外貨預金や外貨建て投資信託、海外不動産投資……。「海外投資」にはさまざまな方法があり、抱えるリスクも異なる。リスクを抱えてもリターンを求めて海外投資を始めるべきなのか。海外投資の方法ごとにメリットやデメリット、リスクを紹介する。

一般的な海外投資の一つである「外貨預金」、銀行や外貨によって金利に差

海外投資で一般的な方法の一つが「外貨預金」だ。日本国内にある銀行や外国銀行の日本拠点などで口座を開設し、ドルやユーロ、オーストラリアドル、英ポンド、ニュージーランドドル、人民元などの外国通貨で預金する。日本よりも金利が高い外貨を預金しておいた場合は多くの利息を得られるが、預金していた外貨を日本円に換金した場合、為替変動によって結果的に損することもある。

金利は各銀行によって異なるが、預け入れ期間や預け入れ額、円から預け入れをしたときと外貨から預け入れしたときなどの条件によっても違いが出てくる。詳しくは各金融機関のホームページなどに紹介されているので、金利の割合を比較しながら利用する銀行を検討するのが一般的だ。また日本円を引き出す場合と異なり、外貨を日本円に交換して引き出す場合には為替手数料が掛かる。

注意が必要なのは、日本円の預金は金融機関が破綻したときに預金の一定額を保護する預金保険制度の対象となるが、外貨預金の場合は対象外となる点だ。外貨預金の利息は「利子所得」、為替レートの変動による利益分は「雑所得」とされ、その所得に対して税金が掛かることも覚えておきたい。

外貨預金にも金利がよく、換金ペナルティも付かない「外貨MMF」

MMFとは「Money Market Fund」の略語である。「外貨MMF」とは米ドルやユーロなどの外貨で海外の国債や社債などの公社債を運用する投資信託の仕組みを指す。外貨預金との違いはいくつかあるが、外貨預金よりも金利がよい場合が多いほか、いつ換金してもペナルティが付かずに日本円に換金できることだ。また一般的に申し込みの際の手数料が無料のほか、外貨預金と比べると為替手数料も安く抑えられているのが主流となっている。

楽天証券やマネックス証券、SBI証券、カブドットコム証券、SMBC日興証券などの証券会が外貨MMFを取り扱っており、証券会社や外貨によって金利が異なる。利回りの高いペアだと利回りが10%を超えるケースもある。証券会社によって最低購入金額は異なるが、1000円前後から投資をできることが多い。そのため、少額投資に向いている海外投資方法の一つだといえるだろう。

また、金融機関が破綻した場合、一定額の預金等は預金保護制度の対象となるが、外貨預金は対象外だと説明した。だが、外貨MMFの場合は証券会社の資産と外貨MMFの資金は分けて管理されているので、証券会社の倒産により投資資金がなくなるわけではない。ただ、外貨預金と同様に為替変動のリスクはある。外貨MMFの場合は売却(解約)したときに為替の影響により得られる利益(為替差益)は「譲渡所得」とされて、こちらも税金が課される。

発行者・発行場所・通貨のいずれかが海外である「外国債」の取引

「外国債(外債)」も海外投資の一種として捉えられる。外国債とは海外の債券のことで、「発行者」「発行場所」「通貨」のいずれかが海外であればそう呼ばれ、海外の国や金融機関、世界銀行(国際復興開発銀行)などが発行する。日本以外に拠点を置く海外の企業や国際的な組織・機関などが日本で発行する債券も外国債に含まれる。外国債は、まず証券会社で外国証券取引口座を開設し、取引をスタートする。

例えば楽天証券の外国債券のページを開いてみると、魅力とメリットとして「多彩な銘柄ラインナップ」「世界の高金利を享受できる」「外貨決済サービス」の3つが挙げられている。商品例として、金利が高い通貨の一つである南アフリカのランド建て債券やロシアのルーブル建て債券、トルコのリラ建て債券などが紹介されている。また、日本の金利が海外の各国に比べると依然として低水準であることが説明され、外国債投資が資産増加に有効な手段の一つであることも説明されている。

外国債券は、そもそもの債券価格や金利水準の変動による影響を受ける。また、債券の発行者が責務を返済できない状態に陥った場合は、利子が支払われなくなったり、遅れたりするケースもある。これは外国債の大きなリスクの一つとされる。為替相場の変動の影響も受ける。外国債の取引で生じた利益は「事業所得」として、外貨預金や外貨MMFと同様に税金が課される。

海外の優良企業やエマージング市場の企業にも投資できる「外国株式」

証券会社で外国証券取引口座を開設することで扱えるようになるのが、海外の企業が発行した「外国株式」だ。こちらも一般的な海外投資手段の一つとして数えられる。世界的なブランドを有する海外の優良企業に投資することができ、世界市場の成長と連動した恩恵を受けられる可能性を秘めている。また「エマージングマーケット」と呼ばれる成長著しい新興国に拠点をもつ海外企業が発行した株式を購入できることも魅力の一つだ。

