2022年4月4日、東京証券取引所の4市場が3市場に再編される。この再編に合わせて「上場基準・上場維持基準」も変化しているが、これが日本特有の「株主優待」の制度に影響を与えると見られている。詳しく見てみよう。

上場維持のための「必要株主数」が緩和された

上場企業が上場を維持するためには、「必要株主数」の条件を満たしていなければならない。企業によっては必要株主数を満たすために、株主優待を用意することで多くの株主を獲得してきた。

東証一部の上場維持に必要だった株主数は、「2,000人以上」から「800人以上」へと緩和された。再編後の最上位市場「プライム市場」の基準に合わせるため、先行して基準を緩和したのだ。

必要株主数の基準が緩和されたことで、株主を集めるために株主優待を用意していた企業は岐路に立たされている。株主優待制度を継続するか、廃止するかだ。後者を選ぶ企業が多ければ、株主優待目的で株式投資を行っている人は残念だろう。

株主優待制度を継続するメリットもある

上場維持に必要な株主数の基準が緩和されても、企業側が株主優待制度を継続するメリットは少なからずある。主なメリットは以下の3つだ。

1つ目は「敵対的買収への対策」だ。多くの株主に自社株式を保有してもらえば、敵意を持って買収を仕掛けてくる第三者による買い占めを防ぎやすくなる。

2つ目は「新規顧客の獲得効果」。株主優待として自社製品の割引券を株主に提供すれば、株主に自社製品を使ってもらえる。それをきっかけに自社製品のファンになってもらえば、新規顧客を獲得したことになる。

3つ目は「株価の安定」。株主優待目的で自社株式を長期間保有してもらえば、短期売買を行う株主が減るため株価が安定しやすくなる。株価の急落はさらなる下落を引き起こしやすいため、株価の安定は企業側にとってはメリットとなる。

市場再編のタイミングで株主優待の廃止が相次ぐ?

今後上場企業は、これらのメリットと株主優待制度の維持にかかるコストを天秤にかけ、株主優待を継続するのか、廃止するのかを決めることになる。

すでに必要株主数の基準は緩和されているが、2022年4月の市場再編のタイミングに合わせて、株主優待の廃止を発表する企業がどのくらい出てくるのか、注目したい。

ちなみに東証の再編によって、東証一部を含む4市場は「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3市場に再編される。再編日の2022年4月4日は、株価が乱高下する可能性があるので注意したい。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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