楽天証券からSBI証券へのNISA口座の乗り換えはできるが、保有している商品を非課税扱いのままSBI証券のNISA口座に移管はできない。
NISA口座の商品をSBI証券に移したい場合は、楽天証券で商品をNISA口座から特定口座や一般口座へ払い出した後、商品の移管手続きが必要だ。
一方、楽天証券の一般口座・特定口座で保有している国内株式、外国株式(米国株式、中国株式)、投資信託、個人向け国債であれば、手数料無料でそのままSBI証券の口座に移せる。
移管元 | 移管先 | 移管方法 |
---|---|---|
楽天証券の一般口座 | SBI証券の一般口座 | 楽天証券に申請 |
楽天証券の特定口座 | SBI証券の特定口座 | 楽天証券に申請 |
楽天証券のNISA口座 | SBI証券の一般口座か特定口座 | 楽天証券で保有資産を課税口座へ 払い出したうえで通常の移管申請 |
NISA口座の乗り換えには数週間から1ヶ月程度、一般口座・特定口座の国内株式の移管には4〜5日、投資信託の引っ越しには2週間程度かかる。時間はかかるが申請の手順自体は簡単だ。
SBI証券へ移管やNISAの乗り換えを行うと、Vポイントがざくざくたまったり、投資できる商品の選択肢が広がったりする。
この記事では、SBI証券に口座を変更したいと思っている人にむけて、移管の手順や、乗り換えるメリットやデメリットを解説していく。
目次
楽天証券からSBI証券にNISA口座を移管・変更する手順
楽天証券からSBI証券にNISA口座を移管・変更する手順はこちら
このとき、楽天証券のNISA口座で保有している商品は、非課税扱いのままSBI証券のNISA口座に移管できないため、次のいずれかの方法を選択することになる。
楽天証券の口座を解約する場合やSBI証券に運用資産をまとめたい場合は(1)か(2)、楽天証券の口座を残すなら、(3)の方法になる。
SBI証券にNISA口座を開設するには、まずはSBI証券の証券総合口座が必要だ。SBI証券の証券総合口座を持っていない人は、乗り換えの手続きの前に開設しよう。
楽天証券からSBI証券にNISA口座を移管・変更する手順
移管手続きは次の手順で行おう。
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SBI証券の証券口座を開設する
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楽天証券のWEB上でNISA口座の金融機関変更手続きを行い、「勘定廃止通知書」か「非課税口座廃止通知書」を申請し、後日郵送で受け取る
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SBI証券に「勘定廃止通知書」か「非課税口座廃止通知書」と本人確認書類を郵送で提出する
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SBI証券と税務署による審査が行われる
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審査完了後、SBI証券のWEBサイトログイン後に確認できる「重要なお知らせ」などにNISA口座開設完了の通知が届き、金融機関変更が完了
手順2の楽天証券で受け取る2つの書類のどちらがいいかは、次のように選択しよう。
・非課税口座廃止通知書…楽天証券のNISA口座を廃止してSBI証券でNISA口座を再開設する場合。NISA口座を廃止する場合は、NISA口座の残高がゼロでなければならない。
手順3で、SBI証券にマイナンバーを提出していない人は、マイナンバーが確認できる書類(「マイナンバーカード」または「通知カードの写し」など)も必要になる。
NISA口座の金融機関変更は1月〜12月の年単位で認められているため、変更したい年の前年10月1日から手続きができる。
上の図のように、2026年のNISA口座を変更したい場合は、2025年の10月1日以降に手続きをすることになる。
楽天証券のNISA口座からSBI証券の課税口座に商品を移す手順
移管先はSBI証券の特定口座か一般口座で、NISA口座へは移せない。
手続きの流れは次の通りだ。
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楽天証券のカスタマーサービスへ連絡し、書類を取り寄せてNISA口座から特定口座か一般口座へ払い出す
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通常の移管手続きを行う
この場合、その商品に対する非課税措置はNISA口座から払い出した時点で終了し、その時点の価額(時価)が新たな取得価額になる。
楽天証券のNISA口座の資産を売却し、SBI証券のNISA口座で新たに買い付ける手順
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楽天証券のNISA口座の資産を売却する
-
売却代金をSBI証券口座に移す
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SBI証券のNISA口座で同じ商品を買い付ける
この方法なら、楽天証券のNISA口座から商品を移管したのと同じような状態になる。
しかし、売却時に非課税措置が終了し、損益が確定され、取得価額は引き継がれない。
楽天証券のNISA口座に資産を残す手順
楽天証券のNISA口座で保有している商品は、次のいずれかに該当するまで非課税で保有できる。
・課税口座へ払い出す
・非課税期間が終了する(旧NISA口座で保有している商品の場合)
NISAの長期運用の効果を高めるために、まずはそのまま楽天証券のNISA口座で保有し続けることを考ええましょう。
竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
特に旧NISA口座(つみたてNISA、一般NISA)で保有している商品は、売却した時点で非課税措置が終了し、その分の非課税枠は復活しないため注意したい。
