方がいい。クレームを出した本人にとってみれば、相手からの反応が遅いというだけで、「自分はおざなりな対応を受けている!」と余計に怒りがヒートアップしてしまう。
まずは相手の怒りの感情に共感し、逃げずにちゃんとフォローするつもりなので対応方法を考える時間がほしい旨を返せば「相手はこちらの怒りを分かってくれた」と冷静に待ってくれることがほとんどだ。
そして意思決定者へのコミュニケーションの場合も返事が早いほうがいい。特にクライアントワークをする場合に、作業をする側はレスポンスが早い方がいいだろう。返事が遅いと「今、作業の進捗はどうなのか?」「早く決めて次の段取りを考えたいのに…」と意思決定者をイライラさせてしまう。
筆者は国内、海外の企業問わず英語力を活かした仕事のクライアントワークをしてきたが、報・連・相は当然として返事は早く出すようにしてきた。
そして「即レス」といっても、通知をONにしてスマホに張り付くような真似はいらない。相手からの返事は内容の緊急性にもよるが、早ければ6時間以内、最大でも24時間以内を期限とする対応で十分だろう。
即レスを意識しすぎると質が落ちる
だが、即レスは必ずしも万能ではなく、明らかにデメリットもある。
1つ目はコミュニケーションの質が低くなる傾向があることだ。早いレスポンスでも内容の質が低ければ逆効果になるのだ。
先日、自社ビジネスの拡大に伴って新しいオフィスを契約したのだが、その際にやり取りした不動産会社のビジネスマンはまさにこれだった。とにかく返事自体は早いのだが、こちらが複数質問を投げても、いくつも回答漏れがあったり、添付するといっていたファイルが抜けていたりした。こちらが「この質問についての回答はいかがでしょうか?」「添付ファイルが抜けているようなのでお願いできますか?」とフォローアップを余儀なくされれば、かえって非効率になってしまう。
特に時間を買うつもりで仕事を発注するクライアントワークにおいては、このように相手の時間を余計に奪い取る行為をすれば次回から仕事が来なくなってしまう。
速度ばかりを気にすると、その結果として必然的に質が落ちる傾向にあるのだ。これを理解しているため、筆者は相手に返事を出す時は、もう一度相手の送ってきた内容を読み直し、「自分は相手の質問に全て回答しているか?」などをチェックするようにしている。この作業には3分もかからない。「即レスで質が低い回答」にならないよう、質を落とさない工夫は必要である。