傑作の隠れたパターン変化が明らかになりました。
10月12日に『PNAS』に掲載された論文によれば、500年間にわたる1万5000点の絵画を分析したところ、背後に潜むパターン変化を発見したとのこと。
画家たちは創造性を発揮して、独自の絵画を描いていたと信じていたでしょうが、時代によって人間の美的感覚を支配する制約が存在していたようです。
情報分析のメスは、絵画をどのように解剖したのでしょうか?
絵画を情報分析が解剖する
歴史上、多くの美術家や評論家は名画を分析し、議論することに人生を捧げてきました。
しかし評論の多くは主観によるものであり、当然ながら科学的な分析とは一線を画すものでした。
そこで研究者たちは、芸術に時間を超えた普遍性があるか、またあるとしたら、それらの原則が時間と共にどのように変化していくかを調べることにしました。
絵画の分析にあたっては、客観性を維持するために、肉眼ではなくコンピュータのプログラムを使用したとのこと。
このプログラムは上の図のように、絵画を色彩によって分割できるラインを検出するように作られています。
また分割線には最も際立ったラインから順に番号がつけられました。
上の図ならば、水平線に沿った横のラインが1番で、左側の建物の柱に沿ったラインが2番…となります。
研究者たちは、過去500年間にわたって、主にヨーロッパで描かれた1万5000点の「風景画」に対して、これらのラインのパターンと位置を記録していきました。
もし画家たちが自身の独創性のみで絵画を描いているならば、ラインのパターンと位置はランダムとなります。
しかし、この分析により以外な事実が判明しました。
分割線は時代を写す
まず明らかになったのは、ラインのパターンでした。
分割パターンの1番目と2番目のみに注目した結果、1600年代から1700年代にかけては、1番目が横で2番目は縦という「横-縦」のパターンが主流であることがわかりました。
しかし世界が産業化する1800年代に入ると、1番目も2番目も横である「横-横」が優勢となり、現代においてもその傾向は続いていたのです。
一方で「縦-横」と「縦-縦」の分割パターンは全体に対して、常に一定の割合で存在していることがわかりました。
上のグラフでは、分割線パターンの歴史的な推移をまとめたものになります。
この事実は、絵画の基本的な構成に、芸術家個人の独創性以外の何かが働いていることを意味します。
また研究者たちは、この分割パターンが国籍とは無関係であることも示しました。