卵白はクセがなくタンパク質を多く含むため、食品業界になくてはならない食材です。
実際、2020年の卵タンパク質の年間消費量は約160万トンでした。
特に卵白を乾燥させて粉末化した「乾燥卵白(メレンゲパウダー)」は、ケーキやお菓子をつくるのに重宝されています。
高まる卵白の需要に対処するため、フィンランド・ヘルシンキ大学(University of Helsinki)農林学部に所属するナターシャ・ヤルビオ氏ら研究チームは、真菌から乾燥卵白の代替品を作り出しました。
ニワトリを飼育する必要がないため、環境にやさしく、土地を大幅に節約できます。
研究の詳細は、12月16日付の学術誌『Nature Food』に掲載されました。
真菌を遺伝子改変して粉末卵白を生み出す
新しい卵白代替品を生み出すため、研究チームが最初に取り掛かったのは卵白の分析です。
卵白タンパク質の50%以上を占める主要タンパク質「オボアルブミン(略称:OVA)」の遺伝子コードを解析・特定することにしたのです。
次にオボアルブミンの設計図をもつ遺伝子を、糸状の真菌「Trichoderma reesei」に挿入。遺伝子改変させました。
これにより、真菌がオボアルブミンを分泌できるようにしたのです。
ちなみに、Trichoderma reeseiから分泌されたオボアルブミンは両方の名称を合わせて「Tr-OVA」と呼ばれています。
その後Tr-OVAは、濃縮・乾燥させることで、粉末状の製品となりました。
では、真菌から作られた乾燥卵白Tr-OVAは、従来の乾燥卵白と比べて、どのようなメリットがあるのでしょうか?