子どもにお金の価値を教え始める理想的な年齢はあるのだろうか?「早い時期から始めたほうが良い」という専門家が多いものの、「子どもが理解できなければ、金融リテラシー教育の効果が半減する」との調査結果も報告されている。

小遣いを与え始める時期、貯蓄や投資について教える時期など、子どもの個性や発達に合わせた効果的にアプローチすることが、成功する金融リテラシー教育のコツだ。

金融リテラシー先進国でも貯蓄している子どもは1%

日本でも子どもの金融リテラシー教育に対する意識が高まっているが、実際に自分の子どもにお金について教えるとなると、戸惑う親も少なくないだろう。

「自分の子どもにはお金の苦労をして欲しくない、お金を賢く使って欲しい」という親の願いは世界共通だが、幼い頃からお金について教えたからといって、必ずしも金融リテラシーの高い大人に育つわけではないようだ。

金融リテラシー先進国の米国で米国公認会計士協会が2012年に実施した調査によると、60%以上の親が子どもに小遣いを与えているが、すべて、あるいは一部を貯蓄している子どもは1%しかいない(Money Cashersより)。

同様の調査結果が多数報告されていることから、「子どもが親の教えを理解できるか、共感できるか」が、子どもの金融リテラシーで重要なカギを握っていると推測される。

子どもの発達に合わせたアプローチを

「子どもの金融リテラシー教育は、できるだけ早い年齢から始めたほうがよい」という点で米国の専門家の意見は一致しているが、理解力や好奇心の発達は子どもによって違う。長男が6歳でお金に関心を持ち、お金の大切さを理解したからといって、次男が同じ歳でお金について学ぶ準備ができているとは限らない。最も効果的にお金について教えるためには、子どもの発達に合わせたアプローチが必要だ。

しかし「ある程度の年齢に達するまでは、お金に関して無頓着な環境で育てて良い」という意味ではない。幼い頃から「お金に慣れる習慣」を身に付けさせ、成長を注意深く見守りながら、お金が動く仕組みや金利、税金、年金、投資などについて、段階的に教えていく。

就学前――金融リテラシーは?お小遣いは6歳から?

具体的にはどのようにして、子どもにお金について教えるべきなのか?

就学前の幼い子どもには、お金と自然に接することができる環境作りを心掛けることを専門家は勧めている。まだお金の価値を理解できない年齢だが、おもちゃのお金を使って数字を覚えたり、硬貨や紙幣の違いを理解したりすることはできる。あるいは「好きなものを1つだけ買ってあげる」と選ばせ、「欲しいものをすべて買うことはできない」ことを学ばせる。

また、小遣いを与える年齢として6歳を推奨する専門家が多い。小遣いを習慣や褒美として与えるのではなく、「お金について学ばせるツール」として与えることを親は意識すべきだ。子どもにもそうした意識を促すことで、「これが欲しい、これをしたい場合、いくらの費用が必要で、いくら節約する必要があるのか」といったことを計画できるようになるだろう。

小学生――お金が減る・増える仕組みを教える

食費・住宅費・光熱費など、家族が生活する上でいくらぐらいのお金が必要なのかを学ばせ、そのお金がどこから生まれるのか(労働・投資など)を説明する。

子ども名義の銀行口座を開設し、お金を貯める楽しみを実感させるのもいいだろう。あえて自由に出入金できる口座を選び、「お金は使うと減るが、増やすこともできる」ことを実感させる。

クレジットカードやデビットカード、ローンの仕組みについて説明し、「お金を借りると利子がつく。期限内に返済しないと延滞金を取られる」が、ルールを守って利用すると生活に役立つ便利なツールであることを教える。

中学生~高校生――「計画的なお金の管理」を体験させる

偉大な投資家ウォーレン・バフェット氏は11歳で証券投資を始めたそうだが、欧米ではお金を増やす手段の一つとして、子どもに投資を教える親が多い。この点に関しては賛否が別れるところだが、投資教育を施すと決めた場合、「ギャンブルと投資の違いを理解させる」「慎重に時間をかけて学ばせる」などに気を配る必要がある。

アルバイトなどで「自分で稼いだお金」を自由に使えるようになる年頃だが、計画的に管理する必要があることを自らの体験を通して学ばせる。

大学生――社会人になってからの金融知識もサポート

学資ローンや学生用クレジットカードなど、実際に「お金を借りる」ことを体験し、独り暮らしを通して金融リテラシーを向上させる子どもも多いだろう。子どもの年金、住宅購入資金など、子どもが社会人になってからの金融知識をサポートすることも重要だ。

「お金の話を子どもの前でしない」という親もいるが、子どもの前でもお金について話せる環境で育てることで、子どもは親の会話から自然に知識を身に付けるのではないだろうか。ただし借金やギャンブルなど、子どもに悪影響を与えかねない話題ではなく、老後の貯蓄や給与交渉、住宅ローンの借り換えなど、知っていると将来役立つ話題を選ぶ配慮は必要だ。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)
 

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