株主優待が好きな投資家は自分が欲しいと思った株主優待を実施している企業の株を買う。たしかに株主優待が目的の投資ならば、その視点は重要なことに疑いの余地はない。ただ、優待株投資も株式投資であることに変わりはないので、ほかの重要な要素をいくつかチェックするとより優良な企業を見つけることができる。

ここで株主優待選びに重要な3つの基準をご紹介する。株主優待投資の実践へと役立てていただければ幸いだ。

**1. コストパフォーマンス重視なら「利回り」 

  1. お役立ち度重視なら「株主優待内容」 
  2. 値上がり利益重視なら「業績判断」 **

1. コストパフォーマンス重視なら「株主優待利回り」

利回りは最も簡単に言うとコストパフォーマンスの良さを知るためのものだ。例えば、10万円で買った株式の株主優待として、年1回5000円分の商品をもらえる場合には、利回りは5%になる。株主優待をもらうための必要投資金額と株主優待の金額は企業ごとに異なるので、比較するために利回りを使う。

一般的に配当(企業が金銭で投資家に還元する)利回りよりも株主優待の利回りの方が高いことが多い。業種や企業によっても異なるが、株主優待の利回りが7%を超えるものも多く存在している。コスパを意識するなら最低でも5%を超えているものを選びたい。

株主優待情報においては、この利回りを重視した特集やランキングが組まれることも多いので意識して確認する癖をつけるとよい。

利回りに関しては、注意点が2つある。

1つ目が、業績に余裕がないのに利回りの高い優待を出している企業には注意だ。企業によっては、業績が悪化しているにも関わらず、優待内容をそのまま放置している場合がある。株価が下がるということは必要投資金額が下がることにつながるが、一方でもらえる株主優待金額がそのままのため利回りは上昇する。業績悪化がさらに進行してしまうと、企業が株主優待内容を変更したり、廃止(株主優待実施がなくなること)することすらあるので注意しよう。

2つ目が、株主優待の中には単純な金額換算できないものが多々ある。

例えば、サンマルクホールディングス <3395> という企業の株主優待は、飲食から10%割引の特典カードがもらえるが、このような株主優待金額としては換算できないものがあるのだ。ただ、通勤時に毎回サンマルクを使用する人にとっては、例えば300円のコーヒーを10%割引で1杯あたり30円割引になるとして、200日分をかけると6000円の割引になる。使いようによっては、ほかの高利回り株主優待よりもコスパが高くなるので、金額換算できない株主優待も意識して探すとよい。 

2. お役立ち度重視なら「株主優待内容」

株主優待を選ぶには、利回りや業績といった数字で判断できるもの以外にも「そもそも自分にとってその株主優待が役立つかどうか」という定性的な判断で選ぶことも重要だ。

例えば、株主優待は権利を取得するタイミングが企業ごとに決まっているが、株主優待が実際に投資家の手元に届くのは一般的に2~3ヶ月先になる。そのため、初めて株主優待をもらう時には、株主優待をもらうタイミングを考慮しないと、あとからもらったが結局使わなかったとか、食事に行かなかったという事態になることがある。

なお、筆者が考えるお役立ち度の高い株主優待は以下の3点だ。

(1)自分が通年使用する飲食店の株主優待 
(2)数々の品物やサービスから選択可能なカタログギフト 
(3)万能な金券(クオカードなど)

これらは使い勝手が良く、もらって困ることはまずないだろう。また多くの投資家から人気も高い株主優待が多いので、株価が下がりにくい面も持ち合わせている。 

3. 値上がり利益重視なら「業績判断」

最後に株主優待をもらって楽しみながら、値上がりによる利益も得たいという投資家のための基準が業績判断である。企業業績が伸びればそれに伴い株価も上がる。これは、株主優待目的でない投資家の買いも多く流入するからだ。

一般に業績期待で買われる局面には以下のパターンがある。

(1)株価が業績に対して割安である(PER、PBRの数値) 
(2)自己資本に対して利益を多く出している(ROEの数値) 
(3)業績推移が堅調だ(連続増収増益かどうか?)

(1)は割安度を判断する指標を使用することで確認ができる。一般的な指標として、PERとPBRが使用されることが多い。一般に以下の数値が割安だと判断されている。

◯PER……10倍以下 
◯PBR……1倍以下

この数値は業種によっても高低があるので、業種別のPERとPBRの指標を確認することをお勧めする。

【参考】 日本取引所グループ:規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧

(2)は自己資本(株主からの資本、純資産、利益剰余金といった返済する必要のない資金)を企業が使ってどれだけ純利益を生み出せているかを測るものだ。一般的には8%を超えると、効率的に利益を生み出せているといえる。

(3)は売上高と純利益が年々安定して伸びているかどうかをみるものだ。例えば東洋経済が年4回発行している会社四季報には過去数年分の売上高や純利益の実績、今期と来期の2期分の予想数値が載せられている。

売上高と純利益が両方共も安定して増えている株式を見つけることができる。 

バランスよく3つの基準を使い「銘柄リスト」の作成を

ここで紹介した3つの基準を使って株主優待を選ぶことで、値下がりしにくい上、株価も堅調に推移する株主優待を選ぶことができるはずだ。ただ、この3つすべての基準をクリアするような株式は多くはないはずなので、どれか2つが揃ったら購入を検討するとよい。また3つの基準をクリアしそうな株式は相場の暴落時に絶好の買い時となることがあるので、自分の「銘柄リスト」の中にいれてウォッチしておくとよいだろう。

文・谷山歩(たにやま あゆみ)/ZUU online

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