「キャリアを築くには専門性が必要」と言われることが多くなりました。でも、専門性とはいったい何なのでしょうか。わたしはライターをしていますが、グルメに旅行におもしろ記事まで、書けそうなものは何でも手当たり次第に書いています。自分の専門性って何だろう……そんな悩みを持つ人も少なくないはず。

そんなとき、ふと気付いたのです。「ニッチでオンリーワンなお仕事をしている人の生き方に、専門性を身につけるヒントがあるのでは?」と。

今回お話をお伺いしたのは、サイバー系専門のモデルとして活躍する斎藤ゆきえさん。サイボーグ専門モデルというこのニッチなお仕事が生まれた理由や、魅力を「作っていく」術を教えてもらいました。

「魅力がないなら作ればいい」モデル事務所150社落ちた先に生まれた“サイバー系専門モデル”とは?
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

斎藤:
はじめまして。今日はよろしくお願いします!

少年B:
はじめまして! 思ったよりも普通の女性なんですね。

「魅力がないなら作ればいい」モデル事務所150社落ちた先に生まれた“サイバー系専門モデル”とは?
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

少年B:
ん、あれ……?

「魅力がないなら作ればいい」モデル事務所150社落ちた先に生まれた“サイバー系専門モデル”とは?
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

少年B:
?????

斎藤:
どうかしましたか?

少年B:
……? いえ、よろしくお願いします。

目次
サイバーモデルってどんな仕事?
サイバーモデルを目指したきっかけとは
絶望的な状況、発想の転換で生まれたサイボーグ
サイバーモデルには「選択肢がある」
運命は変えられないけど、まき直しはできる

サイバーモデルってどんな仕事?

少年B:
それではさっそく斎藤さんのお仕事について教えてください。

斎藤:
はい。私は「サイバー系専門モデル」です。新型コロナウイルスが流行する前は、主に展示会の家電・IT系の企業ブースに立って、商品のPRをするお仕事が主でした。

少年B:
展示会って、東京ビッグサイトや幕張メッセなどでよく開催されているやつですよね。ああいうのってレースクイーンみたいなお姉さんがたくさんいるイメージでしたが……。

「魅力がないなら作ればいい」モデル事務所150社落ちた先に生まれた“サイバー系専門モデル”とは?
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

斎藤:
確かに、そういう格好の方は多いと思います。でも、じつは企業モデルには決まった衣装があるわけではありません。

たとえばVRゴーグルなどのテクノロジー系のブースなら、この衣装だとすごく映えますよね。企業モデルの存在意義は「セクシーな格好で集客すること」じゃなくて、「お客さまに足を止めて頂き、商品に興味を持っていただくこと」なので。

少年B:
なるほど……。確かに、商品のと相性が合えば、集客力はすごくありそうですね。コロナ前の時期はどれくらい展示会に出てたんですか?

「魅力がないなら作ればいい」モデル事務所150社落ちた先に生まれた“サイバー系専門モデル”とは?
(画像=▲展示会の様子(出典:東京ビッグサイト)、『Workship MAGAZINE』より引用)

斎藤:
コロナ以前は企業ブースに月10日間くらい立っていましたね。ピークのときにはそれだけで会社員の月収くらいはいただいてました。

少年B:
それはすごい! お仕事はどのようにして獲っているんですか?

斎藤:
元々は写真を送るなどの営業をしていたんですが、最近はSNS経由でオファーが来るようになって、自分からの営業はほとんどしていません。Twitterのフォロワーが8,000人を超えてから、ありがたいことにたくさんお仕事の話が来るようになりましたね。

「魅力がないなら作ればいい」モデル事務所150社落ちた先に生まれた“サイバー系専門モデル”とは?
(画像=▲フォロワー数が8,000人を超えてから仕事のオファーが増えたという。現在のフォロワー数は1.2万人(2021年7月末現在)、『Workship MAGAZINE』より引用)

少年B:
最近は新型コロナの影響で、展示会も少なくなってしまったと思うのですが、現在はどのような活動をされているんですか?

