タクシー乗車は極力避けた
筆者はできるだけタクシーには乗らないようにしていた。料金の問題ではなく、サービスの問題からだ。筆者がいつも持って移動している荷物は外見から見るとそれほど大きくないので運転手は車を止めても運転席に座ったままの状態が大半だ。
後ろのトランクを開けてはくれるが、荷物を積むのは筆者自身だ。それも重い重量の荷物だ。スペインだと荷物の大きさにかかわらず運転手が荷物をトランクに積んでくれる。それが本来のタクシー運転手のサービスでというもの。
ところが、日本ではそうではない。その上、腹立たしいのは料金を支払ってタクシーを降りる時だけ「ありがとうございます」ということだけはマニュアルで知っている。本当にありがとうという気持ちがあるなら、乗客の荷物を運転手がトランクに積むのが当然であるはずだ。
筆者が重そうにトランクに荷物を積んでいるのを運転席から降りても茫然と傍で眺めていたタクシーの運転手に運悪く当たったことがあった。そこで筆者は彼に「私が重い荷物をトランクに積んでいるのに手伝うのがサービスではないか」と文句を言ったことがあった。そうしたら、その運転手は筆者に「ぎっくり腰を患っているので・・・」とすぐに嘘だとわかる返答をして来た。
一度都内で珍しく非常に親切なタクシーの運転手がいた。
運転席からすぐに下りて来て筆者の荷物をトランクに積んでくれた。そして受け答えの中にも心情のある運転手だというのが観察された。それで筆者は彼に「運転手さん、あなたは非常に親切な方で、そのような運転手は珍しい」と言ってあげると、彼は北海道旭川で運転手をしていたが飯が食えないので東京だと飯が食えるだろうと思って上京して来て運転手をやっているという返事だった。
しかし、彼が上京したのはバブルが崩壊したあとで期待していたような稼ぎにはならないという回答だった。しかも、都内で道を覚えるのは大変だと言った。
余談つづけにもう一つタクシーに関して逸話を記述することにする。福岡空港から中心街のホテルに向かうのにタクシー乗り場で待機していたワゴンタクシーに乗ろうとすると、その運転手もとても親切な運転手だった。彼の親切さを指摘してあげると、彼が経験したある出来事を話してくれた。
同じ福岡空港での出来事だったという。一人のおばあさんが荷物を持ってタクシー乗り場に行ったそうだ。そこに待機していたタクシーに乗ろうとしたが、荷物をもっているので運転手は次に待機していたワゴンタクシーに乗るように言ったそうだ。そのワゴンタクシーというのは筆者が乗車したタクシーだ。
そこで彼は乗客が高齢者だということで普段以上に親切に応対した。それに感心したおばあさんは「私は博多駅に行くつもりだったが、あなたがとても親切なので熊本まで行ってください」言ったそうだ。話はまだ終わらない。
それを聞いて喜んだこの運転手は彼の前で待機して乗車拒否した運転手に「これから熊本まで行って来る」と言ってやったそうだ。人は見かけによらないものというのを具現化させたような逸話だ。
文・白石 和幸
文・白石 和幸/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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