また外国株式に投資するメリットは外貨預金にも共通することだが、リスク分散という点も挙げられる。例えば日本国内の株式だけに投資していた場合は、日本経済の動向によって全体的には一方向の動きに偏るが、いくつかの海外株式に投資することでその偏りのリスクが分散される。このような投資リスクを分散するために海外の外国株式への投資を積極的に行っている個人投資家も多い。

外国株式で得た配当は「外国税額控除」が適用される。例えばアメリカ株での配当はアメリカでの課税となり、イギリス株の配当はイギリスでの課税となる。一方で、株を売却した場合に得た利益は「申告分離課税」として扱われる。申告分離課税とは、その所得の税額を他の所得と一緒にせずに分離計算して税額を算出し、確定申告でその算出された税額を納める制度のことをいう。

海外の国の法律や規則において設立・運用される「外国籍投資信託」

外国籍投資信託も海外投資の一種だ。外国籍投資信託とは、海外の国の法律や規則において設立・運用されている投資信託のことを指す。この外国籍投資信託は、海外の国の投資信託であった場合でも日本国内で販売するには日本の金融庁に登録をしなければならない。外貨MMFも外国籍投資信託の一種となる。

外国籍投資信託は投資に対する課税が低い海外の国で組成されることが多い。アメリカやアイルランド、ルクセンブルクなどだ。

例えば、野村證券の外国投資信託ページでは2018年4月現在、海外の約240種類の外国籍投資信託がラインアップされており、通貨もさまざまだ。野村證券のケースでは、購入時手数料(換金時手数料)が最大5.4%で、ほかに掛かる費用は信託財産留保額として最大2.0%を購入側が負担しなければならないケースもあるとしている。

国内ETFに比べて資産規模や銘柄数も多い外国ETF

ETFとは「Exchange Traded Fund」の略語で、日本語では上場投資信託という意味になる。つまり外国ETFとは「外国上場投資信託」のことを指す。この外国上場投資信託はその名前の通り、海外にある取引所で上場している。

一般的に国内ETFに比べて外国ETFの方が規模は大きく、取り扱い銘柄も多い。そのため海外投資の選択肢の中でも人気の投資方法となっているが、売買手数料は日本国内のETFよりも高い場合が多い。リスクもある。例えば外国株式の株価変動リスクや為替リスクなどだ。ETFによって収益が上がっていたとしても、日本円に換金するときにレートが悪いと、損失を計上してしまうこともある。

海外ETFの配当による利益は海外での課税という形になる。売却益は「譲渡所得」に分類され、海外株式投資の場合と同様に「申告分離課税」が適用される。

ハイリスク・ハイリターンの先物取引である「外国為替証拠金取引(FX)」

ハイリスク・ハイリターンとも称される先物取引の一種である「外国為替証拠金取引(FX)」は、少額の証拠金によって数倍、数十倍もの取引をすることができる。外国の通貨を預金して売却益を狙う外貨預金よりも一般的に外貨の購入レートと売却レートの差が小さい。そのため変動幅が小さくても利益を得ることができるという特徴もある。

FX取引の一番のリスクが、レバレッジリスクだ。少額の預け入れ証拠金で大きな金額の外貨取引ができるものの、想定外の為替変動などに直面した場合は損失額も大きくなる可能性がある。そのため海外投資の方法として外国為替証拠金取引を選ぶことに慎重になる人もいるようだ。

外国為替証拠金取引を巡るトラブル事例は後を絶たないが、独立行政法人国民生活センターへ寄せられる外国為替証拠金取引に関する相談件数は年々減少傾向にある。

新興国での期待値は高いがカントリーリスクを含む「外国不動産投資」

日本国内の不動産市場が成熟するにつれて、海外の不動産投資への関心は国内でも高まってきている。アジアの新興国や発展途上国の中には高い経済成長を続け、不動産価格や物価の上昇が顕著な国も多く、家賃収入や売却益を狙って海外投資の方法として海外不動産投資を始めようと考える人も多い。

ただ海外不動産投資には複数のリスクがある。ほかの海外投資と同様に為替リスクなどは付きまとうが、「カントリーリスク」は見過ごせない。外国人の不動産投資に対し、その国の規制の枠組みが変わることで、最悪のケースでは購入した不動産を政府に没収されることもあり得る。また、そもそも外国人が不動産を購入することがほぼできない国もある。

そのため、これまで挙げてきた他の海外投資の方法に比べて難易度が高い。現地視察なども必須となり、長期的に考えて利益を上げることができるのか慎重に検討することが必要だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/ZUU online
 

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