今年で創業120年を迎えた吉野家が、大赤字から見事なV字回復を果たした。営業利益は前期の約37倍となり、最終損益は前期の60億円の赤字から7億円の黒字に。吉野家は、どんな戦略で業績をここまで回復させることができたのか。最新の決算資料から、その謎に迫ろう。

吉野家がV字回復、最終損益は7億1,300万円の黒字に

4月14日、吉野家ホールディングスの2020年2月期(2019年3月1日~2020年2月29日)の連結業績が発表された。内容を見ると、「売上高」「営業利益」「経常利益」「純利益」のすべてが改善していることがわかる。

  • 売上高:2,162億100万円(前期比6.8%増)
  • 営業利益:39億2,600万円(前期比約37.7倍)
  • 経常利益:33億6,900万円(前期比約9.6倍)
  • 最終損益:7億1,300万円(前期は60億円の赤字)

冒頭でも触れたとおり、最終損益は60億円のマイナスから7億1,300万円のプラスに黒字転換した。

2019年の消費税増税や大型台風によって飲食業界はダメージを受けたが、吉野家はそれを跳ね除けるかのように売上を伸ばした。積極的なキャンペーンや新商品の投入を連続で行い、既存店の売上高は好調に推移。海外事業の売上高の伸びも、業績回復を後押しした。

「吉野家」「はなまる」など各部門好調な吉野家ホールディングス

吉野家ホールディングスは、牛丼をメインに扱う「吉野家」の他、「はなまるうどん」、「京樽」を展開している。吉野家ホールディングスの業績を、セグメントごとにさらに詳しく見ていこう。

「吉野家」の売上高、前期比7.8%増

「吉野家」部門の売上高は、前期比7.8%増の1,116億8,500万円。矢継ぎ早に魅力溢れる商品をリリースし、既存顧客の来店頻度を高めたことが奏功した。

2019年3月には、「超特盛り」「小盛」という新サイズを導入。新サイズの導入は実に28年ぶりで、インターネットやSNSなどでも話題になった。

ダイエットブームの中で5月に投入した「ライザップ牛サラダ」もヒットした。丼物を販売しているだけにヘルシーなイメージがあまりなかった吉野家だったが、ライザップ牛サラダは新たな顧客開拓に貢献した。

ポケモンとのコラボによる「ポケ盛キャンペーン」のほか、「牛丼・牛皿全品10%オフキャンペーン」なども売上拡大に寄与した。

「はなまる」の売上高、前期比6.5%増

うどん店の「はなまる」部門も好調だった。売上高は前期比6.5%増の308億9,300万円まで伸びた。同社はその要因として、はなまる業態の店舗数が日本国内で500店舗を突破したことや、価格改定や商品施策などが成功したことなどを挙げている。

「京樽」「海外」部門は積極的な出店で売上を増加

持ち帰り寿司の「京樽」部門の売上高は、同4.5%増の285億4,400万円。増収の要因としては、都心を中心に出店している回転寿司業態の「海鮮三崎港」を17店舗出店し、335店舗まで増やしたことが挙げられる。「海外」部門でも131店舗を出店し、海外店舗数を994店舗まで増やした。その結果、売上高は同3.7%増の219億4,500万円となった。

唯一の損失を出した「アークミール」は事業を売却

セグメント別では唯一減収(1.7%減)となったアークミール。ただし、クーポン配布やコラボ企画などによって、前年同期比で損失額は約5億円減少している。なお、連結子会社であった「アークミール」は2020年2月29日付で安楽亭に譲渡された。
 

宅配対応を進めてきた吉野家、ピンチを乗り切れるか

好調な業績を残せた2020年2月期だが、今期の吉野家ホールディングスの業績はどうなるのか。今のところ同社は、新型コロナウイルスの感染拡大もあって業績予想の発表を遅らせることを決定している。

吉野家は、これまで宅配需要の開拓に向けて宅配サービス対応店を増やしてきた経緯があり、2020年2月期末には宅配対応店舗数が461店舗となっている。新型コロナウイルスの影響でテイクアウトやデリバリー需要が伸びる中、宅配の売上がどこまで業績を下支えするかに注目したい。
 

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)
 

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