楽天証券からSBI証券へ株式や投資信託を移す方法
移管には、「出庫」と「入庫」という手続きが必要だ
出庫は、他の証券会社へ商品を移す手続きのことで、今回の場合は楽天証券で行う。入庫は他の証券会社から商品を受ける手続きのことで、SBI証券で行う。
楽天証券の証券総合口座(特定口座・一般口座)で保有している株式や投資信託をSBI証券へ移管する具体的な手順を、次の4つに分けて確認しておこう。
楽天証券からSBI証券に国内株式を移す方法
手続きの流れは以下だ。
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楽天証券のPCサイトにログイン
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「マイメニュー」のお客様情報の設定・変更から「移管・買取請求」を選択
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日本株式「楽天証券から他社へ」の「申込」をクリック
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必要事項を入力
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楽天証券の手続き完了後、SBI証券の残高に移管された国内株式が反映される
楽天証券からSBI証券への移管が完了するまで、通常4〜5営業日かかる。このとき、手数料はかからない。楽天証券の出庫手数料とSBI証券の入庫手数料は無料だからだ。
ここからはWEBでの手続きの詳細を確認していこう。
WEBでの国内株式の出庫手続き
まずは楽天証券のPCサイトにログインし、「マイメニュー」のお客様情報の設定・変更から「移管・買取請求」を選択する。
「移管依頼/商品選択」ページが開いたら、日本株式欄「楽天証券から他社へ」の「申込」をクリックする。画面の指示に従って、移したい株式の銘柄名や移管先などの必要事項を入力すれば手続きは完了だ。
移管先の入力に必要な情報は、SBI証券のサイトにログイン後、「口座管理」>「お客さま情報 設定・変更」>「ご登録情報」と進み、「お客さま基本情報」欄で確認できる。
(2)お取扱店(部支店名):本店
(3)部支店コード :お客さま口座番号のハイフン(-)前3桁の数字
(4)お客さまの口座番号 :お客さま口座番号のハイフン(-)後7桁の数字
(5)部支店の所在地 :東京都港区六本木1-6-1
(6)加入者口座コード :機構加入者コード「1125660」から始まる21桁の数字
(7)機構加入者コード :1125660
楽天証券の特定口座で保有している株式を移す場合、SBI証券でも特定口座の開設が必要だ。ただし、楽天証券で特定口座から一般口座に振り替え後、SBI証券の一般口座に移せる。
また、特定口座で保有している銘柄は、その銘柄全株の移管のみが可能で、一部のみは移せない。
手続きが完了する当日までに対象銘柄の取引を行うと、手続きが中止されてしまうので注意しよう。
なお、国内上場外国株式と国内上場ETF(外国株式扱い)の銘柄の移管はWEBでの手続きができない。
これらの銘柄を移すには、楽天証券のカスタマーサービスセンターに連絡して「口座振替依頼書」を取り寄せ、必要事項を記入して返送する必要がある。
楽天証券からSBI証券に外国株式を移す方法
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楽天証券PCサイトにログイン
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「マイメニュー」のお客様情報の設定・変更から「移管・買取請求」を選択
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米国株式か中国株式の「楽天証券から他社へ」の「申込」をクリック
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送付先の確認と銘柄数の選択を行う
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届いた外国証券移管依頼書に必要事項を記入し、楽天証券へ返送
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楽天証券の手続き完了後、SBI証券の残高に移管された外国株式が反映される
移管できるのはSBI証券で取り扱いのある米国株式・ETFと中国株式・ETFだけだ。
出典:SBI証券で取り扱いのある米国ETF、中国ETF
また、SBI証券へ外国株式を移すには、SBI証券で証券総合口座だけでなく、外国株式取引口座も開設しなければいけない。
SBI証券の口座開設後、移したい銘柄がSBI証券の取扱銘柄であることを確認したら、楽天証券での手続きを行おう。
SBI証券に移管されるまでには、通常は約2週間かかる。SBI証券と楽天証券での照会手続きや事務処理などの状況によっては、それ以上かかる場合もある。
外国株式を移すとき手数料はかからない。楽天証券の出庫手数料とSBI証券の入庫手数料ともに無料であるためだ。
ここからは、楽天証券のWEBでの手続きの詳細を確認していこう。
WEBでの外国株式の移管手続き
WEBで「外国証券移管依頼書」を請求する場合は、楽天証券のPCサイトにログインし、「マイメニュー」からお客様情報の設定・変更「移管・買取請求」を選択する。
「移管依頼/商品選択」ページで移したい株式の欄(米国株式欄または中国株式欄)にある「申込」をクリックし、画面の指示に従って資料請求に必要な事項を入力すれば請求手続きは完了だ。
請求後、2〜3日程度で楽天証券に登録されている住所に外国証券移管依頼書が届く。
外国証券移管依頼書に移したい株式の銘柄名、株数、移管先などの必要事項を記入し、専用封筒で楽天証券に返送すれば手続きは完了だ。
