一部のネット証券では夜間にPTS(Proprietary Trading System、私設取引システム)を使った株式取引ができる。夜間取引の魅力は、取引所の立会時間中に取引できないビジネスパーソンでもリアルタイムで株式取引ができることだ。夜間取引ができるネット証券の紹介や手数料を比較していこう。
目次
1,PTS取引とは?「PTS取引」なら取引所を通さず夜でも国内株式を取引できる

PTS取引は、証券取引所以外で株式売買ができる場として認可された電子取引システムだ。
証券取引所が開いている時間でしか取引ができないことに不便さを感じる投資家は多い。
PTS取引市場はJNXとChi-Xの2社
PTS取引は、国内では以下2社が運営している(2021年10月時点)。
・チャイエックスPTS(Chi-X)

SBI証券、楽天証券、松井証券などの証券会社は、顧客からの注文をPTS運営会社に取り次ぐ役割を担っています。
ジャパンネクストPTS(JNX)とチャイエックスPTS(Chi-X)の違いについては、まず取引時間が挙げられる。
夜間取引(ナイトセッション)にも対応しているのはジャパンネクストPTS(JNX)だ。ー
取引量も現在のところ、ジャパンネクストPTS(JNX)のほうが多い。
PTS取引の取引時間
ジャパンネクストPTS(JNX) | チャイエックスPTS(Chi-X) | |
---|---|---|
デイタイムセッション | 8:20~16:00 | 8:20~16:00 |
ナイトタイムセッション | 16:30~23:59 | 未対応 |
PTS取引の売買高(2021年9月)
ジャパンネクストPTS(JNX) | チャイエックスPTS(Chi-X) | |
---|---|---|
1日平均売買高 | 3,350億8,481万6,305円 | 1,041億524万756円 |
月間合計売買高 | 6兆7,016億9,632万6,106円 | 2兆821億481万5,127円 |
PTSを活用すれば朝・昼・夜に取引可能
東京証券取引所での取引時間は世界的に見ても短い。
そのため、立会時間中に株式を売買できないビジネスパーソンも多いだろう。
昼休みに取引を行いたくても、取引所は11:30~12:30の間はクローズしているので不便だ。

PTS取引のデイタイムセッションは、昼休みに取引機会を提供することになるのでとても便利です。さらにナイトタイムセッションを利用すれば、海外で起きた大きなイベントや企業の決算発表を見てから、夜間に自宅で取引することもできます。
2, PTS取引のデメリットや注意点

PTS取引は投資家の利便性を高めるシステムだが、利用する際に注意しなければならないポイントがいくつかある。
これらの注意を怠ると、PTS取引による収益機会が予期せぬ損失に変わってしまう可能性もある。
- 流動性が低い
- 注文方法が限定される
- 取引できる銘柄が少ない
PTS取引のデメリット1,流動性が低い
株式取引において、流動性は重要な要素の一つだ。
投資家は、購入したい銘柄を買いたい値段で買え、売却したい銘柄を売りたい値段で売れることを重要視する。

PTS取引は元々出来高の多くない銘柄の取引には向いておらず、出来高の多い大型株などの取引に利用すべきでしょう。
特にナイトタイムセッションでは、デイタイムセッションに比べ市場参加者が少ないため流動性が低い銘柄が増える。
取引をしたくてもできない銘柄、現在の価格から離れた価格での取引しかできないケースが現れる可能性がある。
PTS取引のデメリット2,注文方法が限定される
出典:SBI証券『PTS取引基本ルール』、楽天証券『夜間取引/PTS取引の基本ルール』
注文の有効期間は「当日のみ」になり、翌日以降に持ち越すことはできない。
また、セッション間で注文が引き継がれることもないので、デイタイムセッションでの注文は、ナイトタイムセッションに引き継がれない。
PTS取引のデメリット3,取引できる銘柄が少ない
ジャパンネクスト証券、チャイエックス・ジャパンのPTS取引で可能な銘柄に限定されている。
出典:ジャパンネクスト証券『取引関連情報』、チャイエックス・ジャパン『取引対象銘柄』
3, PTS取引のメリット

PTS取引の最大のメリットは、投資家が取引を行う時間が増えることだ。
日本における取引所での取引時間は、世界的に見ても短い。
PTS取引は、この「短い取引時間」を補い、かつ約定価格や手数料の面でも投資家に恩恵をもたらす。
- 取引所の取引時間帯以外で株式の取引ができる
- 有利な値段で株式の取引ができる可能性がある
- 売買手数料が安くなる
PTS取引のメリット1,取引所の取引時間帯以外で株式の取引ができる
PTS取引では、取引所がオープンする9:00より前の8:20より取引ができる。

