個人型確定拠出年金では資産運用の際に掛金と手数料を支払うことになる。これらは制度を利用する限り、避けては通れない。だからこそ一体どのようなタイミングでいくら払うのか、金額は変更できるのかなど、そのポイントについて知っておくことが重要だ。

疑問1 個人型確定拠出年金における掛金と手数料とは?

個人型確定拠出年金の利用するためには、一定の手順に沿って手続きを進めていかなければならない。新規で加入するなら、まずは個人型確定拠出を扱っている金融機関に関連資料を請求する。資料を取り寄せたら必要書類に諸々の事項を記入のうえ返送し、審査を受け、問題がなければその旨を記した通知書などが届く。

加入が確定すれば、以後は自身が設定したお金を積み立て、自らが選んだ方法でそれを運用する。この積み立てていくお金が掛金だ。さらに加入以降は折に触れて手数料の支払いを求められる。こちらは手続きなど、制度運営に関わる組織の業務に対して支払うお金である。

将来受け取る年金の原資は、運用で得た利益と掛金総額の合計となる。給付が受け取れるようになるのは原則60歳以降であり、その前に資産を引き出すことは通常できない。つまり利用者は長期間にわたり、掛金と手数料を負担し続けることになる。

疑問2 掛金と手数料の支払いに関係する組織って?

個人型確定拠出年金の利用には、掛金と手数料が必要だ。そのお金は運用にあたって利用者が関係することになる複数の組織に適宜支払っていく。主な組織は国民年金基金連合会と、金融機関などの運営管理機関、事務委託先金融機関の3つである。

国民年金基金連合会は規約の作成や加入時の審査、掛金の収納管理などを行い、運営管理機関と事務委託先金融機関は、ともに連合会から委託を受ける形でより実務的な業務を行う。

運営管理機関は運用商品の選定、提示、情報提供などを行う運用関連運営管理機関、口座情報記録の管理などを行う記録関連運営管理機関に分かれる。事務委託先金融機関は、積立金の管理や給付金の支払いなどを担当する組織である。

掛金は国民年金基金連合会に支払い、運用の指図は運営管理機関にする。そしてそれらの組織を介して事務委託先機関が商品の購入、給付金の支払いなどを行うという仕組みだ。そのため利用者は、自身の運用に関与する国民年金基金連合会、運営管理機関、事務委託先金融機関に対し、状況に応じて手数料を支払うことになる。

ちなみに個人型確定拠出年金を利用する人は、主に2種類に分類される。1つは掛金を支払い、商品を運用する加入者だ。もう1つは掛金を支払うことなく、運用のみ行う運用指図者である。運用指図者は新たに掛金を出せないため、既に積み立てられた資産の運用だけを続けていく。

疑問3 個人型確定拠出年金の掛金の基本ルールとは?

掛金はいつ、どれくらいの額を、どうやって支払うのか。基本的には毎月、上限額以内で設定した金額を、指定した口座から引き落とす形で支払うことになる。ただ支払う時期と掛金額は変えることができ、また上限となる額には人によって幅がある。

まず支払う時期については毎月でなく、1年単位で行うことが可能だ。年に1回以上、加入者が任意に決めた月に、掛金をまとめて支払える。だが掛金の追納ができないという点には注意が必要である。口座の残高不足などの理由である月の掛金を引き落とせなかった場合、翌月以降に遅れての納付はできない。

掛金額は1年、具体的には12月分から翌年11月分の間に、1回のみ変更できる。下限となる金額は一律5,000円で、設定は1,000円単位で行う。

なお掛金の支払いは加入者から運用指図者になることで止められる。運用指図者は追加で掛金を拠出できないからだ。運用指図者になるには、加入者資格を喪失するための所定の手続きを済ませれば良い。以後は追加での掛金の拠出はせず、すでにある資産の運用のみをしていくことになる。

疑問4 掛金の上限額はどれくらい?

掛金の上限額は加入者の立場により異なる。自営業者やフリーランスなど国民年金の第1号被保険者は月額6万8,000円、年額81万6,000円が限度額となる。会社員や公務員といった第2号被保険者の配偶者である第3号被保険者は月額2万3,000円、年額27万6,000円が上限だ。第3号被保険者とは例えば専業主婦といった人々が該当する。

第2号被保険者は、さらに会社員か公務員か、他の年金制度に加入しているかどうかで上限額が変わる。会社に企業年金がない会社員なら月額2万3,000円、年額27万6,000円となり、企業型確定拠出年金や他企業年金に加入している、もしくは公務員であると上限額はより低くなる。

企業型確定拠出年金のみの加入者の上限額は月額2万円、年額24万円である。確定給付企業年金あるいは厚生年金基金のみの加入者、それと合わせて企業型確定拠出年金にも加入している者、公務員などは月額1万2,000円の年額14万4,000円が上限だ。

疑問5 手数料を支払うタイミングとその支払い先は?