移管依頼書返送後に、対象銘柄の注文や積立設定がある場合、手続きがキャンセルされてしまうため、申し込み前に注文や積立設定が残っていないかを確認し、残っていれば取消か設定解除をしておこう。
楽天証券からSBI証券に投資信託を移す方法
手数料を無料にしたい場合は、楽天証券での手続き後、SBI証券で「投信お引越しプログラム」の利用手続きが必要だ。
移管できるのは、SBI証券で取り扱いのある投資信託(MMF、外貨建てMMFを除く)だけだ。
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楽天証券PCサイトにログイン
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「マイメニュー」のお客様情報の設定・変更から「移管・買取請求」を選択
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「投資信託の移管に関するお手続きはこちら」をクリック
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投信口座振替依頼書をダウンロード
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必要事項を記入し楽天証券へ送付
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楽天証券の手続き完了後、SBI証券の残高に移管された投資信託が反映される
移管が完了するまでは、楽天証券に書類が到着してから2週間程度だ。決算日などを挟む場合や、SBI証券側に諸事情がある場合など、最長1ヵ月かかることもある。
楽天証券での手続きの詳細を確認していこう。
楽天証券のWEBでの投資信託の移管手続き
楽天証券のPCサイトにログイン後、「マイメニュー」からお客様情報の設定・変更「移管・買取請求」を選択して「移管依頼/商品選択」ページへ進む。投資信託欄にある「投資信託の移管に関するお手続きはこちら」をクリックする。
表示される「投資信託移管の申込み手順と口座振替依頼書面」ページの最下部、「投信口座振替依頼書をダウンロードする」から、投信口座振替依頼書のPDFファイルをダウンロードして印刷しよう。
PDFファイルに添付されている見本を参考に、投信口座振替依頼書に移したい株式の銘柄名、数量、移管先などの必要事項を記入する。
宛名ラベルが用意されているので、印刷して切り取り、定型封筒に貼って楽天証券へ返送する。料金受取人払郵便のため送料はかからない。
楽天証券に投信口座振替依頼書を郵送すれば手続きは完了だ。SBI証券の残高に移管された投資信託が反映されるまで待とう。
楽天証券に投信口座振替依頼書が到着してからSBI証券へ移管されるまでの間、対象銘柄の取引はできなくなる。
SBI証券での投資信託の移管手数料無料の手続き
投資信託の移管には、楽天証券の手続き時に1銘柄あたり3,300円(税込)の手数料がかかるが、SBI証券の「投信お引越しプログラム」を利用すれば全額キャッシュバックされるため、実質無料だ。
投信お引越しプログラムを利用するには、移管(入庫)手続き完了後、自身で申し込む必要があるので忘れないようにしよう。入庫からキャッシュバックまでの手続きの流れは次のとおりだ。
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楽天証券で移管手続きを行い、SBI証券への入庫を完了させる
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SBI証券のWEBサイトからダウンロードし、印刷した「投資信託入庫申込書」に必要事項を記入する
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SBI証券のWEBサイトから「返信用封筒ラベル」を印刷し、ラベルを貼り付けた封筒に投資信託入庫申込書と「移管(出庫)手続き完了に関するお知らせ」を印刷したものを同封してSBI証券へ送付する
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(SBI証券のほうで、送付された書類と入庫データを照合し、不備がないかを確認する)
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不備がなければ、書類到着完了月の翌月末に証券総合口座に移管手数料相当額が入金される
投信お引越しプログラムには申込期限がある。入庫日から3ヵ月後の月末最終営業日までにSBI証券に書類が到着していないとキャッシュバックを受けられなくなるため注意が必要だ。
例えば2024年8月に入庫が完了した場合、3ヶ月後の月末最終営業日にあたる2024年11月29日までにSBI証券に書類が到着しなければならない。
楽天証券では出庫手数料の領収書が発行されないため、移管完了時に配信される「出庫手続き完了に関するお知らせ」を印刷して代用する。
このお知らせは、楽天証券サイトにログイン後のお知らせ画面に配信されるので、見逃さないようにしましょう。
竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
楽天証券からSBI証券に債券を移す方法
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楽天証券カスタマーセンターに電話し、国債の移管に必要な書類を請求
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必要事項を記入し、楽天証券へ書類を返送
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楽天証券の手続き完了後、SBI証券の残高に移管された投資信託が反映される
楽天証券では、債権のうち個人向け国債のみ他社へ移管できる。地方債、社債、外国債は移せないため、売却するか楽天証券口座で保有し続けることになる。
楽天証券で保有している株式や投資信託はSBI証券に移管後どうなる?
