(5)佐藤さんを突き動かすクリエイティブ衝動と破壊衝動

宙畑:佐藤さんは、note「世界の創り方(前編)」でも、世界を創る、生態系を創るということを書かれていますが、佐藤さんがそういったことに興味を持たれるのはなぜでしょうか。

佐藤:世界そのものの創り方を理解した上で、それを万人が使えるようにしたいという目的が元々私の中にあったんですよね。

自分自身がその創り方まで理解しない限りは、本当に「現実世界を理解した」とは言えないんじゃないかと思っています。さらに言えば、知識として知ることと、自分の手で創り出せることとして知る事っていうのは、全然違うことだと思っているので、自分で創れるところまで進みたいなと。

さらに、それを私だけじゃなくて、全員が再現できる(世界が創れる)ことができて初めて、この世界を理解したと言えるんじゃないかと思っています。その方法をどうにかして、この事業で学びたいと思っています。

宙畑:全員が再現できるというところに重きを置かれている理由はなんでしょう。

佐藤:自分だけが使える物っていうのは結局自分にしか再現できない。つまり、普遍性がないと思っています。

おじいちゃんでも子供でも理解出来て使える物が、真理に近いものなんじゃないかと考えているからですね。

あとは、個人的な私のモチベーションって、何かを作りたいという「クリエイティビティ」と何かを壊したいという「破壊衝動」が混在しているんですよね。

ゆえに、全員が世界を創れるようになった時に、この世界がどうカオスになっていくのかを見てみたいというのもあります。

今まで、社会という仕組みの中で、自分の役割、社会の歯車としてどう生きていくか苦しんでいる人々が、自分自身が世界そのものを創り出せるようになった時に、モチベーションや精神がどう変わってくるかを見てみたいです。ある種、いたずらに近い感覚ですかね。

宙畑:現実世界を複製するにあたってこの先、難しそうな箇所はどこにあるとみられてますか。

佐藤:ビジュアル的な部分だと全てここ5年以内くらいで手に入るんじゃないかと思っています。LIDARなどの様々なセンサー、衛星以外にもドローンとかを使って、ほぼ完璧に複製するっていうところまで行くんじゃないかなと思いますね。

ただ、ファンクション(機能)としての生態系・世界を作るというのは相当難しい。とても複雑なので、ちょっとの変数で形が変わってしまうといった、絶対的にこれをやればこうなるっていう法則性とはちょっと違う、確率的なものです。もう少しここの掘りがいがあると思いましたね。

取材を終えて

1時間の取材中、私たちのどのような質問にも瞬時にクリアな言葉で回答をいただく姿がとても印象的だった佐藤航陽さん。

ご自身の関心領域に対して、常日頃から膨大な量の思考や調査、実験を繰り返されているからこそ出てくる言葉の数々に、編集部一同圧倒されました。

インタビューで語られていた通り、今回発表された仮想空間の映像は、佐藤さんとしてはあくまで創りたい世界の一歩目、一番簡単そうな所にまず着手した、ということ。これからどのように世界が広がっていくのかがとても楽しみです。

提供元・宙畑

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