終身雇用制度の崩壊、将来の年金制度への不安などから、不動産投資への注目度が高まっている。さらに近年のマイナス金利の影響により、金融機関の積極的な融資が見込まれ、不動産投資を行う環境も整っている。

しかし、投資にはリスクがつきものだ。投資を成功させる秘訣は、事前に取り除けるリスクはできるだけ排除し、将来起こり得るリスクにどのようにして対応することを事前に準備することにある。

近年、不動産投資に関して書籍やネットから様々な情報を得ることが出来る。実際の失敗事例から学ぶことが、リスクを事前に回避するのに有効な手段である。これからその具体例をいくつか見ていこう。

知識不足による不動産投資の失敗 目先10年の計画を

まず、一番先に挙げられるのが、知識不足からくる失敗である。不動産投資の基礎的なことを知らず、物件を購入することは、海図なしで航海する船のようなものである。まず、購入する物件の今後10年間の損益計算書やキャッシュフロー表を作ってみて、投資に値する物件かどうかを検証することは必須だ。

【損益計算書の作成】
損益計算書に入れるべき項目は、収入面は家賃収入や駐車場収入等、支出面は、借入金利子、減価償却費、固定資産税など租税公課が含まれる。さらに長期保有を前提とする場合は、修繕に備えて積み立てを準備する必要がある。

【キャッシュフロー表の作成】
キャッシュフロー表は、損益計算書上の減価償却費の代わりに借入金の元本が入ってくる。この借入金元本と減価償却の関係がとても大切な概念になるのだ。そして、税金の知識も必要になってくる。まず個人で物件を所有する場合、所得税の対象となり、ある程度棟数や部屋数がまとまってくれば、青色申告の対象となる。

また、不動産投資に本腰を入れて取り組む場合、法人設立も視野に入ってくるが、その場合、法人税により税額を計算する必要がある。所得税と法人税では、損金(経費)にできる項目も異なるので、そのあたりも詳細に見ていく必要がある。

不動産投資は出口戦略に注意 空室リスクを減らす努力を

不動産投資で特に強調したい点は、購入物件の出口戦略をしっかり思い描くことだ。場所的に次に売却しやすいところなのか、次の買主の立場で、償却期間も上手に使えるかなども考慮に入れる必要がある。その売却時にも、個人の場合は不動産譲渡所得に税金がかかる。

短期譲渡所得か長期譲渡所得かで掛かる税率も異なる。しっかりそのあたりも判断したいところだ。また、キャッシュフローがうまく出ないことを理由に売却を考えた際、売却金額以上にローン残債が残っていると、自己資金を入れることになり、結果的に損切りとなる可能性もある。

不動産投資で最大のリスクは空室リスクだ。家賃収入がないにも関わらず、借入金、税金、修繕積立金などは、支払い続けなければならない。これを回避するためには、まず、空室になりにくい場所を選ぶところから始まる。

不動産投資の最大のポイントは「立地の選択」といっても過言ではない。最寄りの駅からの距離や、周辺に会社や学校など賃貸需要がある立地かなど事前に調査できることは、しっかり調べることが必須である。そして、立地的にファミリータイプが有利か、単身者向けが有利か、判断することも重要だ。

ファミリータイプは、単身者向けと比べ、入れ替わりが激しくない、高い家賃が設定できる、家族向けなので、入居者の身元が安定している可能性が高い、などのメリットがある一方、部屋の大きさが広いので修繕費用が掛かる点がデメリットとして挙げられる。
特に小さい子供が入居した場合、退去後の修繕費用が想定以上になるケースも考えられる。

物件購入 新築と中古、どっちがいいのか?

物件を購入する際、新築物件を買うか、中古物件を買うかは悩ましい点だ。新築の場合、購入金額にいわゆる「新築プレミアム」が上乗せしており、購入後にすぐに価格が下がると一般に言われている。新築物件は、中古物件と比較して修繕費は低く抑えられるが、それを加味してしっかりと価格の比較をしたいところだ。

融資条件 金利上昇時のリスクをシミュレーション

最近のマイナス金利により、金融機関の不動産投資への貸出が増えているのは事実だ。しかし購入時にしっかりと頭金を入れず、借入金に頼ってしまうと、後々の返済に響いてくることになる。例えば、変動金利で借りた場合、その金利が上昇した場合、借入金額がどの程度増えるのかしっかりとシミュレーションしておく必要がある。

よくあるケースは、販売業者の提携先金融機関が貸し出す場合だが、この場合、物件からの家賃収入でなく、借入人の属性で融資の可否を判定する。すなわち安定した給与収入などがあれば、それを担保に融資をしてくれるのだ。サラリーマンが融資を受けやすい理由がここにある。しかし、将来金利が上昇し、家賃収入で賄えなくなった場合、給与収入から持ち出すことになるのだ。これでは何のための投資なのか、わからなくなってくる。

以上、ここに挙げた不動産リスクの失敗例は主なものだけであり、これ以外にも、前もって対処方法を考える必要があるリスクは多い。投資とリスクは隣り合わせであることをしっかりと認識し、しっかりとリスクヘッジをしながら果敢に果実をとっていきたいものである。  

文・中村伸一(マネーデザイン 代表取締役社長)/ZUU online

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