「仮想通貨」や「ブロックチェーン」という単語をよく目にするが、ブロックチェーンとは何だろうか。ブロックチェーンは仮想通貨で利用される以外にも、様々な分野で活用される可能性を秘めているものである。ブロックチェーンの基礎知識として、次の5つのポイントを紹介する。
1 ブロックチェーンには4つの特徴がある
ブロックチェーンとは仮想通貨ビットコイン(BTC)を実現するために開発されたテクノロジーだ。その目的は、仮想通貨などの「取引台帳」として取引データを記録することである。「ブロック」と「チェーン」という2つの単語を組み合わせていることからもわかるが、データのブロック(塊)がチェーンのように繋がる構造になっている。
ブロックチェーンのすごさを紹介しよう。以前のインターネットは主に「情報」のやり取りに利用されてきたが、ブロックチェーンを利用すると仮想通貨などの「価値」を送ることができる。
ブロックチェーンには次の4つの特徴がある。
- 全ノードで情報共有し信頼性が高い
- データ改ざんが困難
- 優れたトレーサビリティ(追跡可能性)
低コスト
すべてのノード(ブロックチェーンに参加するコンピュータ)でブロックチェーンデータを共有することで、特定のノードに障害が発生してもシステムダウンすることがないため信頼性が高い。
データ改ざんについては、ブロックのデータを要約した「ハッシュ」というものを次のブロックに格納する構造になっており、これによって1つのブロックのデータ改ざんが検知される。データを改ざんするには、それ以降に繋がるすべてのブロックのハッシュを書き換える必要があるため、データ改ざんは非常に困難なのだ。
優れたトレーサビリティ(追跡可能性)とは、データ改ざんが困難なことから、信頼性の高いトレース(追跡)が可能になることだ。例えば、仮想通貨の過去の取引を明確にできることなどが挙げられる。
また、信頼性が高くデータ改ざんが困難なことから、セキュリティやバックアップのコストを削減でき、システムを低コストで運用することができる。
2 マイニングが必要
ブロックチェーンでは、ブロックを生成するためにマイニング(採掘)という処理が必要になる。マイニングは、ブロックチェーンのデータの整合性を保つために行われ、コンピュータによる膨大な計算が必要だ。このマイニングを行う人をマイナー(採掘者)と呼ぶ。
マイニングには有志のコンピュータが利用され、成功するとその労力の対価として報酬を得られる。例えば、ビットコインのマイニングに成功すると、報酬としてビットコインをもらえるのだ。
マイニングには、高性能なコンピュータと膨大な電力が必要になる。今までマイニングは中国で多く行われてきたが、近年日本企業も参入している。
3 パブリックとプライベートがある
ブロックチェーンにはパブリックとプライベートの2種類がある。パブリック・ブロックチェーンは、ビットコインをはじめとする仮想通貨で利用され、プライベート・ブロックチェーンは企業内部などで利用される。
その違いは、マイニングで生成されたブロックを繋ぐ処理である「承認」が関係する。パブリック・ブロックチェーンは、どのノードやマイナーでも「承認」に参加できる。一方、プライベート・ブロックチェーンは、特定の団体により中央管理され、「承認」は一部のノードのみで行われる。
パブリック・ブロックチェーンのメリットは、特定の管理者がいないことからデータ改ざんが困難で信頼性が高いことだ。デメリットは承認者が多いため、処理に時間がかかることである。
プライベート・プロックチェーンのメリットは、承認者が少ないため処理が早く、中央管理のため管理しやすい。デメリットは中央管理者によるデータ改ざんが可能であり、利用するには別途改ざん対策が必要となることだ。
4 データベースとはこう違う
データベースとは、情報(データ)を整理して蓄積し、容易に検索や活用をできるようにしたものである。ブロックチェーンとデータベースは、データを保存する目的は同じである。ではこの2つは何が違うのだろうか。ブロックチェーンとデータベースのメリット・デメリットから、違いを確認していく。
ブロックチェーンのメリットは、前に紹介したようにシステム障害に強い。デメリットはマイニングや承認などの処理が複雑なため、大量のデータ管理や活用に向いていないことである。
データベースのメリットは、大量のデータの管理や活用に向いていることだ。デメリットは中央集権によるデータ管理のために、データ改ざんやシステム障害に対する脆弱性である。
ブロックチェーンはデータベースの代替ではなく、データベースの苦手な分野に利用することで、新たなサービスを生み出すことが期待されるものだ。
5 ブロックチェーンはこう活用される
ブロックチェーンは仮想通貨の取引台帳として以外にも、金融業界をはじめとして様々な分野への応用が期待される。例えば、食品のトレース(追跡)、電子投票、カーシェアリング、IoT(モノのインターネット)など、可能性のある分野は数え切れない。
食品のトレースについては、改ざんが困難という特徴を活かし、食品がどこで生産され、どこで加工され、どうやって流通されたかを正しく管理できるようになり、食品偽装などの対策として有効と考えられる。
カーシェアリングでは、中央管理者が不在の地域コミュニティなどでの活用が考えられる。例えばコミュニティメンバーでお金を出し合うことで、クルマとシェアリングシステムを準備できる。
ブロックチェーンの活用により、既存のサービスが便利になり、また新たなサービスが生まれることが期待される。
文・松本雄一(ビジネス・金融アドバイザー)
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