高い法人税は労働者の負担
法人税は企業のインセンティブをゆがめる二重課税なので、廃止するのが理想だが、OECDはこれを最低15%とする「課税ルール」を決めたので、日本も15%にすればいい。
それも国税はゼロにして、すべて地方税(法人事業税)にすれば、自治体の租税競争で、実効税率が下がる。税率を15%にする代わりに投資減税して企業を誘致するなどの工夫をすればいいのだ。たとえば東京のお台場を法人税ゼロの「法人税特区」にすれば、国際金融センターにできる。
財源は大した問題ではない。法人税率を下げれば国内投資が増え、税収は増えることが多い。むしろ租税競争を恐れる国が、反対するのが問題だ。
こういう話をすると「大企業優遇だ」といわれるが、それは逆である。賃金が下がった原因は、上のデータをみればわかるように、空洞化による雇用喪失である。高い法人税を負担しているのは労働者なのだ。「法人税を減税しても内部留保が増えるだけだ」という批判があるが、賃上げの原資も増える。
グローバル資本主義の論理でいえば、国内で貯蓄と投資がバランスしている必要はないので、海外生産の利益を国内に還元する制度設計が必要である。資産課税は(固定資産税以外は)空洞化を促進する。長期的には消費税を国際化し、キャッシュフロー税(DBCFT)のような国境バイアスのない税に変える必要がある。
岸田首相のように株主を敵視し、その利益を奪おうとする政権は、民主党政権のようにその逆の結果をもたらす。株価は下がり、空洞化は加速し、雇用は失われるのだ。
文・池田 信夫/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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