国民は脱炭素化のコストをいくら負担するのか

マッキンゼーもNGFS(中央銀行のグループ)もネットゼロを推進する立場から計算しているので、以上の数字はもっとも好意的な評価だと思われるが、それでも投資コストは世界のGDPの4%で、そのメリットは1%である。つまりネットゼロの投資はGDP3%の赤字なので、民間企業には負担できない。

これは実額でいうと、全世界で毎年2.8兆ドルの純損失を出し続けることになる。それを日本政府が均等に負担すると想定すると毎年15兆円、国民ひとり当たり12万円である。この損失を負担する合理的な方法は炭素税だが、これは複雑なので「地球環境のための消費税」として一律に課税すると7%の増税になる。

そのメリットは、80年後に地球の平均気温を1℃ぐらい下げることだ。「地球の未来のためには消費税7%ぐらい負担しよう」と思う人もいるだろうが、世論調査で国民が年間に負担してもいいと思う気候変動対策のコストは年間100ドル。日本で必要なコストの1割にも満たない。

地球温暖化を防ぐためにいくら負担するか、というのは民主的な意思決定の問題である。もちろん以上の計算は大ざっぱな概算だが、「脱炭素化で経済成長」などという幻想を捨て、日本国民は地球の未来のためにどれだけ負担するか、国会で議論してもいいのではないか。

文・池田 信夫/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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