住宅ローンの契約にかかる諸経費のなかに「保証料」がある。保証料は住宅ローン契約のほとんどのケースでかかる費用であり、諸経費のなかでも大きな割合を占める。だからこそ住宅ローンの保証料をきちんと理解しておくことが大切だ。
目次
1.住宅ローンの保証料とは
2.保証料の支払方法は2種類
3.保証料がかからない銀行もある
4.諸経費を抑えたいならフラット35を検討
1.住宅ローンの保証料とは銀行のリスクヘッジのために支払う費用
住宅ローンの契約は多額の負債を負うことである。融資する銀行にとっては収益になる反面、リスクを抱えることになる。万が一、契約者が住宅ローンを返済できなくなったら、銀行は貸したお金を回収できずに大ダメージを受ける。住宅ローンの保証料とはそのような事態を防ぐために、契約者が保証会社に支払う費用のことである。
保証会社は住宅ローンの契約者が返済不能になったときに、銀行への返済を肩代わりしてくれる。この仕組みがあるおかげで銀行は安心して住宅ローンを貸し出せるのだ。
ただし保証会社が代わりに住宅ローンの返済をしてくれても、契約者の返済義務が銀行から保証会社に移るだけで返済が免除されるわけではない。
住宅ローンの保証料を払うメリット……連帯保証人の代わりにもなる
住宅ローンの保証料を払うことは契約者のメリットにもなる。たとえば保証会社の保証を受けることで銀行からの借り入れが容易になったり、連帯保証人を立てる必要がなくなったりする。
連帯保証人をつけていて、返済ができなくなったらその人に迷惑をかけるが、保証会社の保証があればその心配もない。住宅ローンの保証料は、契約者の連帯保証人の代わりでもあるのだ。
住宅ローンの保証料を払うデメリット……住宅ローンの保証会社は選択できない
契約者が保証料を払うデメリットは保証会社を選択できない点だろう。
住宅ローンの保証会社には特定の金融機関グループに属さない独立系と銀行の系列系があるが、利用する保証会社は銀行が指定していることがほとんどである。
系列系は三菱UFJ銀行なら「三菱UFJ住宅ローン保証会社」、みずほ銀行なら「みずほ信用保証」、三井住友銀行なら「SMBC信用保証」がある。
2.住宅ローンの保証料の支払方法は2種類
住宅ローンの保証料の支払方法は2種類ある。2つのうちのどちらを選ぶかによって毎月の返済負担や保証料の総額も変わる。保証料の支払い方法の選択は住宅ローン選びと同様に重要なポイントだ。
住宅ローンの保証料の支払い方法1……一括前払い型(外枠方式)で保証料を支払う
住宅ローン保証料の支払方法の1つとして「一括前払い型」があり、外枠方式とも呼ばれる。主に借入金額や返済期間をもとに保証料が計算され、住宅ローンを借りる際に現金で一括払いする方法だ。
保証料の金額は一般的に借入金額の2%程度が目安だが、銀行によって異なる。一例として三菱UFJ銀行の保証料を見てみよう。
以下の保証料は100万円あたりの金額だ。実際には条件によって変わるが、今回は元利均等返済、保証料一括前払い型、元金返済据置なしの条件で試算した。
三菱UFJ銀行の住宅ローン保証料(100万円あたり) | ||||||
返済期間 | 10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 | 35年 |
保証料 | 8,544円 | 1万1,982円 | 1万4,834円 | 1万7,254円 | 1万9,137円 | 2万610円 |
この条件で5,000万円を35年ローンで借り入れるとすれば、保証料は103万500円になる。一括前払い型の保証料は借入金額が大きく、返済期間が長くなるほど金額が高くなる。最初にまとめて払わなければならないので、初期費用に占める割合が大きい。個別の銀行ごとにシミュレーションするようにしよう。
・住宅ローン保証料の一括前払い型のメリットとデメリット
