「キャリアを築くには専門性が必要」と言われることが多くなりました。でも、専門性とは いったい何なのでしょうか。わたしはライターをしていますが、グルメに旅行におもしろ記事まで、書けそうなものは何でも手当たり次第に書いています。自分の専門性って何だろう……そんな悩みを持つ人も少なくないはず。
そんなとき、ふと気付いたのです。「ニッチでオンリーワンなお仕事をしている人の生き方に、専門性を身につけるヒントがあるのでは?」と。
今回お話をお伺いしたのは、モーションアクターとして活躍する明香里さん。その異色のキャリアや目の前の仕事に全力を尽くす大切さを教えてもらいました。
少年B:
はじめまして! 明香里さんといえば姉妹踊り手コンビ「ATY」として長年ニコニコ動画等で活動されていますが、近年はモーションアクターとしても活躍されているそうですね。

明香里:
はい、ありがたいことにATYを知ってくれている方がたくさんいて……。最近はATYの活動があまりないので、「あいつらどこ行った?」と思われてるかもしれませんが(笑)
少年B:
いやいや、そんなことはないでしょう(笑) それではさっそくモーションアクターというお仕事についてお聞かせください。
目次
モーションアクターは「キャラクターに魂を吹き込む仕事」
モーションアクターは「拍手をしてはいけない」
モーションアクターは「キャラクターに魂を吹き込む仕事」
少年B:
まず、モーションアクターとはどういうお仕事なんですか?
明香里:
主にゲームやアニメのキャラクターの「中の人」ですね。その名の通り、キャラクターに「動き」をあてていく仕事です。もちろんダンスもありますが、それ以外の動きもあります。歩いたり、手を振ったり、歌に合わせて手ぶりをつけたり……。
少年B:
最近のゲームの3Dキャラクターはやけにスムーズに動くなぁと思っていたんですが、あれって中に人がはいってたんですね!
明香里:
はい、わたしは『プロジェクトセカイ』や『マジカルミライ』、『D4DJ』などのお仕事で関わらせていただいていますね。
名前を出せないお仕事も多いんですが、最近では声優さんと同じようにクレジットしていただくこともあります。たとえば「#コンパス」のポロロッチョとか。

少年B:
ムービーを見ましたが、すごく滑らかな動きですね。まさかポールダンスまでされていたとは!
明香里:
ポールダンスはめちゃくちゃ難しかったですけどね(笑) 特徴的なキャラなので、現場のスタッフさんをどれだけ動きで笑わせられるかと思って演技しました。
少年B:
さまざまなキャラを演じてこられたと思うんですが、キャラごとの体型や性格に合わせて動きの違いも意識されているんですか?
明香里:
そうですね。たとえば、ヤンキーのキャラならスタンスを広めにして肩を揺らすとか、子どものキャラなら子どもっぽくとか意識してます。

明香里:
事前にいただく資料とかイラストを見て、キャラクターをまず自分の中でかみ砕いて表現するようにしています。
少年B:
こういう言いかたは失礼かもしれませんが、ほぼ役者さんですね……!
明香里:
役者よりも幅広いんじゃないかって自分では思っています。シルエットや背の高さまで変わりますからね。場合によっては性別も変わりますし。

少年B:
確かに……! ポロロッチョのように男性のキャラクターを演じることも多いんですか?
明香里:
制作会社さんによって考えかたはさまざまですね。「男性キャラは男性のアクター」とこだわってる会社さんもありますし、「男性もいけそうですね」と男性の役をいただくこともあります。
私はやったことないんですが、動物やモンスターをやっている人もいます。
少年B:
えっ、モンスターの動きも人がやっているんですか!? モーションアクターの世界、奥が深すぎますね……!
モーションアクターは「拍手をしてはいけない」

少年B:
モーションアクターという仕事の苦労はありますか?
明香里:
どうやったら可愛く見えるとか、キャラっぽく動けるか、といった部分は本当に難しいですね。スタジオによってカメラの配置や数も違えば、モーションを認識する玉の数も違うので、毎回考えながらやっています。
実際の動きとキャラクターの動きには、意外とズレがあるんです。たとえば手を重ねると、球がかぶって、機械がモーションをうまく読み取れなくなっちゃうんです。


少年B:
「この仕事ならでは」の技能が必要になってくるんですね……!
明香里:
そうなんです。多くの作品では「前」から見られるので、肘を重ねないように配置したり。拍手もそのままだと動きがおかしくなっちゃうので、手をぶつけないようにするなど、日常生活では気にしない部分を気にする必要があります。
少年B:
えええ! 普通に拍手するんじゃダメなんですね!?

明香里:
ゲームだとモーションの修正があるんですが、リアルタイムだとそうはいかないので気を遣います。
あとゲームやアニメのキャラクターは腰の位置が高いので、腰に手を当てるときは脇腹に当てています(笑)
少年B:
なるほど……。確かにゲームのキャラクターって、現実ではありえないようなスタイルをしてますもんね。

少年B:
ちなみに、一回の収録時間ってどれくらいなんですか?
明香里:
この仕事はけっこう極端で、3?4時間ぐらいでさっと終わることもあれば、12時間スーツ着てみっちり踊ることもありますね。そういう意味ではかなり体力もいるし、ハードな仕事ではあるかもしれません。
少年B:
スーツを着て12時間動きっぱなし!? 運動量ヤバくないですか???
明香里:
いや、ホントめちゃくちゃ疲れるんですよ!!! なのにね、意外と痩せないっていう!(笑)

少年B:
逆に、モーションアクターの仕事で楽しい部分はどうですか?
明香里:
やっぱり、かわいく見せる方法や表現の仕方など、単純に「演じること」がおもしろいですね。とくに歌唱モーションを撮る時は、自分が歌が上手くなったような感覚になってすごく楽しいです(笑)
モーションの撮影は本当に奥が深くて、何度現場に行っても新しい学びばかり。追求が終わらないし、追求すること自体が楽しいです。
少年B:
現在のお仕事はモーションアクター1本なんですか?
明香里:
いえ、他にはバックダンサーやダンスの振付師もやっています。最近だとアイドルのダンスの振り付けを考えたりとか。でも、収入は半分以上がモーションアクターですね。