以前は、6気筒エンジンといえば直列6気筒でした。しかし最近は、同じ6気筒でもV型のシリンダー配置が主流になりつつありますよね。80年代後半から徐々にシェアを拡大してきたV6が良しとされる理由とは、いったいどんなものなのでしょうか。直6の良さを捨てて、あえてV6とする理由とはどこにあるのか…今回はこのあたりに注目してみます。
Chapter
_ 迷いもあった?直6とV6の過渡期の存在
_ 縦置き搭載におけるV6の最大のメリットはクラッシャブルゾーン確保
_ もうひとつのメリット、横置きFFへの搭載
迷いもあった?直6とV6の過渡期の存在

直列6気筒エンジンは長らく高級乗用車、またはスポーツカーのハイパワーエンジンとして用いられてきましたが、80年代になるとより効率的なパッケージングの要求などからV型6気筒へシフトする動きが始まります。
日本では日産のVG型V6エンジンが有名なところで、そこにマツダ、三菱、ホンダ、トヨタもが追随するかたちとなりました。しかしこの時期はちょうど成熟してきた直列6気筒エンジンのパフォーマンスもかなり高まって、実際に日産もトヨタも直列6気筒とV型6気筒が混在する時代でもありました。
なぜなら長大な直列6気筒を搭載するためのエンジンルームは当然ながら長く、そこに同じV型6気筒を搭載すると、どうしても十全に効率的なパッケージング、寸法採りをすることができない。
つまり、直6のかわりにV6を載せる際に、簡単にはエンジンルームを短くすることができないというジレンマが存在したのです。日産などでは、RB型エンジンが消滅する2000年代まで同じ問題を抱えており、車両のサイズやパッケージングに少なからず影響していました。
後述いたしますが、V6エンジンのメリットのひとつに、コンパクト化というものがあります。
エンジンの全長を抑えることができ、エンジンルームを短く、限られた車体全長のなかでキャビンや荷室が占める割合を大きく採ることができるようになる、というものです。
本来こうした目的で生産が始まったV6でありながら、とくに縦置きFR車においては、直6が生き残っていたせいで、そのメリットを存分に活かせていなかったというわけですね。
実際にV6一本に絞られるようになった2000年代以降、たとえば日産でならV35スカイラインあたりからが、本格的にV6エンジンのメリットを最大限活かしたパッケージングを採用することができるようになった例といっていいでしょう。
縦置き搭載におけるV6の最大のメリットはクラッシャブルゾーン確保

長大な直6を縦置きするレイアウトが直面した問題とは、前方衝突時のクラッシャブルゾーンの問題でした。
縦長のエンジンが進行方向に向かって搭載されているがために、ぶつかった時の”緩衝地帯”を大きく取ることができず、場合によってはエンジンがキャビンを押しつぶしてしまう可能性も少なくはありませんでした。
安全意識が高まると同時に、直列6気筒の優れたフィーリングを取るか、V6エンジンの安全性を重視するか、という議論となり、特に直6で名声を得ているBMWなどは、重要な車種には頑なに直6を選択しています。
当然安全基準を満たしながら直6エンジンを搭載するとなると、車体はどうしても長くなる。しかし、そこには譲れないBMWのこだわりのようなものがあるのです。
一方、メルセデス・ベンツは早くからV6化に踏み切りました。最初のV6は、W210型Eクラス、モデルイヤーで1998年モデル。同じ年のCクラス W202にもすでに搭載されていたかもしれません。
そう考えると日本メーカーのV6化は、後手にまわった感がありました。日産はやはり名機の誉れ高いRB系直列6気筒を簡単には捨てられなかったのでしょう。
トヨタも、特にクラウンで直列6気筒のスムーズさや静けさに対する適性の高さをもって、静粛性を維持していたようなところもありましたから、これもまたおいそれとV6化を推し進めることに、はばかられたようなところがあったかもしれません。
スカイラインのV6化は2001年、セドグロは最後までV6と直6(4WDのRB25DET)が混在し、完全V6化は2004年のフーガから。クラウンのV6化は2003年のことでした。