手数料の支払いが求められる時は多い。主だったタイミングとしては、個人型確定拠出年金に加入した時、運用している時、年金資産を移換した時、還付される時、給付を受け取る時だ。つまり加入した時から給付を受け取る時まで、随時手数料を支払わなくてはならない。手数料は掛金か年金資産より差し引かれる。

手数料はその時々で関係する機関に対して支払う。一般的には加入時なら国民年金基金連合会、運用時なら連合会と運営管理機関、事務委託先金融機関に対してだ。加入時に関しては、運営管理機関に手数料を支払う場合もある。

年金資産移換の際は、企業型確定拠出年金から個人型に移る時は国民年金基金連合会に手数料を支払わなければならない。個人型から企業型へ、また別の運営管理機関に変更する時はそれまでの運営管理機関に、必要な場合手数料を払う。

還付される時、例えば国民年金保険料が未納であった時、上限額を超えた掛金を拠出した時などは、国民年金基金連合会や事務委託先金融機関などに一定の額を支払う。給付を受ける時は事務委託先金融機関への支払いが求められる。

疑問6 個人型確定拠出年金の手数料はどれくらい?

ではそれぞれのタイミングで払う手数料はどれくらいになるか。2018年5月時点の税込額だと、まず加入時に国民年金基金連合会に支払う手数料は基本的に2,777円である。

運用中は、加入者なら管理手数料という形で、連合会に月額103円支払うのが基本だ。事務委託先金融機関と運営管理機関に支払う額は機関によって異なり、運営管理機関においては0円の場合もある。また投資信託で運用していると、時に別途で商品の信託手数料が発生する。

もし60歳以降年金形式での給付を選択した場合は、その受け取り開始後も運用時にかかる管理手数料が発生する。確定拠出年金では60歳以降、給付の受け取りが可能になってからも資産残高があればその年金資産の運用が可能であり、その資産の維持には引き続き手数料がかかるためだ。

この際、加入者は60歳を過ぎると「加入者」とされる対象から外れるため、運用指図者と立場を変えて運用を続ける。運用指図者は掛金の拠出がないため、国民年金基金連合会に支払う手数料はない。したがって運用指図者による運用時の手数料は、加入者と比べると少なくなる。

とはいえ、結果的には給付時に加え運用時の手数料も支払う必要が生じる。なお給付を受け取る時の手数料は、基本的には1回につき432円である。

移換時においては、企業型から個人型に移る場合、その手数料は新規加入時と同様だ。他方、掛金の還付時、国民年金基金連合会に支払う金額は1,029円である。事務委託先金融機関、さらに運営管理機関へも支払う必要がある時、その金額は機関による。

掛金と手数料の支払例

個人型確定拠出年金に加入した人は、それ以降どれくらいの掛金と手数料を負担することになるだろうか。ここでは個人型確定拠出年金のみ加入の男性会社員A氏が、月2万円を10年間払い続けた場合の掛金と手数料、加えて60歳以降10年間にわたり年金形式で給付を受けた場合の手数料について、2018年5月時点の金額を参考に例示する。

国民年金基金連合会への手数料は103円、そのほか運営管理機関に払う手数料は313円、事務委託先金融機関に払う手数料は64円とする。

掛金は毎月拠出したとして、月2万円なので1年では24万円、10年間では240万円だ。
手数料はまず加入時に2,777円かかり、以後運用にあたっては国民年金基金連合会と運営管理機関、事務委託先金融機関に毎月決まった額を支払う。

この場合、各組織への手数料を合わせると運用時にかかる管理手数料は毎月480円になる。1年では5,760円、10年なら5万7,600円だ。移換や還付がなければ、加入時の2,777円を足して、60歳以前の手数料は合計6万377円となる。割合にして掛金総額240万円の約2.5%に相当する。

給付の受け取り開始以降は、給付と運用にあたって手数料がかかる。給付について、受給は年1回とした場合、給付1回の手数料額を432円とすると、10年で4,320円を支払わなければならない。

そして運用の手数料については掛金拠出がなくなったことで国民年金基金連合会への103円分の負担がなくなる。運営管理機関などへの手数料は60歳以前と同じとすれば、管理手数料1月分の合計額は377円、1年で4,524円だ。

結果、60歳以降の手数料は、運用にかかる手数料で4万5,240円、給付にかかる手数料は4,320円、合わせて4万9,560円となる。

文・MONEY TIMES 編集部

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