ただし、NISAの乗り換えに伴ってNISA口座で保有している商品を売却したり、課税口座に払い出したりした場合には、その時点で売却商品に対する非課税措置が終了する。
それぞれの手続きによる影響を確認しておこう。
一般口座・特定口座の株式や投資信託を移管するとどうなる?
同じ区分の口座であれば資産をそのまま移管できる。
楽天証券の一般口座→SBI証券の一般口座
楽天証券(移管元) | SBI証券(移管先) | 移管可否 |
---|---|---|
特定口座(特定預かり) | 特定口座(特定預かり) | ◯ |
一般口座(一般預かり) | × | |
一般口座(一般預かり) | 特定口座(特定預かり) | × |
一般口座(一般預かり) | ◯ |
違う区分の口座、たとえば楽天証券の特定口座からSBI証券の一般口座に資産を移管する手続きは制度上できない。
NISA口座を乗り換えたら株式や投資信託はどうなる?
ただし、次の場合は非課税期間が終了する。
・旧NISAで保有している商品の非課税期間が終了する
楽天証券のNISA口座で保有している商品を課税口座に払い出すか売却した場合、その商品が将来値上がりしたら、税金が発生する。
また、旧NISA口座で保有していた商品分の非課税枠は、非課税期間が残っていても払い出すか、売却した時に消滅する。旧つみたてNISA、一般NISA口座の非課税枠は再利用できないためだ。
一方、2024年から始まった新NISA制度の非課税枠は、つみたて投資枠、成長投資枠いずれも商品を売却した翌年に復活するため再利用ができる。
復活した非課税枠は、その時点でNISA口座を開設している金融機関での買付に利用できる。
楽天証券からSBI証券に移管するデメリット
また、移管が完了するまで時間がかかり、その間に移した商品の取引ができなくなる点もデメリットだ。
楽天ポイントがたまりにくくなる
楽天証券には、楽天市場の買い物で楽天ポイントの付与率がアップする特典や、各種取引や投資信託の保有で楽天ポイントが貯まる特典がある。
サービス (取引) |
条件 | 特典 |
---|---|---|
SPU (投資信託) |
月合計3万円以上の投資信託買付け (うち1ポイント以上のポイント投資) (※1) |
楽天市場のお買い物で付与される ポイントが+0.5倍 |
SPU (米国株式/円貨決済) |
月合計3万円以上の米国株式買付け (うち1ポイント以上のポイント投資) (※1)(※2) |
楽天市場のお買い物で付与される ポイントが+0.5倍 |
投信積立 (楽天カード クレジットカード決済) |
楽天カード クレジット決済による投信積立 |
決済額(上限月5万円)に対して 0.5%〜2.0%の楽天ポイント付与 (※3) |
投信積立 (楽天キャッシュ) |
楽天キャッシュによる投信積立 | 積立額(上限月5万円)に対して 0.5%の楽天ポイント付与 |
金・プラチナ・銀積立 (楽天カード クレジット決済) |
楽天カードクレジット決済 による金・プラチナ・銀積立 |
決済額 (金・プラチナ・銀、各上限月10万円) に対して0.5%の楽天ポイント付与 |
取引手数料 | 対象商品(※4) の手数料支払い |
手数料の1.0%(※5) のポイント付与 |
投信残高 (投信残高ポイント) |
対象となる投資信託 (6銘柄※6)を保有 |
月間平均保有金額に対して ポイント付与(※6) |
投信残高 (投資信託 資産形成ポイント) |
毎月末時点の投資信託残高が 2022年4月以降にはじめて 一定金額に到達 |
到達した金額に応じて 所定のポイント (10〜500ポイント)付与 ※各基準1回のみ |
各種取引 | 楽天銀行口座開設、 マネーブリッジ申込み、 楽天銀行ハッピープログラム にエントリーの上、 各種取引を行う |
手数料の支払いなどに 応じて楽天ポイント付与、 取引件数に応じてATM手数料や 振込手数料を優遇 |
また、楽天銀行との口座連携サービス「マネーブリッジ」の利用で、普通預金金利が年0.18%にアップする(※税引前。通常年0.10%、残高300万円超の部分は年0.12%)。
口座の乗り換えによって、これらの恩恵が少なくなったり受けられなくなったりするおそれがある。
SBI証券にはVポイント経済圏や住信SBIネット銀行、SBI新生銀行との口座連携サービスなどのメリットがあります。
移管や乗り換えは、自分にとって楽天証券とSBI証券のどちらのメリットのほうが大きいのか、利用しやすいのかを踏まえて判断しましょう。
竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
カードの年間利用額や購入する銘柄によってはクレカ投信積立のポイントが減る
楽天証券とSBI証券では、投資信託の積立投資にクレジットカード決済を利用できる。クレカ投信積立のメリットは、決済額に応じてポイントが付与される点だ。
ポイント付与率はカードの種類によって異なり、楽天証券では購入する銘柄、SBI証券では対象カードの年間利用額によっても差がつけられている。
楽天証券とSBI証券のクレカ投信積立におけるポイント付与率は、下表のように設定されている。例えばゴールドカードの場合、付与率は楽天証券が1.0%、SBI証券が0〜1.0%だ。
カード種類 | ポイント付与率 | 年会費(税込) |
---|---|---|
楽天ブラックカード (※1) |
2.0% | 3万3,000円 |
楽天プレミアムカード | 1.0% | 1万1,000円 |
楽天ゴールドカード | 0.75% (※2) |
2,200円 |
楽天カード | 0.5% (※2) |
永年無料 |
カード種類 | 年間利用額 (※1) |
ポイント 付与率 |
年会費 (税込) |
---|---|---|---|
・三井住友カード プラチナプリファード ・Olive プラチナプリファード |
500万円以上 | 3.0% | 3万3,000円 (※2) |
300万円以上 | 2.0% | ||
300万円未満 | 1.0% | ||
・三井住友カード ゴールド(NL) ・Olive ゴールド |
100万円以上 | 1.0% | 5,500円 (※3) |
10万円以上 | 0.5% | ||
10万円未満 | 0.0% | ||
・三井住友カード(NL) ・Olive 一般 |
10万円以上 | 0.5% | 永年無料 |
10万円未満 | 0.0% |
年会費無料の一般カードを使って月10万円のクレカ投信積立を行った場合に付与されるポイント数を比較してみよう。
カード種類 | 年間カード 利用額 |
代行手数料 (年率・税込) |
ポイント 付与率 |
年間付与 ポイント |
---|---|---|---|---|
楽天カード (楽天証券) |
条件なし | 0.4%未満 | 0.5% | 6,000 |
0.4%以上 | 1.0% | 12,000 | ||
三井住友カード (NL)(SBI証券) |
10万円未満 | 条件なし | 0.0% | 0 |
10万円以上 | 0.5% | 6,000 |
この条件では、年間カード利用額が10万円以上かつ、購入する投資信託の代行手数料が年率0.4%(税込)未満の場合に、楽天証券とSBI証券のポイント付与率が並ぶ。
年間カード利用額が10万円未満、または購入する投資信託の代行手数料が年率0.4%以上の場合、楽天証券(楽天カード)のほうが有利になる。
代行手数料が年率0.4%以上の投資信託には、ひふみプラス(レオス・キャピタルワークス)、フィデリティ・米国優良株・ファンド(フィデリティ投信)などがある(参考:1%~2%ポイント還元対象ファンド一覧|楽天証券)。
移管手続きに時間がかかる
移管する商品が長期保有が前提の場合は、あまり手続きの時間を気にする必要はないだろう。
短期で売却予定の商品であれば楽天証券で売却し、売却代金をSBI証券に移したほうが手間もかからない。
楽天証券からSBI証券に移管するメリット
OliveなどVポイントの恩恵を受けられる
Vポイント(三井住友)経済圏とは、三井住友カードや三井住友銀行など、三井住友グループのサービスを利用してVポイントを貯め、貯めたポイントを支払いや投資などに活用するサイクルのことだ。
例えば、SBI証券のポイントアッププログラムでは、次の条件を満たした場合、対象のコンビニや飲食店で三井住友カードを利用したときのVポイント付与率が最大2%アップする。
当月のVポイント投資で合計1万ポイント以上利用 | +1.0% |
当月末のNISA口座における投資信託の保有資産評価額が200万円以上 (※1) |
+0.5% |
当月末のNISA口座における投資信託の保有資産評価額が100万円以上 ※Oliveフレキシブルペイ登録が必要(※1) |
+0.5% |
Vポイントアッププログラムでは、SBI証券のほか、次のようなサービスの利用でポイント付与率がアップする。
