貿易問題よりも根深い 「米中冷戦」の本質

2019.8.18
RELATIONSHIP
(画像=THE21オンラインより)
(画像=THE21オンラインより)

日本人が知らない「国際ニュースの核心」

激動の国際情勢を、一段深く理解したい。そのためには、世界史の知識が欠かせない。この連載では、世界史を大きなストーリーとして捉える見方でおなじみのカリスマ塾講師・茂木誠氏が、現在の国際情勢の歴史的背景を、キーワードで解説する。

米中冷戦のキーマンは「マイク・ペンス氏」

米中の貿易摩擦が過熱する中、2018年10月4日、マイク・ペンス米副大統領が演説を行ない、経済・外交・軍事の多方面から約1時間にわたって中国批判を展開しました。あの演説は、ペンス氏個人の見解ではなく、トランプ政権の中国に対する対立姿勢の表明と見るべきです。

第2次世界大戦後、アメリカの大統領トルーマンは、ソ連の共産圏拡大を非難しました。拡大する共産主義への封じ込め政策を宣言したのです。これを、「トルーマン・ドクトリン」と言います。この宣言を契機に冷戦が始まったように、相手国を名指しで批判したことで、米中冷戦の火蓋が切って落とされたと言えるでしょう。

多くの報道機関では、両国の関係悪化の原因は貿易摩擦であると報じています。しかし、問題はそれだけではありません。中国の南シナ海での強硬な軍事姿勢、米国企業への技術移転強要、知財侵害に加えて、もっとも根深いのは宗教問題なのです。

ペンス氏の人物像を詳しく見てみると、その理由がよくわかります。彼は米国内では少数のカトリック教徒ですが、『聖書(福音書)』の教えを絶対視する点で「福音派」と呼ばれるプロテスタントの保守系キリスト教徒の支持を受けているのです。

福音派は、『聖書』の教えに反する人工中絶や同性愛には反対の立場で、まもなく世界最終戦争が起こり、神が再臨する「終末論」を信じています。アメリカには福音派の人々が約25%いて、副大統領のペンス氏の背後には、この固い地盤があるのです。

気に入らなければすぐに解任されるトランプ大統領の側近は、イエスマンばかりという印象が強いですが、トランプ大統領も、政権支持率の鍵を握るペンス氏をないがしろにはできないようです。

米中摩擦に「叙任権闘争」あり

そんなペンス氏が、演説において厳しく追及したのが、中国政府による宗教弾圧です。

どの国でもカトリック司教の任命権はローマ法王(現在はフランシスコ法王)にあります。しかし、中国共産党はそれを認めず、無神論の共産党政権がカトリック司教を任命するという奇妙な現象が起こっています。

共産党政権は、バチカンが任命したカトリック司教を、弾圧しています。見つかれば十字架も教会も破壊されてしまうので、秘密裏に集会を開いているのです(地下教会)。江戸時代の隠れキリシタンそのものでしょう。

中国でのカトリック教会の分裂を憂いたローマ法王は、ついに中国政府公認の司教を追認する方向で合意しました。しかし、信仰の自由を重んじるペンス氏は、こうした中国政府の宗教介入を、強く批判しているのです。

世俗権力と宗教的権威とが聖職者の任命権で争うことを、「叙任権闘争」と言います。

中世ヨーロッパには、神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世が、自分の言うことを聞く司教を勝手に任命しました。それに対してローマ法王グレゴリウス7世が異を唱え、ハインリヒ4世を破門。ハインリヒ4世は、グレゴリウス7世に許しを請いました。これが、「カノッサの屈辱」と呼ばれる事件です。

米中摩擦には、現在の「叙任権闘争」が影を落としています。中国政府が米中対立を、単なる貿易問題だと捉えているのなら、米中 関係は悪化の一途を辿るでしょう。今後、アメリカに対してどんなアクションを起こすのか、中国の動向に注目です。

文・茂木 誠(もぎ・まこと)
駿台予備学校世界史科講師
東京都出身。駿台予備学校やネット配信のN予備校にて世界史の講師として多数の受験生を指導している。受験の参考書のほか、『経済は世界史から学べ!』(ダイヤモンド社)『マンガでわかる地政学』(池田書店)『ニュースの〝なぜ?″は世界史に学べ』(SB新書)『世界史につなげて学べ 超日本史』など著書多数。(『THE21オンライン』2019年06月19日 公開)

提供元・THE21オンライン

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