黒坂岳央(くろさか たけを)です。
一般的な傾向として、話をしっかりと聞く「傾聴」より、雄弁な「語り」が良しとされる。多くの人にとって、「聞く」より「話す」方が気持ちいいからだ。

だが、ユダヤの格言「口は一つなのに耳は二つ」からも分かる通り、これは逆こそ真なりと思っている。世の中に話したがりやが多いということは、需要と供給のバランスでいう「聞き手」が常に供給不足な状態だからである。また、有益な情報を提供してくれるような人物に傾聴の姿勢を示し、気持ちよく話をしてもらえば情報を得て得をするのは聞き手である。以上のことからも、明らかに上手に話すより上手に聞くメリットが大きいのだ。
だが、多くの人は自分で思っているほど相手の話を正確に聞けていないし、そもそも本人が傾聴の必要性を理解していないことも少なくない。個人的な肌感覚として、相手の話を正確に聞く力がある人は世の中の4分の1もいないと感じる。その一方で口下手は本人も自覚している事が多く、こちらは訓練でいくらでも治療可能だし、逆に口下手な方が相手からの信頼を得られるケースすらある。やはり注力するべきは、明らかに傾聴力の強化であろう。
話を聞けない人たちの特徴
さて、筆者が体験した「話を聞けない人たち」を紹介したい。
まずは強い思い込みを持った人である。筆者は記事や動画、講演で話をする機会があるのだが、こちらが一言も話していないことを、勝手に想像して決めつけ「お前は間違っている」と怒り出す人が一定数いる。さらに始末が悪いのは「勝手に期待し、勝手に失望する」人たちである。YouTubeの動画を見て「いいこと言いますね!」など最初は肯定的に聞いてくれていた相手が、その後「裏切られました!」など豹変して激昂メッセージを送りつけてきたことがある。こちらが一言も言っていないことを勝手に曲解して推測し、一人で盛り上がって失望していった人である。
日本は文化的にハイコンテクスト社会であり、言語化されない部分の正確な推測が重要である。日本社会において、世渡り上手な人とは「不文律を素早く理解し、そのレールを上手に歩める人たち」を指す。だが、悪い意味であまりに想像力が豊かだと拡大解釈のリスクが生じる。