対象サービス | 還元率 | 達成条件 |
---|---|---|
アプリログイン | +1.0% | Oliveアカウントを保有 +三井住友銀行アプリもしくは Vpassアプリへ月1回以上ログイン |
選べる特典 | +1.0% (※1) |
Oliveアカウントの選べる特典で 「Vポイントアッププログラム+1%」を選択 |
住友生命 | 最大 +2.0% |
「Vitalityスマートfor Vポイント」に加入のうえ、 Vitality健康プログラムを実施 (Vitalityステータスに応じてポイントアップ) |
三井住友銀行 (外貨預金) |
最大 +2.0% |
Oliveアカウントを保有 +三井住友銀行で外貨取引を実施 |
三井住友銀行 (住宅ローン) |
+1.0% | Oliveアカウントを保有 +三井住友銀行で住宅ローン取引を実施 |
SMBCモビット | 最大 +1.0% |
カードローンの返済方法をOliveアカウント契約口座での 引き落としに設定し、利用 |
Vポイント(三井住友)経済圏の目玉ともいえるのが、銀行や決済に加え、証券、保険などの金融サービスを1つのアプリにまとめて管理、利用できるモバイル総合金融サービス「Olive(オリーブ)」だ。
Olive契約者には各種手数料の優遇や、Oliveフレキシブルペイのポイント還元率アップなどの特典が用意されている。
還元率は通常0.5%だが、条件を満たすことで、対象のコンビニや飲食店では最大で20%までアップ(※)する。
※1 商業施設内の店舗など、一部ポイント加算の対象とならない店舗があります。
※2 ポイント還元率の合算は、複数のVポイントアッププログラムの条件を達成した場合、20%を超える事がございますが、景品表示法の定めに基づき、実際にポイントアップされる還元率の上限は20%までとなります。
最大20%のポイント還元を受けられるのは、次のようなお店だ。
※1 タイエー、ハマナスクラブ、ハセガワストアも対象です。
※2 生活彩家も対象です。
※3 ナチュラルローソン、ローソンストア100、ローソンスリーエフも対象です。
※4 モスバーガー&カフェも対象です。
※5 ステーキガスト、から好し、むさしの森珈琲、藍屋、グラッチェガーデンズ、魚屋路、chawan、La Ohana、とんから亭、ゆめあん食堂、桃菜、八郎そば、三〇三も対象です。その他のすかいらーくグループ飲食店は、当サービスの対象となりません。
これらの店舗をよく利用する方は、Vポイント(三井住友)経済圏の恩恵を受けやすいといえる。
口座連携サービスの利用により普通預金金利がアップする
SBI新生銀行との口座連携サービス「SBI新生コネクト」を利用する場合は、普通預金金利が年0.30%(税引前、通常年0.11%)になる。
出典:住信SBIネット銀行、SBI新生銀行
楽天証券と楽天銀行の口座連携サービス「マネーブリッジ」の普通預金金利は年0.18%(300万円超の部分は年0.12%)なので、SBI新生コネクトを利用する場合は、適用金利が上がることになる。
一方、住信SBIネット銀行との口座連携サービス「SBIハイブリッド預金」を利用する場合、普通預金金利は年0.11%(税引前、通常年0.10%)なので、楽天証券のマネーブリッジよりも適用金利が下がってしまう。
しかしその差は0.01%〜0.07%なので、住信SBIネット銀行のメリットを考えれば許容できる範囲といえるだろう。
下表は住信SBIネット銀行と楽天銀行の無料特典やサービスを比較したものだ。
住信SBIネット銀行 | 楽天銀行 | |
---|---|---|
ATM利用手数料 無料回数 |
月2回〜最大20回 | 月0回〜最大7回 |
他の金融機関宛振込 手数料無料回数 |
月1回〜最大20回 | 月0回〜最大3回 |
サービス利用特典 | サービス利用状況に応じて スマプロポイント付与 (1ポイント1円相当) |
サービスの利用状況に応じて 楽天ポイント付与 (1ポイント1円相当) |
目的別口座 | 10口座まで作成可能 | なし |
口座連携サービス | SBIハイブリッド預金 | マネーブリッジ |
米ドル為替手数料 (片道) |
6銭 | 25銭 |
ATMの利用手数料や他の金融機関宛の振込手数料の無料回数は、両行とも条件のクリア状況によって変わるが、条件は住信SBIネット証券のほうが比較的緩く、無料回数も多くなるケースが多い。