一括前払い型のメリットは、後述の金利上乗せ型よりも住宅ローンの返済総額を抑えられることだ。一括前払い型はあらかじめ借入の全期間を保証するため、まだ到来していない期間については、繰り上げ返済することで手数料を引いた保証料の一部が返還されることがある。その代わり、最初にまとまった金額を用意しなければいけないのはデメリットだ。
<メリット>
- 金利上乗せ型よりも住宅ローンの返済総額を抑えられる
- 住宅ローンの繰り上げ返済で保証料の一部が返還される
<デメリット>
- 初期費用としてまとまった資金を準備しなければならない
・住宅ローン保証料の一括前払い型が向いている人
一括前払い型は頭金の準備だけで手一杯の人には選びにくいかもしれない。しかし保証料も含めた自己資金を確保できている人には向いている。保証料を最初に支払ってしまうことで月々の返済額をできるだけ安くしたい人も一括前払い型を検討しよう。
住宅ローンの保証料の支払い方法2……金利上乗せ型(内枠方式)で保証料を支払う
住宅ローン保証料の支払方法には、内枠方式とも呼ばれる「金利上乗せ型」がある。
金利上乗せ型は保証料を初期費用として支払う必要がない代わりに、毎月の返済額に少しずつ上乗せして支払っていく方法だ。上乗せされる金利は一般的に借入金利+0.2%が多い。金利上乗せ型を選択することで毎月の返済額にどのくらい違いが出るのか確認してみよう。
借入金額は5,000万円、借入金利は固定1%、返済期間35年、元利均等返済としてシミュレーションしてみる。
金利上乗せ型の保証料による返済額の違い | ||
保証料上乗せなし | 保証料0.2%上乗せあり | |
毎月の返済額 | 14万1,142円 | 14万5.851円 |
差額 |
|
保証料を上乗せした返済額と上乗せしていない返済額とでは4,709円の差が出た。この差が保証料であり、一括前払いをしない代わりに月々の返済額に上乗せして支払っていく仕組みになっている。
・住宅ローン保証料の金利上乗せ型のメリットとデメリット
住宅ローン保証料の金利上乗せ型を選択すれば、まとまった保証料を最初に準備しなくてもよいので資金的なゆとりは生まれやすい。保証料として一括で支払わなかったお金は、引っ越し代や新しい家電などの購入に充てられる。
一方、デメリットとしては一括前払い型と比べて総返済額が多くなることだ。それから金利上乗せ型の保証料は住宅ローン金利が高いほど負担が増加していく。毎月の返済額も保証料の分が上乗せされるため、家計にそれほど余裕のない場合は事前の返済シミュレーションで返済額の違いを確認しておこう。
<メリット>
- 初期費用としてまとまった保証料の準備が必要ない
<デメリット>
- 一括前払い型より総返済額が増える
- 一括前払い型より毎月の返済額が増える
・住宅ローン保証料の金利上乗せ型が向いている人
金利上乗せ型は保証料として大きな金額を用意しなくて済むため、自己資金に余裕がない人に向いている。仮に住宅ローンの保証料を一括で支払えるとしても、何かあった時のために全く資金がないのはリスクが高いため、手元にお金を置いておきたい人も検討していいだろう。
住宅ローンの保証料「一括前払い型」と「金利上乗せ型」ではどっちが得か
住宅ローンの保証料は一括前払い型のほうが総返済額は少なくなるが、金利上乗せ型と比べてどのくらい差が出るのだろうか。先ほどのシミュレーションと同じ条件で確認してみよう。
一括前払い型 | 金利上乗せ型 | |
借入金額 | 5,000万円 | 5,000万円 |
借入金利 | 固定1% | 固定1.2%(保証料含む) |
返済期間 | 35年 | 35年 |
毎月返済額 | 14万1,142円 | 14万5,851円 |
保証料総額 | 103万500円 | 197万7,780円 |
総返済額(保証料含む) | 6,031万140円 | 6,125万7,420円 |
住宅ローンの保証料の金利上乗せ型は金利に0.2%上乗せされることにより、総返済額が約95万円高くなった。保証料の分だけ総返済額に差が出たが、必ずしも金利上乗せ型が高くなるわけではない。
