DNAを接着剤にして目に見えるサイズの物体への組み上げに成功しました。

日本の沖縄科学技術大学院大学(OIST)で行われた研究によれば、対になるDNA配列をゲルブロックの表面に配置することで、最長2mmになるブロックを自己組織化させることに成功した、とのこと。

研究では色分けしたゲルブロックが特別な薬剤なしに、表面にあるDNAの配列にもとづいて集まる様子や、あらかじめ結合していたブロックが、より噛み合いの多い(相補性の高い)配列を持つブロックに場所を譲ったりする様子が観察されました。

生命の設計図であるDNAをプログラム可能な接着剤として利用することで、マイクロサイズの組織工学や再生医療が実現するかもしれません。

研究内容の詳細は2022年1月31日付けで『Journal of the American Chemical Society』にて公開されています。

目次
DNAの力によって自力で組織化するゲルブロックを開発!

DNAの力によって自力で組織化するゲルブロックを開発!

DNAを接着剤にして勝手にくっつくブロックを開発!
(画像=DNAは2本の鎖が対になる文字配列(塩基配列)で結合してらせん状になっている / Credit:沖縄科学技術大学院大学、『ナゾロジー』より 引用)

生命の設計図と言われるDNAは2重らせん構造をとっています。

2本の鎖ができる仕組みは非常にシンプルです。なぜなら鎖の上にある4種類の遺伝文字は、互いにくっつく相手が決まっているからです。

その組み合わせも2種類しかなく、Aは必ずTと結合し、Gは必ずCと結合します。

結果、上の図のようにATとGCのペアがならんだ配列が続き、設計図の暗号として機能します。

そこで今回、沖縄科学技術大学院大学の研究者たちは、このDNAの特殊な接着力を微細な工学に生かせないかと考えました。

具体的には、小さな赤色のブロックにDNAの1本目の鎖の片方を、そして緑色のブロックに対になる2本目の鎖を埋め込み、DNAの接着力を利用して2つのブロックが結合できるかを試しました。

DNAを接着剤にして勝手にくっつくブロックを開発!
(画像=最初は赤と緑のブロックがまとまって存在していたが、振動を加えると交互に並ぶように自己組織化されていった / Credit:沖縄科学技術大学院大学、『ナゾロジー』より 引用)

結果、上の図のように、最初は赤色のブロックと緑色のブロックが区分けされて存在していた状態にありましたが、10分ほど振動を与えると、赤色と緑色のブロックが交互にくっついて、枝状の構造をとることが示されました。

DNAを接着剤にして勝手にくっつくブロックを開発!
(画像=表面のDNAの文字配列を変えると同じ色同士のブロックで結合するようになった / Credit:沖縄科学技術大学院大学、『ナゾロジー』より 引用)

また同じ色のブロック同士に対になるDNA鎖を埋め込んだ組み合わせを4種類用意して同様の実験を行ったところ、同じ色のブロック同士だけが結合する様子が観察されました。

この結果は、外部からの振動というランダムな刺激によって、ブロックが特定のパターンに自己組織化されたことを示します。

DNAを接着剤にして勝手にくっつくブロックを開発!
(画像=あとからより一致範囲が長い文字配列を持つDNAをつけたブロックを入れると、入れ替わりを起こした / Credit:沖縄科学技術大学院大学、『ナゾロジー』より 引用)

次に研究者たちは、特定のDNA鎖に対して一致範囲が短いものと長いものを用意した応用実験を行いました。

研究者たちはまず特定のDNA鎖を持ったブロックを、一致範囲が短いDNA鎖がついたブロックと結合させた状態を作りました。

そして次に、より長い範囲で一致するDNA鎖を持ったブロックを加え、再び振動を与えました。

すると、1時間ほどの時間をかけて、一致範囲が短いDNA鎖を持ったブロックが一致範囲が長いDNA鎖をもったブロックに入れ替わっていく様子が観察されました。

重用なのは、この入れ替わりの過程にはDNAの結合を破壊するような薬剤が使われておらず、ランダムな振動のみが与えられた点にあります。

DNA鎖を備えたブロックは、一致範囲が短いDNA鎖を持ったブロックを自然に排除し、より一致範囲が長いDNA鎖をもったブロックと結合することを示します。