例えば、住信SBIネット銀行ではスマホアプリにログインして、スマート認証NEOに登録するだけで、ATM利用手数料と他の金融機関宛振込手数料がそれぞれ月5回まで無料になる。
一方、楽天銀行でATM利用手数料が月5回無料になるには、25日時点の残高が100万円以上または取引20件以上の条件を満たさなければならない。
他の金融機関宛振込手数料は、残高300万円以上または取引30件以上の条件を満たしても、無料回数は月3回が上限だ。
住信SBIネット銀行には、スマホひとつでATM入出金ができる「アプリでATM」というサービスもあります。
このサービスを使えば時間帯や回数の制限なく、手数料無料でコンビニATMからお金を引き出せるため、キャッシュカードを持ち歩かなくて済むのも魅力です。
竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
投資信託の保有残高に応じてもらえるポイントが増える
楽天証券にも同じような特典(投信残高ポイントプログラム)があるが、対象が6銘柄と少なく、ポイント付与率もSBI証券より低めだ。
投資信託の保有残高に応じて付与されるポイントの比較
月間平均 保有金額 (合計) |
対象銘柄 | ポイント付与率 (年率) |
100万円保有時の 付与ポイント数 (月間) |
---|---|---|---|
1,000万円未満 | 通常銘柄 | 0.10% | 84ポイント |
SBIプレミアムセレクト銘柄 | 0.15% | 127ポイント | |
その他指定銘柄 | 0.01〜0.10% | 8〜84ポイント | |
1,000万円以上 | 通常銘柄 | 0.20% | 169ポイント |
SBIプレミアムセレクト銘柄 | 0.25% | 212ポイント | |
その他指定銘柄 | 0.01〜0.19% | 8〜161ポイント |
対象銘柄 | ポイント付与率 (年率) |
100万円保有時の 付与ポイント数 (月間) |
---|---|---|
楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド | 0.017% | 14ポイント |
楽天・プラス・S&P500インデックス・ファンド | 0.028% | 23ポイント |
楽天・プラス・先進国株式(除く日本)インデックス・ファンド | 0.033% | 28ポイント |
楽天・プラス・日経225インデックス・ファンド | 0.053% | 45ポイント |
楽天・プラス・NASDAQ-100インデックス・ファンド | 0.050% | 42ポイント |
楽天・プラス・SOXインデックス・ファンド | 0.050% | 42ポイント |
楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンドは、全世界の株式を投資対象として、「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(円換算ベース)」に連動する運用成果を目指すファンドだ。
これと同じインデックスに連動するファンドに、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)、いわゆる「オルカン」がある。
オルカンに対する投信マーレージサービスのポイント付与率は、年率0.0175%だ。
これに対し、楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンドのポイント付与率は年率0.017%であり、僅差だがSBI証券が上回っている。
SBI証券のポイント付与率の設定は、競合する楽天証券を意識したものといえるでしょう。
竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
投資できる商品の選択肢が広がる
下表はSBI証券と楽天証券の主な取扱商品を比較したものだ。
SBI証券 | 楽天証券 | |
---|---|---|
国内株式 取扱市場 |
東証・名証・福証・札証 | 東証・名証 |
単元未満株 取扱銘柄数 |
◯ S株 (東証約3,900銘柄) |
◯ かぶミニ (東証約2,000銘柄※1) |
IPO(新規公開株式) ※2023年取扱実績 |
◯ 91社 (主幹事:18社) |
◯ 59社 (主幹事:0社) |
投資信託 取扱銘柄総数 |
2,553本 | 2,574本 |
投資信託 NISAつみたて投資枠 対象銘柄数 |