一括前払い型の保証料として支払うはずだった資金の一部を頭金に回して金利上乗せ型を選択すれば、総返済額を抑えつつ手元資金も残しやすくなる。シミュレーションとして、80万円を頭金に回した金利上乗せ型で比較してみよう。
一括前払い型 | 金利上乗せ型 | |
借入金額 | 5,000万円 | 4,920万円 |
借入金利 | 固定1% | 固定1.2%(保証料含む) |
返済期間 | 35年 | 35年 |
毎月返済額 | 14万1,142円 | 14万3,517円 |
保証料総額 | 103万500円 | 194万5,860円 |
総返済額(保証料含む) | 6,031万140円 | 6,027万7,140円 |
頭金を80万円入れることによって、金利上乗せ型のほうが総返済額を3万3,000円抑えられている。あまり大きな違いはないが、保証料として支払うはずだった103万円が80万円に減ったことで、総返済額を抑えつつ手元資金に23万円を残せるようになった。
住宅ローンの保証料の一括前払い型を選ぶ人は少ないが、用意した資金を借入金に回すほうがトータルでは得になることもある。
3.住宅ローンの保証料がかからない銀行もある
銀行によっては住宅ローンの保証料が無料のところもある。ただし注意が必要だ。
保証料無料の住宅ローンは借入金利が低い
住宅ローンの保証料を無料にする銀行は、通常の保証料ありのプランとは別に「融資手数料型」プランを導入しているところだ。ネット銀行などに多くみられる。
住宅ローンの保証料が無料の場合、住宅ローン金利は保証料を払うケースと比べて低くなる。なぜなら一括前払い型の保証料は繰り上げ返済した時に一部が返還されるが、保証料が無料の場合は返還がないため、その分の金利を引き下げられるからだ。
企業努力によるところはあるものの、ネット銀行の金利が対面型銀行よりも低い傾向にあるのはこういう理由だ。
保証料が無料の住宅ローンを借りる時の注意点
住宅ローンの保証料が無料だからと言って、安易に借り入れしてはいけない。大事なのはトータルでかかる金額を把握することだ。住宅ローンの保証料が無料でも代わりにかかる費用は思いのほか色々ある。
たとえば事務取扱手数料や融資手数料だ。住宅ローンの保証料ありの場合、事務取扱手数料は数万円程度の定額が多く、融資手数料は不要だ。一方、保証料が無料の場合は定率の手数料がかかってくる。一般的には借入金額の2%程度だが、借入金額が大きいと保証料を支払う場合と比べて大差なかったり、高くなったりすることもある。
事務取扱手数料や融資手数料は、基本的に金利上乗せ型のように分割の支払いはできない。契約者はその分の資金を準備しておく必要がある。保証料が無料の住宅ローンを借りるときは、自己資金を多めに用意するだけでなく、総額でいくらかかるのかをしっかり把握することが大切なのだ。
4.住宅ローンの諸経費を抑えたいなら保証料不要のフラット35を検討
住宅ローンの保証料は支払方法や融資手数料型といった違いにより住宅ローン総額に大きな違いが出る。住宅ローンを検討するときは金利だけでなく保証料にも着目しよう。
住宅を購入するときの諸経費を下げたい場合はフラット35を選択する方法もある。フラット35は保証料が不要であり、融資手数料がかかっても通常の住宅ローンよりも低くなることが多い。手数料水準は取扱銀行によって異なるが、初期費用を抑えたい場合はフラット35も一緒に検討したい。
文・國村功志(資産形成FP)
【関連記事】
・住宅ローン控除は2年目以降も確定申告が必要か?忘れた場合はどうなる?
・住宅ローンをこれから組むなら変動金利と固定金利のどっちが得か
・40代で家を買うのは遅過ぎるのか?住宅ローンを組むときのポイントは?
・住宅ローンは年収800万円でいくらまで組めるのか
・iDeCo(イデコ)と住宅ローン控除の併用がデメリットとなるパターンとは