苦しい日本企業:糟粕を嘗める

ビル・ゲイツの高速炉計画に、日本の研究機関と一部企業が協力するべく協定を結んだ。

自国の高速炉計画は不透明のまま、米国の計画のおこぼれを頂戴するかのように見るのは穿ち過ぎだろうか。

米国のために日本の試験研究施設を提供したり、一部機器のサプライヤーに甘んじるような協力ならば、まさに米国の糟粕を嘗めるがごとき屈辱である。

なぜか?

そもそも第4世代の原子炉のアイデアを創出したのは日本である。1990年代、数回にわたって行われた日米会議(通称サンタフェ会議)で日本側が提案し、発展、共有された。その結果、世界の13カ国が集まり「第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)」が2001年に発足した。その初代議長には日本の研究者が就いた。

日本では「高速増殖炉サイクル実用化研究開発(通称FaCTプロジェクト)」が2006年以降実施され、2010年には「2015年頃までに高速炉の建造に着手する」との決定がなされた。しかし、2011年3月の福島第一原子力発電所事故によってその計画は凍結された。その後フランスとの開発協力の可能性もあったが、先の「もんじゅ」廃止措置の波にのまれてうやむやになり、政治も外方を向いたままである。

日本の決意が問われる

日本がエネルギー安全保障とカーボンニュートラルをともに実現するためには、原子力発電と真摯に向き合うほか道はないのである。

今が瀬戸際の日本の高速炉開発
(画像=olaser/iStock、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

欧米を中心に多くの国は、2050年のカーボンニュートラルのためには、原子力と再生可能エネルギーを上手に利用していく道を選び始めている。むしろ、その道しかないことに気がついたと言って良い。EUタクソノミーで原子力がグリーン認定されたのはその証とも言える。

その影響もあって、今後の軽水炉利用の拡大によるウラン需要を見込んで、天然ウランの市場価格は高騰傾向にある。ウラン資源に代替するのはプルトニウムである。エネルギー資源として、どの国がいち早く高速炉と再処理によるプルトニウム利用の実用化技術を手に入れるかーーー高速炉先進国である米、仏、露、中、印は虎視眈々とリーダーの座を狙っている。

「もんじゅ」までは日本がトップランナーだったが、今日本はレーンにすらいない。

日本の高速炉関係者によれば、産業界に高速炉を開発するための人材やシステム、そしてサプライチェーンが今ならまだあるという。具体的な計画があって、しかるべき予算措置に国家が乗り出せば今すぐにでも高速炉の建造に向けて動き出せるのである。

計画の立案から設計、建設、運転までには数十年かかる。それを支える人材を維持・育成していかなければならない。そのためには、何としても具体的な開発計画がなければならない。それなしではお話にならないのである。

今こそ自国の高速炉開発に動き出さなければ、この国はカーボンニュートラル競争においても他国の後塵を拝するのみである。

文・澤田 哲生/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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