日本には、優れた技や素材でありながら、継承者の減少や時代の趨勢により絶滅の危機に瀕している伝統工芸があります。そういった匠の技は次の時代にも残していきたいですよね。
日本の文化である畳表(たたみおもて)の素材はイグサが有名ですが、もうひとつ別の素材があることをご存知ですか?それが「七島藺(しちとうい)」です。
大分県の国東半島(くにさきはんとう)でしか収穫できない希少な植物。その特徴をひとことで言えば「丈夫で強い」。使うほどに艶が出て、青々とした緑色から飴色に変化し、味わいが出ます。しかし、七島藺は稲の背が高いので倒れやすく、かつ密集して育つため、育てるのがとても大変。今でも手植え・手刈りをして収穫し、ひと編みひと編み作られています。1農家で1日1畳分ほどの畳表しか作れないそうです。
一度消えかけたこの七島藺を守り、次の時代に伝えようとしている人たちに出会いましたので、ご紹介したいと思います。
目次
七島藺とは
畳表だけではなく工芸品としても七島藺を後世に伝えていく
七島藺とは
七島藺には350年の歴史があります。七島とは沖縄のトカラ列島(屋久島と奄美大島の間)を示し、そこで生まれました。よく、へりの無い畳が琉球畳と呼ばれたりしますが、本来はへりの有無、一畳や半畳タイプにかかわらず、七島藺で作られた畳が本当の琉球畳です。素材が硬く丈夫なため、1964年東京オリンピックの柔道畳は七島藺で作られたものが使われました(現在はビニール製の柔道畳)。
現在では七島藺は大分県の国東半島だけで作られています。

のどかな田園風景の中に、七島藺を作り続けておられる農家さん、工房があります。

こちらが七島藺工房ななつむぎと工芸作家の岩切千佳さんです。
畳表だけではなく工芸品としても七島藺を後世に伝えていく
日本は畳のニーズが減ってきているため、畳だけなく工芸品という形で後世に伝えていこうと、国東で七島藺と出会い魅せられた岩切さんが七島藺の伝道師のひとりとして日々奮闘されています。

工房内には七島藺を素材としたたくさんの作品が展示してあります。

海老です。硬い殻の雰囲気がよくでていますね。

工房の奥には、七島藺が積んでありました。

この織機で畳表が織られます。七島藺の特徴は断面が三角形をしているということです。

三角形の断面が見えるでしょうか。

岩切さんから七島藺の説明、栽培手順などを伺います。岩切さんは映画「蜩ノ記(ひぐらしのき)」に七島藺職人として出演されたそうです。