信用取引で「配当金」は受け取れる?支払う?

2018.9.13
INVESTMENT
(写真=PIXTA)
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信用取引は保証金による信用を基に、資金や株券を借りて行う取引である。では信用取引で買い建て、あるいは売り建てしている銘柄の配当金はどうなるのであろうか。その銘柄を取引してはいるものの、資金や株券を借りている状態での取引であり、配当に関わる権利関係の理解は難しいところだろう。信用取引における権利処理について、配当を中心に説明していこう。

信用取引における株式の所有者は誰?

信用取引に関する権利処理を考えるにあたっては、取引を行う株式の所有者が誰であるかを考える必要がある。信用取引での権利関係の理解においては、信用取引で株を買っている「買い建て」の状態と、株を売っている「売り建て」の状態で考え方が異なる為、それぞれに分けて見ていく視点が重要だ。

まず信用取引で株を買い建てている場合である。信用取引で株を買い建てる事は、資金を借りて株を購入している事を意味する。株式を買い建てて保有しているものの、その株式は資金の出し手である証券会社の担保となり、所有者も証券会社となる。

一方で、信用取引で株を売り建てている場合はどうであろう。信用取引での売り建てとは、株式を借り、その株を売る事を指す。株式は証券会社から借りたものであり、こちらも株式の所有者は証券会社である。

信用取引は保証金を差し入れる事で手元資金以上の金額での取引を行う事ができる。ただし、あくまでも証券会社から借りた資金や株式を基にした取引であり、その株式の所有者では無い点をまずは理解したい。

信用取引では“配当金”は受け取る事が出来ない

信用取引において、取引者は株式の所有者、つまり株主では無い為、株主に関わる権利を享受する事は出来ない。

これは株主の権利の代表格である配当についても同様である。信用取引で買い建てや売り建てを行っている株式の所有者は証券会社である為、取引を行う人は「配当金」を受け取る権利が無いのである。

ただ、次に説明を行うが、信用取引では配当金を受け取る事の出来ないという点が取引に影響を及ぼさないように、別のルールが設けられている。その為に、配当金を受け取れると誤認するケースもある。厳密な「配当金」については、株主では無い為受け取れないという点をまずは理解しておきたい。

配当落ちと信用取引

信用取引では、配当金を受け取る事が出来ない。ただ、配当金を受け取れない事は、信用取引の損益に大きな影響を及ぼす可能性がある。

それは、配当落ちの影響である。配当落ちとは、配当の権利確定日の翌営業日に、理論上、株価が配当額分調整される事を指す。配当の権利がある株価と、権利が無くなった翌営業日の株価の整合性を保つ為の理論上の調整である。

配当落ちとなった場合、理論上株価は配当額分下がる事となるが、配当を受け取る権利の無い信用取引では、この調整が損益に影響を及ぼすのである。買い建玉の場合、株価は配当額分下がるものの、配当を受け取れ無い為、マイナスに作用する。一方で、売り建玉の場合には、配当額分株価が下がればプラスに作用する事となる。

このように、配当落ちによる株価の調整は、信用取引の損益に影響を及ぼし得る。そうした事態を避ける為に設けられているのが、「配当落調整金」だ。

信用取引では配当に代わって、「配当落調整金」の受渡しが行われる

信用取引において、配当落ちによる買い建玉のマイナスと売り建玉のプラスを調整する仕組みが「配当落調整金」である。

配当落調整金は配当とは異なるが、信用取引において配当の代わりの役割を担うものとなる。信用取引では、配当金を受け取る事は出来ないが、配当落調整金の受渡しが行われるという点を理解しておきたい。

配当落調整金の取り扱いは、買い建ての場合と売り建ての場合で異なる。また、制度信用取引と一般信用取引による違いもある為、それぞれ説明していこう。

買い建て時は配当落調整金を受け取る事ができる

まずは買い建ての場合である。権利付最終日の大引けまで買い建玉を保有している場合、配当落ちによるマイナスを調整する為、配当落調整金を受け取る事が可能である。

受け取る事のできる金額は制度信用取引、一般信用取引共に、配当金の額から所得税の源泉徴収相当額を差し引いた金額である。など所得税の源泉徴収に関わる税率は2037年までは15.315%となっている。

さて、買い建て時に受け取る事のできる配当落調整金であるが、次の2点に注意したい。1つ目は受け取った配当落調整金は配当所得では無く、譲渡所得とみなされる点である。2つ目は配当額から差し引かれるのは源泉徴収の相当額であり、実際に源泉徴収をされているわけでは無いという点である。つまり、配当落調整金を受け取る場合、譲渡所得として課税対象となる。他の譲渡損との損益通算も可能であり、自身で申告が必要な一般口座で取引を行う場合などは、特に注意しておきたい。

