IPO(新規公開株)の初値はなぜ9割が公募価格を上回るのか

2019.7.1
INVESTMENT
(写真=moomsabuy/Shutterstock.com)
(写真=moomsabuy/Shutterstock.com)
IPOの初値のニュースは注目度が高い。公募価格を上回るか下回るかで投資家の利益に直接影響するからだ。IPOの初値は高騰することが多く「IPOは儲かる」と言われているが、その理由は一般的な株取引とは違うIPO投資特有の儲けの仕組みにある。

IPO(新規公開株)はなぜ儲かりやすいのか

IPO(新規公開株)とは証券取引所に新たに株式を公開する企業の株のことをいう。IPO投資は個人投資家からの人気が高い。リスクが少なく利益が出やすいと言われているからだ。

株式投資は買値と売値の差額によって損益が決まる。通常の株取引では買値や売値はタイミング次第でいくらになるか分からないが、IPOの場合、買値は企業と証券会社による「公募価格」であらかじめ決められている。公募価格は割安に設定されることが多いため、上場初日に初めて付く売値である「初値」は高騰しやすい。投資で利益を出す大原則である「安く買って高く売る」を実践しやすい仕組みになっているのだ。

初値は過去のデータを見ても高くなりやすいことが分かる。2018年のIPOで初値が公募価格を上回った企業は90社中80社。実に勝率89%である。初値騰落率が100%以上(公募価格の2倍以上)となった新規上場会社が40社も存在するのだ。特に話題になったのは人工知能(AI)ベンチャーのHEROZ(ヒーローズ)だろう。当初より投資家からの期待が高く、公募価格4,500円に対し初値は約10.9倍の4万9,000円が付けられた。100株を初値売却した場合、445万円の利益になる計算だ。

9割勝てる投資があれば誰もが参加したくなるものである。注目度が高いIPO株では注文株式数が発行株式数を大きく上回るため、かなり倍率の高い抽選となるのだ。

IPOにおいて企業はなぜ公募価格を安く設定するのか

経済ニュースなどでは、新規上場銘柄の初値が公募価格を上回ると「成功」として取り上げられている。企業としてはイメージが向上し、主幹事証券会社の評価も上々。公募価格で購入できた投資家は1日にして利益を得ることができる。

実は、これは一つの大きな矛盾をはらんでいる。企業は投資家に株式を購入してもらうことで資金を調達するのだから、株価は高ければ高いほど良い。それは公募価格に関しても同じことだ。しかし現実には公募価格は低めに設定されることが多い。企業側からすると公募価格をもっと高くしてより多くの資金調達ができたはずなのに、あえてしなかったことになる。なぜなのか。考えられる理由は2つだ。
  • 多くの投資家に投資意欲を持たせるため
  • 情報量が少ないリスクに対する“割引”
企業と証券会社としては確実にIPO株を売り切りたいと考えている。すでに上場している同業他社より割安感を出すことで、抽選に参加してでもIPO株を買いたいと思う投資家を増やそうという戦略だ。また、未上場の企業は財務状況や今後の業績については未知数だ。マーケットにおいて情報の少なさはリスクとみなされるので、その分、価格を抑えることで補おうという理由もある。

このように公募価格を低めに設定することを「IPOディスカウント」と呼ぶ。一般的にIPO公募価格は適正価格より20%~30%程度ディスカウントされると言われている。これが、初値との価格差により投資家が利益を得やすい構造である。

IPO投資を成功させるためには「初値売り」が定石

初値が公募価格を上回ることが多いIPO株だが、上場直後の株価は短期的に乱高下しがちである。プロではない個人投資家がこの流れで利益を出すのは非常に難しい。したがって、リスクを避けて確実に利益を出すために、初値がついたらすぐ売却する「初値売り」がIPOの必勝法として知られている。

IPO銘柄を初値で売却する方法には注意が必要だ。大手証券会社では注文は上場当日の朝に限られることが多い。SBI証券なら午前4時、野村証券なら午前6時だ。単独上場ではない場合は注文時間が変わるケースもある。初値で売却する際には基本的に期間指定注文はできない。初値が付かなかった場合は再度注文入力が必要なことも覚えておきたい。

初値売りを逃すと見込んでいた利益を得られないばかりか、短期での損切りや長期でズルズル保有し続ける「塩漬け」を選択せざるを得ない可能性がある。

IPO投資は初値が公募価格を下回る「公募割れ」のリスクも

勝率が高いと述べたIPO投資だが、初値が公募価格を下回る「公募割れ」も10%程度は存在することはおさえておきたい。公募割れで大きなニュースとなったのは2018年12月に新規上場した国内通信大手のソフトバンクだ。

過去最大の資金調達額の期待から話題の尽きなかったソフトバンクだが、ふたを開けて見れば初値は1,463円と公募価格の1,500円を下回り、終値は1,282円と15%下回る低調な出だしとなった。通信障害や中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)問題、政府主導の国内通信料金の値下げ圧力などの悪材料が影響したと思われる。

初値が公募価格割れした銘柄はその後も短期的には低調が続く傾向にある。予想された初値が付かなかったIPO銘柄はソフトバンクだけに限らない。初値売りだけを想定してIPO銘柄を購入してしまうと公募割れした際に投資戦略の見直しを迫られてしまう。短期狙いでも銘柄選びは慎重に行いたい。

文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)
 

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