NY市場が大きく動いた場合など、取引所がオープンする前に取引機会が得られるのは魅力です。またNY市場終了から東京市場がオープンするまでの間に、有力な米企業が決算発表を行うケースも少なくありません。
PTS取引により、昼休みの時間帯に取引ができるのも便利だ。
東京証券取引所は、午前と午後の取引の間に1時間の休憩を挟む(11:30~12:30まで)。
これは昼休みの時間と重なる会社員などには不便だが、PTS取引ならば対応できる。
・PTS取引を使えば決算発表や不測の事態にも対応できる
決算発表に関しても、取引所取引が終了してから発表する企業がまだ多い。
また、海外の時間帯に予想外のイベントで日本株が影響を受けることもある。

PTS取引はこのような場合に、投資家に取引機会を与えるので、投資家は不測の事態に対応することができます。
PTS取引のメリット2,有利な値段で株式の取引ができる可能性がある
PTS取引では、東京証券取引所と異なった呼値(売買するときの価格の刻み幅)が採用されている。
出典:ジャパンネクストPTS『上場株式等私設取引システム取引説明書』

PTS取引のメリット3,売買手数料が安くなる
出典:SBI証券『「朝8:20~」「夜16:30~23:59まで」取引できるのがSBI証券のPTS取引!』
投資家がPTS取引をもっとも利用したいと感じるのは、欧米の株式市場が動いているナイトタイムセッションであろう。
そのナイトタイムセッションでの取引手数料が無料になるのは、PTS取引の大きな魅力と言っていいだろう。
4,夜間取引ができるネット証券を比較 取引状況や手数料など

PTS取引のうち夜間取引サービスを提供しているのはジャパンネクストPTSだけである。
ジャパンネクストPTSのナイトタイムセッションに接続しているネット証券は次の3社だ(2021年10月21日現在)。
- SBI証券
- 楽天証券
- 松井証券
夜間取引開始時間や手数料は、取り次ぐネット証券によって違いがある。
SBI証券 | 楽天証券 | 松井証券 | ||
---|---|---|---|---|
取引時間 | デイタイム セッション |
8:20~16:00 | 8:20~16:00 | 8:20~15:30 |
ナイトタイム セッション |
16:30~23:59 | 17:00~23:59 | 17:30~23:59 | |
手数料 | ~5万円 | 51円 | 55円 | 0円 |
~10万円 | 94円 | 99円 | ||
~20万円 | 110円 | 115円 | ||
~50万円 | 261円 | 275円 | ||
~100万円 | 508円 | 535円 | 1,100円 | |
~150万円 | 608円 | 640円 | 2,200円 | |
~200万円 | 963円 | 1,013円 | ||
~3,000万円 | 100万円増える ごとに 1,100円加算 |
|||
3,000万円超 | 1,016円 | 1,070円 | ||
1億円超 | 11万円 | |||
おすすめポイント | 売買手数料が安い デイタイムセッションでは 取引所取引より5%安く、 ナイトタイムセッションでは無料 |
1約定プランに加え、 1日定額制プランも選べる NISA口座でも取引可 |
売買手数料は 1日定額制のみ 取引所とPTSの 取引を合わせた1日の 約定代金合計で決まる 逆指値注文、 追跡指値注文、 ICO注文も利用可 |
PTS取引状況――2社に接続可能な楽天証券、夜間取引開始時間には違いあり
ネット証券によって、接続できる運営会社は異なってくる。
マネックス証券とカブドットコム証券はPTSに接続できるが、夜間取引を行っていないためここでは対象から除外している。
夜間取引できるネット証券のPTS取引状況比較
SBI証券 | 楽天証券 | 松井証券 | ||
---|---|---|---|---|
取次先 | JNX | Chi-X | JNX | JNX |
デイタイム | 8:20~16:00 | 8:20~16:00 | 8:20~16:00 | 8:20~15:30 |
ナイトタイム | 16:30~23:59 | ― | 17:00~23:59 | 17:30~23:59 |
PTS手数料――SBI証券は国内株式手数料の5%オフ 松井証券は50万円以下が0円
夜間取引を含むPTS取引の手数料はネット証券によって異なる。
夜間取引できるネット証券 PTS手数料比較
(2021年10月21日現在 税込)
1回の約定金額 | SBI証券 | 楽天証券 | 松井証券 |
---|---|---|---|
~5万円 | 51円 | 55円 | 0円 |
~10万円 | 94円 | 99円 | |
~20万円 | 110円 | 115円 | |
~30万円 | 261円 | 275円 | |
~50万円 | |||
~100万円 | 508円 | 535円 | 1,100円 |
~150万円 | 608円 | 640円 | 2,200円 |
~200万円 | 876円 | 1013円 | |
~3,000万円 | 100万円増えるごとに1,100円加算 | ||
3,000万円超 | 1016円 | 1070円 | |
1億円超 | 11万円 |
楽天証券のPTS取引手数料は、超割コースやいちにち定額コースなど、それぞれが選択している手数料コースの手数料体系が適用されるため、表では超割コースの手数料を載せた。
松井証券のPTS取引手数料には1日の約定代金の合計が一定範囲内であれば手数料が定額になるボックスレートが適用される。
PTS取引、現物株式取引、そして信用取引の約定代金が合算される。
5,PTS取引の始め方