斎藤:
企業のホームページなどで商品モデルとして活動させていただいたり、ハンドメイドのサイバーグッズの販売をしたりですね。あとはモデルさんに衣装をお貸しして、私がサイバーメイクを施した「サイバー撮影会」の開催などの活動も多くなっています。

少年B:
徹底してサイバーな活動をされていらっしゃるんですね! すごい……!

サイバーモデルを目指したきっかけとは

少年B:
そんなYukiさんがサイバーモデルになったのはなぜなんですか?

斎藤:
私はもともと吃音症(きつおんしょう)だったんです。しゃべる時につかえたり、どもったり。子どものころはよくからかわれたり、いじめられたりもしていました。そんな時に心の支えになってくれたのが、仮面ライダーだったんです。

「魅力がないなら作ればいい」モデル事務所150社落ちた先に生まれた“サイバー系専門モデル”とは?
(画像=▲幼い斎藤さんを救ってくれた仮面ライダー(出典:仮面ライダーWeb)、『Workship MAGAZINE』より引用)

少年B:
仮面ライダーですか!?

斎藤:
はい。私は仙台出身なのですが、仙台では夕方に昔の特撮の再放送があったんです。そこで見た、たったひとりで悪と戦う等身大のヒーロー・仮面ライダーに勇気をもらったんです。

そして、「いつかは自分も仮面ライダーに出たい」と、芸能界への憧れが生まれました。でも、わたしは吃音症で、お芝居なんてとてもできません。そこで、当時2番目に好きだった「モノづくり」で芸能のお仕事と関われないかと思い、美大に進学しました。

少年B:
まだモデルになる道筋が想像できないのですが、そのあとはどうなったんですか?

「魅力がないなら作ればいい」モデル事務所150社落ちた先に生まれた“サイバー系専門モデル”とは?
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

斎藤:
卒業後は縁あって上京し、マンガ家さんのアシスタントをすることになりました。4~5年くらい働いていたんですが、得意なことに打ち込める仕事環境が幸いしたのか、気が付くと吃音が治っていたんです。

少年B:
吃音は精神的なものも原因のひとつと言われていますよね。

斎藤:
そうなんです。同僚から言われるまで、治ってることに全然気づいてなかったんですけど……(笑)。

また東京に出てきてから気付いたのですが、周りには俳優志望の人や芸人さんの卵など、夢を追う人がたくさんいました。仙台ではどうしてもそういうチャンスは少ないですが、東京は違います。

当時はもう27歳になっていましたが、もともとの夢だったお芝居に挑戦してみたいな、という気持ちがまたふつふつと沸いてきました。そこで、半年間ボイトレや殺陣などをみっちり習い、芸能界の門を叩きました。

少年B:
その結果はどうだったんですか?

「魅力がないなら作ればいい」モデル事務所150社落ちた先に生まれた“サイバー系専門モデル”とは?
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

斎藤:
初撮影はエキストラの仕事だったのですが……。エキストラは控室に集められ、出番に応じて呼ばれるんですが、私ひとりだけ、最初から最後まで一度も呼ばれなかったんです。

少年B:
えええ! そんな状況、わたしならすぐに心が折れてしまいそうです……!

斎藤:
もちろん私も落ち込みました。でも、エキストラの中にひとり、芸人さんのタマゴの方がいて、たまたま帰りのバスで一緒になったのですが、そこでこう言ってもらえたんです。

「いやいや、君は控え室で一番目立ってたで。エキストラだから目立つ人は選ばれなかっただけ。むしろ名前や顔が出る役を狙えばええんちゃう?」って。

少年B:
えっ、なんていいお話……!

「魅力がないなら作ればいい」モデル事務所150社落ちた先に生まれた“サイバー系専門モデル”とは?
(画像=『Workship MAGAZINE』より引用)

斎藤:
その後、応募したモデル事務所は150社以上。結果は全部ダメでしたが、「自分のやりたいことをできないまま人生が終わるのはイヤだな」と思って諦めませんでした。そんな状況でも続けられたのは、あの時の言葉があったからだと思います。

少年B:
たったひとつの言葉が救ってくれることってありますよね……! それにしてもバイタリティがすごい!