250本 | 241本 |
外国株式 取扱国数 |
9ヵ国 ※2 |
6ヵ国 ※3 |
米国株式 取扱銘柄数(現物) |
5,196銘柄 | 4,687銘柄 |
例えば楽天証券では、福岡証券取引所(福証)や札幌証券取引所(札証)に単独で上場している株式に投資できない。
福証上場銘柄には、ファミレスチェーン「ジョイフル(9942)」、札証上場銘柄には、コンビニジム「チョコザップ」で再び注目を集める「RIZAPグループ(2928)」などがある。
SBI証券で口座を開設すれば、このような銘柄にも投資できるようになる。
また、IPO(新規公開株式)の取扱実績もSBI証券のほうが多い。主幹事を務めることも多いため、SBI証券なら当選確率がアップするだろう。
中国株式の上海A株や一部の投資信託など、楽天証券で取り扱いがあってSBI証券では取り扱っていない商品もあります。自身が投資したい商品を取り扱っているかは事前に確認しておきましょう。
竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
投資で貯まるポイントの選択肢が広がる
楽天証券で貯まるポイントは、楽天ポイントまたは楽天証券ポイントのいずれかだ。
それに対し、SBI証券ではVポイント、Pontaポイント、dポイント、JALマイル、PayPayポイントの中から好きなポイントを選んで貯められる(クレカ投信積立で貯まるポイントはVポイントのみ)。
投資信託の移管手数料は実質無料
楽天証券から投資信託を移管するときには、1銘柄あたり3,300円(税込)の出庫手数料がかかる。
しかしSBI証券で投信お引越しプログラムに登録すれば、移管元の楽天証券に支払った出庫手数料が全額キャッシュバックされるため、手数料は実質無料になる。
よくある質問
国内株式の場合はWEBサイトから申請し、オンラインで手続きが完結する。
外国株式(米国株式、中国株式)の場合は、WEBサイトから外国証券移管依頼書を請求し、必要事項を記入して楽天証券へ返送する。
投資信託の場合はWEBサイトから投信口座振替依頼書をダウンロードして印刷し、必要事項を記入して楽天証券へ郵送する。
個人向け国債の場合は、カスタマーセンターに連絡し、書面で手続きを行う。
WEBサイトからSBI証券の口座を開設するには、「ネットで口座開設」と「郵送で口座開設」の2つの方法があるが、ネットで行ったほうが早くて便利だ。
投資信託の場合は、楽天証券で1銘柄あたり3,300円(税込)の出庫手数料がかかる。ただし、移管後にSBI証券に申請して「投信お引越しプログラム」の適用を受けると、楽天証券に支払った手数料全額がキャッシュバックされるため、実質無料だ。
・国内株式(同一名義間の出庫)……無料
・国内株式(相続手続きを除く異名義間の出庫)……1銘柄につき2,200円(税込)(受贈者1人あたりの上限は1万1,000円(税込))
・外国株式(同一名義間の出庫※1)……無料
・投資信託(出庫)……1銘柄につき3,300円(税込)
・外貨建債券(同一名義間の出庫)……無料
・外貨建債券(相続手続きを除く異名義間の出庫)……1銘柄につき2,200円(税込)(受贈者1人あたりの上限は1万1,000円(税込))
・円貨建債券などその他有価証券(同一名義間の出庫)……無料
・円貨建債券などその他有価証券(相続手続きを除く異名義間の出庫)……1銘柄につき1,100円(税込)
※1:外国株式の他社移管は同一名義間のみ可能
乗り換え前の金融機関のNISA口座で保有している商品は、売却するか、課税口座へ払い出すか、非課税期間が終了するか(旧NISA口座の場合)のいずれかのときまで、そのまま非課税で保有できる。
旧つみたてNISAには20年の非課税期間があり、口座内の商品は売却するか、非課税期間が終了するまで非課税で保有できる。
楽天経済圏の恩恵を受けられる楽天証券、高性能な分析ツールが利用できるマネックス証券など、それぞれに強みがあるため、3社で口座を開設して併用しても良いだろう。
より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、家計改善や住宅購入、資産形成、相続など、お金に関するコンサルティング、大手金融機関や各種メディアでの執筆・監修を行う。RAPPORT Consulting Office代表。
■保有資格
1級ファイナンシャルプランニング技能士
CFP®︎
一種証券外務員
サウナ・スパプロフェッショナル