売り建て時は反対に配当落調整金を支払う事となる

次に売り建ての場合である。権利付最終日の大引けまで売り建玉を保有している場合には、配当落調整金を支払う必要が生じる。売り建て時には、配当落ちによる株価の下落がプラスに働く為である。

支払うべき配当落調整金であるが、制度信用取引の場合には、配当金の額から所得税の源泉徴収相当額を差し引いた金額となる。一方で、一般信用取引においては、配当金の同額を支払う必要がある。売り建て時に支払う配当落調整金については、譲渡損とみなされる点も重要だ。他に譲渡益などがある場合には、損益通算ができるので、申告を行う場合には忘れないように心掛けよう。

配当落調整金の受渡しはいつ行われる?

信用取引では配当落調整金の受け取りや支払いを行う事となるが、その受渡しはいつ行われるのであろうか。

これは、一般の株主が配当を受け取るタイミングと同じである。通常、決算から数ヵ月後に行われる株主総会で決算が承認された後、1~2週間程度で配当が支払われる事となる。配当落調整金の受渡しには、権利付最終日から数ヵ月掛かると認識しておこう。

もちろん、配当落調整金の受渡し前に買い建玉や売り建玉を決済してしまった場合においても、配当落調整金の受渡しは必要である。買い建ての場合には、配当落調整金が支払われるのを待つだけとなるが、売り建ての場合では、決済後に配当落調整金の支払いが必要となる。権利付最終売買日から配当落調整金の受渡しまで数ヵ月掛かるので、売り建て時には忘れずに必要金額を口座に残しておく必要がある。

信用取引における権利処理とは?

信用取引では、その株式の所有者は証券会社となる為、基本的に株式に関する権利は発生しない。ただ、制度信用取引においては、信用取引を行う投資家の不利益が生じないよう、次の条件を満たす場合においては権利処理を行うとなる。
  • 株主であれば当然享受できるであろう利益が生ずること。
  • 権利落ち時点で金銭的に評価できるものであること。
  • 譲渡可能なものであること。
  • 売買単位に比して平均的比例的に利益が受けられるものであること。
これまで説明を行ってきた配当に関しては、株主が当然享受できるであろう利益であり、金銭的な評価も可能である点などを踏まえ、権利処理の方法として、配当落調整額が定められているのである。

言い換えれば、買い建て時においての配当は当然享受するべき利益となる為、権利者となる証券会社に支払われる配当金の相当額を配当落調整金として受け取る権利を有する事となっている。一方で売り建て時においては、株を売り建ててしまう事によって、株の貸し手となる証券会社が本来受け取るべきであった配当金を受け取れない事となる為、配当落調整金を証券会社へ支払う必要が生じるのである。

信用取引で株主優待は受け取れない

さて、信用取引での配当に関する取り扱いと権利処理の考え方を説明してきたが、ここでその他の権利処理についても簡単に触れておきたい。

まずは株主優待であるが、こちらは権利処理が行われない。信用取引における株式の所有者は証券会社となる為、直接受け取る事はもちろん出来ないが、権利処理もなされないのである。これは先程の権利処理における条件において、金銭的評価が難しい事などは背景にある。

株式優待と同様、議決権や株主提案権などについても、信用取引では権利処理が行われない。これらは金銭的な評価が困難である事に加え、株価への直接の影響も限られている為である。

一方で、株式分割や会社分割、新株予約権の付与については権利処理が行われ、買い建て時、売り建て時の不公平を無くすような調整が行われる事となる。これらは株主が当然享受すべき権利であり、金銭的な評価も可能である。

なおこれら権利処理についての説明は制度信用取引の場合のものとなっている。一般信用取引の権利処理については、基本的に証券会社毎に定める事となっている為、各社の規約を確認しておく必要があろう。

信用取引での配当の取扱いは、背景の理解が重要に

信用取引における配当の取り扱いは非常に重要である。特に、信用取引での買い建玉や売り建玉は証券会社のものであるという点を理解しておく必要があろう。

配当は投資における重要な役割を果たし、配当落ちでの理論上の株価の下落も起こり得る為、権利処理がなされる事となる。

「買い建て時には配当は受け取れないが、配当落調整金は受け取れる」という言葉を覚えるのでは無く、その背景にある理由を理解すれば、イメージも湧くのでは無いだろうか。信用取引を行う上で、配当落調整金は決して避けては通れない道と言える。ただ、信用取引の制度や権利についての概念を適切に理解すれば、難しい話では無くなるだろう。

文・ZUU online編集部
 

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