PTS取引を始めるのに特別な手続きは必要ない。
通常の取引同様、証券会社を選び、口座開設の手続きを行えばいい。
後は必要な資金を自己の口座に振り込み、取引市場にPTS市場を選択してトレードを始めるのみだ。
-
証券会社を選ぶ
-
口座開設
(1)口座開設を申し込む
(2)口座開設に必要な書類を提出
(3)初期設定を行う
(4)口座開設完了通知の受取 -
国内株式取引ページで、取引市場に「PTS」を選択して取引開始
PTS取引の始め方1,証券会社を選ぶ
PTS取引だけでなく取引所取引も併用することになるので、トータルのサービスを比較して取引する証券会社を決めるのがいい。

PTS取引に限ってポイントを指摘すれば、売買手数料の水準や注文方法の違いなどを確認して、自分の投資スタイルにもっとも適した証券会社を選ぶべきでしょう。
PTS取引の始め方2,口座開設
口座開設の手続きには、まず口座開設の申し込みを行う必要がある。
SBI証券の口座開設手続きを例にとって解説する。
・(1)口座開設を申し込む
口座開設ページで、メールアドレスを入力して送信すると認証コードが送られてくる。
認証コードをサイトの所定の箇所に入力すると入力画面が現れるので、メールアドレスを登録し、氏名・住所等の情報を入力して、次に口座開設方法を選択する。

・(2)口座開設に必要な書類を提出
口座開設方法には「ネットで口座開設」と「郵送で口座開設」の2つがあり、どちらを選択するかによって、必要書類が異なる。
また、「ネットで口座開設」場合でも、スマホを利用して必要書類を提出する場合と、スマホを利用しないで提出する場合では必要書類が異なる。
「ネットで口座開設」の場合(スマートフォンの撮影機能を利用)
- 「マイナンバーカードのみ」または「通知カードと運転免許証」
「マイナンバーカードのみ」もしくは「通知カードと運転免許証」を用意し、スマートフォンで撮影して提出。

郵送物の受取がなく、取引開始まですべての手続きをネット上で完結させることが可能です。取引開始まで最短の手続き方法です。

「ネットで口座開設」の場合(スマートフォンの撮影機能を利用しない)
- 「マイナンバーカードと本人確認書類(1種類)」もしくは「通知カードと本人確認書類(2種類)」
「マイナンバーカードと本人確認書類(1種類)」もしくは「通知カードと本人確認書類(2種類)」を用意して提出。
書類の審査が終了すると郵送物が送付され、取引を開始することが可能になる。
・運転経歴証明書
・住民基本台帳カード(写真付き)
・日本国パスポート
・住民票の写し
・各種健康保険証
・印鑑証明書

「郵送で口座開設」の場合
- 「マイナンバーカードと本人確認書類(1種類)」もしくは「通知カードと本人確認書類(2種類)」
口座開設の手続きに必要な書類が普通郵便にて送られてくる。
必要事項を記入して、書類を返送する。
必要書類は、「マイナンバーカードと本人確認書類(1種類)」もしくは「通知カードと本人確認書類(2種類)」を用意してコピーなどを提出。
・運転経歴証明書
・住民基本台帳カード(写真付き)
・日本国パスポート
・住民票の写し
・各種健康保険証
・印鑑証明書

・(3)初期設定を行う
初期設定では、取引開始までに職業や勤務先、振込先金融機関口座などの基本情報を登録する。
これにより、リアルタイム株価やWEBサイト限定の投資情報を利用することができる。
・(4)口座開設完了通知の受取り
提出書類の審査等が完了すると、選択された方法で「口座開設完了通知」が送られてくる。
PTS取引の始め方3,国内株式取引ページで、取引市場に「PTS」を選択して取引開始
取引所取引と同じように、国内株式取引ページで、銘柄、買/売、株数、価格、そして市場を「PTS」に設定して取引を開始する。

6,忙しいビジネスパーソンの投資の可能性を広げるPTS取引

時間の制約があってこれまで株式取引をあきらめていたビジネスパーソンも、夜間取引を利用すれば、リアルタイムで株式の売買ができます。
大引け後に発表される海外の市場動向や決算発表の結果を受けて、夜間に迅速に対応することも可能だ。

多忙なビジネスパーソンにとって、夜間取引は株式投資の可能性を広げる手段となるでしょう。
7.PTS取引でよくある3つのQ&A
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