中間管理職にとって部下にやる気を出させることは最重要の課題である。日本の職場でも中国人労働者は増えており、部下を持つことは珍しくなくなりつつある。だが途方にくれる必要はない。中国スタイルはそう難しいものではないからだ。

中国若者世代の特徴

まず中国若者世代の特徴から見てみよう。90后(1990年代生まれ)以降の世代は、それ以前の世代と一線を画している。

物心ついたころは高度経済成長の真っただ中だった。思春期にはスマホ時代に遭遇し、たちまちオンラインのメインプレーヤーとなる。某国の「失われた20年」どころではない、活力にあふれていた。欧米先進国に遜色ないどころか、アドバンテージすらあったと見るべきだろう。彼らはこの流れに乗って過ごした。

一方で学校教育は、旧態依然の勉学中心だ。部活はなく、スポーツに熱狂することもない。その分、学習塾やお稽古事は大盛況だ。そして休む間もなく生涯の大事である高考(一発勝負の大学入試)に挑む。

文化では、韓流エンタメと日本のACG(Animation、Comic、Game)から大きな影響を受けている。

90后は、最先端の中国と、変わらない中国の双方を抱えている。日本と異なるこうした背景は押さえておきたい。その上でうまくマネジメントするためのポイントを4つ挙げてみる。

4つのポイント

1 精神論は振りかざさない

彼らは個人主義というのではないが、他者に依存する心は小さい。交渉万能主義で表現力にすぐれている。そして仕事のやりがいを重視する。

筆者は中国駐在時代、日本語堪能な中国の若者から相談を受けたことがある。日本を代表する総合商社M社と、中小繊維商社の両方から内定をもらった。どちらがよいか?という内容だ。日本人なら一も二もなく躍り上がってM社を選ぶだろう。しかし彼は、繊維貿易でキャリアを積む自分のために役立つ会社を、しっかり見極めたかったのだ。

中国人は妙に冷静である。そして彼らにとって日本での会社生活は、会社が過剰に関わってくるように感じる。そんなとき愛社精神や、所属部署の正義を注入しようとしても、空回りする。精神論は役に立たない。

2 キャリアデザインには留意する

その一方中国人ホワイトカラーには、残業や休日出勤を厭わない熱情の人も多い。

ただしあくまでも自分のためと割り切ってのことだ。ここは無理をしてでも商談に参加した方がよい。サプライヤー、バイヤーの双方から感謝され、業界内で名を売れる。箔を付けて、将来の独立に備えるのである。人脈作りは中国人の本能に根差している。

こうしたキャリアデザインには、留意しておかなければならない。うまくコントロールすれば、爆発的な仕事をする可能性が高まるからだ。

3 一対一の関係を構築する

当然だが、中国人はそれぞれ異なる。一族以外の結びつきは薄く、本質的にはバラバラに存在している。

中国社会は、個々の交渉によって関係を成立させる。日本人のように、どこにいても、守るべき正義や具体的な規則があるという秩序感覚はなく、社会との関係は、あくまで自分のオリジナルである。

そのため、契約更改に限らず、機会さえあれば、より有利な立場を求めて、画策めいたことを仕掛けてくることがある。また、露骨なゴマすりも飛んでくる。いずれも少しやりすぎでは、と思うだろう。

これは上司との一対一の安定した関係を求めているのだ。彼らにとって組織での位置とは、リーダーとの関係なのである。頭からはねつけるのではなく、多少おかしな話でも聞く。その上で却下すればよい。

4 ブレない人であり続ける

そしてこれらをうまくさばくには、ブレないことである。それを明らかにするために、面倒がらず何事もしっかり説明をする。中国人は口数の少ない人を嫌う。黙して語らずでは、何も始まらない。

中国人にとって、交渉成立は一時的な妥協にすぎない。そのため上司とはいつでも話をできるようにしておきたい。一方上司側は商談と同じように、簡単に譲歩したり、落としどころを探ったりしてはいけない。つまり言うことを聞かなくてよいのである。融通の利く人には、際限なく案件が持ち込まれるだろう。

方針のブレない信念のリーダーでなければならない。

キャリアアップから独立を目指す中国人

中国人は本質的に商売を好む。すきあらば独立して、人を使う立場になりたい。キャリアアップの先にある最終目標だ。この心中に蓄えた熱量こそ、中国経済成長の支えといってよい。それを読み取って否定せず、寄り添うことで最大限の力を引き出す。その一方不規則な要求はしっかりはねつける。最も大切なことは、会話の窓口をオープンにしておくことである。

中国人部下との折衝は、疲労をもたらすかもしれない。しかし中間管理職にとってマネジメントパワーを養う、貴重な経験となるはずである。

文・高野悠介(中国貿易コンサルタント)
 

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